転職 Vol.97

元・アパレル店員が法人営業への転身で感じた「コミュニケーション能力+α」の重要性

日建リース工業株式会社  倉島英輔氏(29歳)

日建リース工業株式会社
倉島英輔氏(29歳)

工学部建築学科卒。大学卒業後、不動産会社を経て、大手アパレル会社の販売職に従事。営業を通じて建築に携わりたいという思いから、2013年、日建リース工業株式会社に入社。現在は本格的に営業を始める前段階として、技術知識を身に付けるために仮設資材施工の図面作成業務に携わっている

「対人スキルさえあれば営業はどうにかなる」という思い込み

建築設計に関わる仕事がしたい。工学部で建築を学んだ倉島英輔氏は、そんな夢を胸に秘め、大学卒業後、不動産会社へ就職を決めた。しかし、当時はリーマンショックによる大不況。配属を希望していた新築事業ではなく、倉島氏はマンション売買の部署に配属となった。

「営業部」ではあるものの、実態はチラシをポスティングする日々。簡単に投げ出してはいけないと何度も自分に言い聞かせたが、「設計に携わりたい」という希望は捨てられず、倉島氏は入社4カ月で退職。新しい道を模索することとなった。

「すぐに設計の仕事につくのは難しいと分かっていました。なのでまずは社会人としてのマナーや接客のスキルを学びながら、自分のこれからのキャリアを考えようと、大手アパレルで接客販売の仕事につきました。働きながら建築関係の資格の勉強をしようと思ったんです」

迷い悩む中で見えたものは、やはり建築に関わる仕事がしたいという一途な想いだった。27歳、倉島氏は再び転職活動を始めた。当初、技術職での採用にこだわっていた彼だったが、アパレルでの接客経験を生かせると思い、営業という立場から設計に携わるチャンスを狙った。そんなときに出会ったのが、仮設資材のレンタル事業を展開する日建リース工業だ。

もともと対人スキルには自信があった。販売職時代も、フレンドリーな接客で顧客からの評判もよく、営業に向いているという自負もある。新天地でも臆することなく、顧客の懐へ飛び込んでいくつもりだった。

「アパレル店員から営業マンに転職しようと決めたとき、不安は全くありませんでした。そもそも人と話すことが好きな上、接客業を4年間経験していましたので、コミュニケーション能力にはかなり自信があったんです。営業においてはコミュニケーション能力さえあれば何とでもなる、とすら思っていました」

法人営業への転身で気付いた専門知識の重要性

営業に最も必要なのはコミュニケーション能力だと思っていた倉島氏。しかし、現職に転職して、もっと大切なことが他にあると気付いたという。

「それは知識です。特に私たちの提案する工事の足場などの仮設資材は、ひとつ組み方を間違えれば人命に関わる危険がある。だからちゃんとした知識がないと自信を持って提案できないし、コミュニケーション能力だけじゃお客さまにも信用してもらえない。もちろん身だしなみや人柄も大事ですが、法人営業、特に今の仕事のように技術的な営業においては知識ありき。コミュニケーション能力は、その先の話です」

彼がそう感じたのは営業マンの先輩とともに、顧客を訪問したときだった。販売では笑顔で接すれば相手も笑顔で返してくれる。しかし、法人営業は違う。お互いが会社の代表同士という立場で、会社の社員全員の利益を考えなくてはならないため、その人だけが良ければいい、というものでもない。

「しかも、私が接するのは現場を統括する所長補佐クラスの方々で、建設現場のプロフェッショナル。自分が完璧だと思って作り上げた足場の図面を、『こんな組み方はできない』と突き返されたことだって少なくありません。もちろん悔しいですが、相手は私より知識も経験もずっと上。何とか認めてもらえるよう、とにかくできることを一生懸命やるだけです」

仮設資材の提案をするためには、まず基礎的な知識がなくてはならない。現在、倉島氏は一人前の営業になるため、施工計画に合わせた図面作成業務の腕を磨いている最中だ。営業と共に現場に同行し、顧客の要望をヒアリングする。その上で、技術面での可否を判断しながら、先方の理想に最も近い形で設計プランを立てるのが彼の役目だ。

だからこそ、今、彼の胸には、これまでにない向学心が芽生えている。

「接客をしていた頃は、どれだけ目の前のお客さまを楽しませようかということだけを考えていました。でも今はとにかくもっといろんなことを知って、自分の知識を増やしたいと考えているんです。学ぶ意欲が強くなったのが、この仕事に就いて一番大きな変化ですね」

周りを見渡せば、高いコミュニケーション能力で顧客の信頼を得ている先輩もいる。自分らしいスタイルを貫いて成果を出す先輩たちに憧れを抱く反面、「そこに豊富な技術知識が加われば無敵だなって思うんです」と理想の営業像に胸を膨らませる。いろんな人のいいところを学んで、自分だけのスタイルを確立する。そして、この助走期間を終えて、いずれ一人前の営業として顧客と真っ正面から向き合う。その日のため、今は粛々と力を磨いている。

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴

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