女性が子どもを産んでからも営業を続ける方法――「細く長く」続けることが大事ってどういうこと? 【連載:太田彩子】
「営業部女子課」主宰 太田彩子女性営業を応援するコミュニティ「営業部女子課」主宰。早稲田大学法学部卒業後、リクルート『Hot Pepper』創刊期にメンバーとして携わり、営業として数々の社内表彰制度に表彰されたのちに起業。「女性営業の人材育成」や「女性の働き方」を専門とし、女性営業プロジェクトやダイバーシティプロジェクトの立上げ・企画支援を精力的に行う。「1億売るオンナの8つの習慣」(かんき出版)や「成功できる人の営業思考」(PHPビジネス新書)など
「営業部女子課」主宰の太田彩子です。
前回のコラムでは、「おじさん上司に本音が言えないときの対処法」について紹介させていただきました。今回は、「子どもができてからも営業を続ける方法」です。出産後も営業を続けるために必要なことをお伝えします。
今回のテーマ:『子どもができてからも営業を続ける方法』
前例がなくても「出産後に営業を続けること」は可能か
出産後に営業を続けることは可能だと、自信を持って言いたいです。かくいう私も育児と両立しながら営業を続けてきましたが、多くの企業では「前例がない」というケースばかりなのも事実で、ハードな状況であることは否めません。
会社全体で見れば「ワーキングマザー」の数は増えていても、「営業部のワーキングマザー」となると、その数は本当に少なくなります。営業という仕事のスタイルそのものが、体力勝負で夜でも接待があるといった男性的な働きを前提としてきたこと。そして、長時間労働が多い仕事であるということも、出産後に営業を続けられる人が少ない理由でしょう。
しかし、最近では会社の環境や理解、女性自身の価値観などいろいろなことが変化し、女性に活躍してもらうための取り組みが増えてきていますよね。加えて言えば、今は「年収が上がらない時代」ですから、共稼ぎが当たり前になり、男性も育休を取ったり、イクボスになったりしていることも社会の変化の現われだと思います。
ある会社では、女性だけの営業チームがあり、ここでは外資系企業だけを担当しているそうです。すると、夜の打ち合わせがないので日中だけで営業が完結できたり、商談そのものも効率的に終えられる。また、ペアやチーム制での営業体制を取り、一人あたりの負荷を軽くする工夫をする企業も多くなっているように思います。
制約がある期間を乗り越えれば、その先の働き方はぐっと楽しめる!
結婚や出産など、ライフイベントによって女性の働き方が変わるのは当たり前のこと。特に、時間の使い方が一番変わるのは出産後。とにかく自分の時間がなくなります。こんなにも時間的制約がある状態で、出産前と同じように働けるわけがないのです。
であれば、出産した後の一時期だけは「限られた時間で働く」でいいのです。「何としてでも5時に帰らなくてはならない」という切羽詰まった状況になれば、今の時間内で成果を出さざるを得なくなります。この期間は、朝晩は子どもと家庭を優先するけれど、9時〜5時は集中して仕事をやる、というメリハリをつければいいだけのことなのです。
子どもが大きくなったら、また自分に時間ができるようになります。この時には既に高い生産性で働けるスキルが身に付いているため、自分の趣味やビジネススクールなど余暇に時間を割けるのです。また、出産後も営業を続けることで、母親目線でものごとをとらえるようになって消費者視点で発想できるようになるなど、生産性だけじゃない武器をたくさん手に入れることができるのです。新しい視点でアイデアを思いついて新規の取引先ができる、なんてケースもあるでしょう。
そう考えると、女性はライフイベントが多い分、さまざまな働き方を楽しめますね。
出産後も働き続けるために必要な事前準備とは?
先ほども言った通り、子育てをしながらの営業には、限られた時間で成果を出すことが求められます。そのためには周りの協力が絶対に必要です。仕事は一人ではできないので、チームメンバーや上司と、持ちつ持たれつの関係を作りましょう。子どもが突然熱を出すようなことがあっても、周囲に頼れる関係をつくっておく。そのためには、日頃から自分も相手のために役に立つ存在になっておくことが大事です。
また、出産前にしておくべき働き方のポイントがもう1つあります。それは、自分で思いきり働ける時期には「達成経験」を積めるように努力をしておくこと。経験が“達成貯金”となって、出産した後に一時的にしゃがむような時期があっても、そのときの貯金が十分にあるので「あの人なら安心だ」という信頼に繋がり必要とされるのです。
出産後にできるコツとしては、周囲とのコミュニケーションの取り方というものがあります。
私の場合、お客さまにも「小学生の子どもがいるので、早く帰らなきゃいけないんですよ」と雑談の延長で言ってしまっていました。すると夜の打ち合せに声が掛かることもなく、昼間に集中して仕事ができる環境が整いました。周囲にとっては、子育て中の営業女性がどれだけ大変か知らないことも多いので、自分から発信していくことも必要です。
女性営業が働き続けることは、後進への「伝承」でもある
私は、営業としてのキャリアは、「細く長く」続けることが大切だと考えています。
営業の醍醐味は、社会人としての基礎を学べること。コミュニケーション能力や交渉力、基本的なマナー、誠実さなど仕事人としての土台を身に付けられる場。そして何よりも、お客さまに「ありがとう」と喜んでもらえるうれしさに満たされることが、大きなやりがいではないでしょうか。
そういったスキルを身に付けて、一通りやりきったと思ったら、次はそのノウハウを自分だけ独り占めせずに、後輩へどんどんバトンタッチしていくべきだと思います。そうすればキャリアの伝承が起こり、後輩の役に立ちます。自分が営業で得たものを、今度は後輩に経験してもらう。営業の醍醐味を次の世代に伝えていく存在として、女性たちには「細く長く」営業を続けてほしいと、私は思うのです。
そういった活動は、私たちが「営業部女子課」で進めていることでもあります。営業は女性が輝く尊い仕事だということを、一人でも多くの人にお届けできるよう、これからも発信し続けていきます。
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構成/飯田 樹
公式HP:営業部女子課: http://eigyobu-joshika.jp/
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