Miyuさん1997年12月3日生まれ。 世界最高峰のバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』でワールドチャンピオンに輝くなど、国内外のバトルで多数のタイトルを持つ世界的ハウスダンサー。細かく速い超絶技巧のステップワークはSNSでも話題になり、『TikTok Awards 2022』では「Dance Creator of the Year」を受賞。自らの可能性を広げ、ダンサーの社会的地位向上を目指すため、単独公演の開催や映像作品の発表、教育現場・公共イベントでのワークショップや講演、ファッションモデルや広告出演など、さまざまな分野で活動を展開。2023年に予定されている民間人初の月周回プロジェクト『dearMoon』では、全世界約100万人の応募者の中から唯一の日本人として選出され、バックアップクルーとして参画する。「不可能を可能に」がモットー ■HP ■Instagram ■Twitter ■TikTok
Miyu「人より不器用だから努力できる」世界一のダンサーになった25歳を突き動かす悔しさ
「ダンサーが活躍しているシーンを想像して」と言われたら……ミュージシャンを引き立てて踊るバックダンサーや、ダンススクールの講師などをイメージする人が多いかもしれない。
そんな現状を変えようとしているのが、ハウスダンサーのMiyuさんだ。
Miyuさんは世界最高峰のストリートダンスバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』での優勝をはじめ、国内外のバトルで多数のタイトルを持つ。
昨年は「#高速ステップ」で話題を集め、『TikTok Awards 2022』で『Dance Creator of the Year』を受賞した。
@miyudance_ @user5191975558189に返信 よく反復横跳び得意そうって言われる😂🤣 #eminem #高速ステップ IG→miyudance_
さらに、2023年に予定されている民間人初の月周回プロジェクト『dearMoon』では、全世界約100万人の応募者の中から唯一の日本人として選出され、バックアップクルーとして参画することが決定した。
>>「夢は必ずかなう」ダンサーMiyuが前澤友作の月周回プロジェクト『dearMoon』バックアップクルーとして宇宙で挑戦したいこと
これほどの活躍を見せる彼女は、まだまだ大きな夢に向かって挑戦をやめない。その原動力とは一体何なのか。
※この記事はWebマガジン『Woman type』より転載して掲載しています
人前で踊るのは好きじゃなかった
Miyuさんは8歳でダンスを始め、それ以来ずっとダンスに夢中な日々を過ごしてきた。
習い事はいろいろやったんですけど、長く続いたのはダンスだけでした。
小学生の頃からダンス中心で生きてきたから、関わる人たちも周りの景色も、気付けばダンスに関連するものばかり。
だから自然と「自分も将来はダンサーになるんだろうな」と思っていましたね。
その予感通り、Miyuさんはストリートダンスバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』で優勝し、世界一のダンサーとなった。
ところが、実はダンスバトルと出会った中学生の頃、Miyuさんは「人前で踊るのが好きじゃなかった」と明かす。
昔の私はシャイな性格で。
ダンスバトルは、その場で流れる音楽に合わせて即興で自分を表現しますが、練習なしにいきなり踊るなんて当時は考えられませんでした。
それでも好きな先生がバトルで活躍する姿に憧れ、自分も出場を重ねるうちに、だんだんとその世界にハマっていった。
「勝てるようになるにつれて、自分の感覚が変わっていくのがうれしかった」とMiyuさんは当時を振り返る。
ただ、人前で踊りたくないのであれば、趣味でダンスを続ける道もあったはず。そうではなく人前に立つプロダンサーの道を選んだのは、「環境に恵まれていたから」だと話す。
例えば、まだダンスが下手だった頃、運よく優秀な子たちがいるチームに入れてもらうことができて、コンテストで連続優勝しました。
そういう環境に身を置くことで、人前で踊る楽しさを知っていったような気がします。
「人からはよく『信じられない』って言われるんですけど」と前置きし、Miyuさんは意外な話を続ける。
私は周りの人と比べて、才能があると思ったことはないんです。
子どもの頃は何をやっても中の下かそれ以下という感じで、常にみんなから置いてけぼりになっている感覚がありました。
だから、悔しい思いしかしたことがないんです。でも、その悔しかった思いが、今も原動力になっている気がします。
世界一になった今もなお、過去の悔しさが原動力。それは言い換えれば、「そんな自分でも夢をかなえられた」という自信の根拠でもある。
私は何を習得するにも人より時間がかかるんです。ダンスもそうだし、英語もそう。めちゃくちゃ不器用です。
でも、ひたすら努力をすることは得意だし、努力次第で何でもできる。本当に、不可能なことは何一つないと思っています。
そんな原体験が「不可能を可能に」というMiyuさんのモットーを築いた。
何事も1回やってみることが大事なんだと思います。小さい頃にいろいろな習い事をやっていたのも、やってみないと分からないと思っていたから。
だから今も、進んで新しいことに挑戦するようにしています。環境によって人生は大きく変わる。
そう思っているので、どの場所に身を置くかは常に意識しています。
自分が楽しんで、期待以上のパフォーマンスをする
現在はプロのダンサーとして世界中で活躍するMiyuさん。彼女が定義する「プロ」の条件には、ただ「ダンスで収入を得ている」だけでは満たない。
前はお金をもらっていたらプロだと思っていましたが、そもそもダンサーには何か資格があるわけじゃないから、誰でもプロを名乗れます。
だから、誰でもダンスを教えられるし、ショーをしてお客さんを呼べる。そうやってお金をもらうこと自体はできるので、それは違うなって。
では、プロのダンサーとはどういう人なのか。Miyuさんは「与えられたことを、相手の期待以上にして返すことができる人」こそがプロだと定義する。
与えられた仕事を期待以上のパフォーマンスで返す。それがプロなのだと思います。
そのために必要なのが、「自分が相手の立場だったら何をされたらうれしいか」を考えること。
ダンスをするときもそうだし、MVの撮影などの現場でもそう。それが相手の期待を超えることにつながる気がしています。
そしてもう一つ、ダンスをする際に心掛けているのが「楽しむこと」だ。
ダンスは人に見せるものであり、人の感情を動かすには、まずは自分が楽しむことが必要だと思っています。
私はダンスでいろいろな人を笑顔にしたり、夢を届けたりしたい。だからこそ、自分自身がダンスを楽しむことが何より大事だと思っています。
楽しむことをさまたげるのが、緊張。かつてのMiyuさんは「本番前は眠れないくらい緊張していた」が、今は全く緊張しないと自信をのぞかせる。
ダンス以外でも、人前に立つときは必ず準備をします。全てをイメージしておけば、想定内のことしか起こらない。
だから本番で緊張しないんです。世界大会で優勝した時も、相手はどんな人で、会場はどんな雰囲気で、どの程度の人がいて、どのくらい会場が沸くか、細かいところまで全てイメージして挑みました。
ダンスの上達を助けるのもまた、楽しむことだと続ける。
何事も、できないから楽しくないじゃないですか。でも、できたら楽しい。
だから「できないから嫌」ではなく、「できないけど、できたら楽しい」と考え方を変える。
そう考えると自分で練習するし、研究もします。そういう意味でも、楽しむ心を忘れないことが大切だと思います。
どんなにダンスが好きでも「ずっとしんどさはある」
「私はめっちゃポジティブな性格なんです」とMiyuさん。笑顔でインタビューに答える姿は、まさにその言葉を裏付けている。
とはいえ、世界一になるほどダンスと向き合う中で、つらくなることもあったはず。そう尋ねると、明るい笑顔のまま「ずっとしんどいですよ」と答えた。
悔しい思いやつらい思いは、ほぼ毎日しています。
うれしいとか、やっていてよかったと思えるのは、本当に一瞬のこと。世の中のキラキラ輝いている人たちも、絶対にみんな大きい壁にぶち当たって、見えないところで苦しい思いをしているのだと思います。
そんなときに思い出すのは、「壁に当たっているときは、前に進んでいる証拠」という言葉。動くからこそ、壁にぶつかる。だから「苦しい思いをしていない方が問題」というのが、Miyuさん流の考えだ。
ずっと楽しい状態だと、多分前に進んでいないんですよ。
進めば進むだけ大きい壁がやってくると思っているから、苦しいときは「前に進めているんだな」と考えるようにしています。
今やMiyuさんにとってダンスはアイデンティティーであり、仕事でもある。どんなに好きなことであっても、仕事となれば、そこには責任や義務感など不純物が混ざり込む。
そんな中、楽しさを見失わず、純粋にダンスを好きでい続けられるのは、常に大きな夢があるからに他ならない。
常に大きな夢や目標があって、そのために目の前のことをやっている感覚があります。
それが誰かをハッピーにするならやりたいし、それをやることで新しい何かが広がるならやりたい。一つ一つの仕事が必ず何かにつながると思っています。
逆に、夢に近づくために必要のないことはやりません。全てが夢のために必要だと思えているから、いつも楽しめているのだと思います。
ダンサーの新たな道をつくるために「誰もが知るダンサー」になりたい
幼い頃のMiyuさんの夢は、世界一のダンサー。その夢を19歳でかなえた今、次なる夢は、ダンサーの新たな道をつくることだ。
TikTokとか、SNSでダンス動画がはやっているように、ダンスそのものは人気です。
でも、ダンサーは振付師や指導、バックダンサーなど、後ろで支える仕事がほとんどなんですよね。私自身は、ダンサーはもっと一人で輝けると思っていて。そうじゃない現状が悔しいんです。
だから、ダンサーがアーティストとして認められる世界をつくりたい。俳優やミュージシャンの隣に「ダンサー」の肩書で並ぶことができるようなアーティストになるのが次の夢です。
自分の踊りをひたすら磨き、全てをかけて戦って世界一になっても、世の中の人は自分のことをほとんど知らない。「それが悲しかった」とMiyuさん。
ダンスの世界にはすばらしい人がたくさんいて、命をかけてダンスで戦っている人もいます。
そういう人たちがもっと世の中に知られてほしいし、知られるべきだとも思っています。
今の夢の達成度は「60%ぐらい」。民間人初の月周回プロジェクト『dearMoon』に応募したのもまた、ダンサーの存在やダンスをより広く知ってもらえると思ったから。
だからこそ月へ行くという大きなプロジェクトであっても、Miyuさんにとっては夢への一歩であり、通過点にすぎない。
ダンサーの役割を広げて、ダンスの可能性も広げていきたい。そのためには、まずは私自身が「誰もが知るダンサー」になることが必要です。
だから今の大きな目標は「誰もが知るダンサーになる」こと。影響力を持つことができれば、ダンス界を変え、日本人のダンサーを見る目さえも変えられると思っています。
「言葉で言うと軽くなってしまうけど」と苦笑するが、その目標が虚栄心や自己顕示欲に由来するものでないことは明白だ。
「有名になりたい」は誰でも口にできることだけど、私にはそれをかなえる自信があります。
ダンスはもちろん頑張るけれど、可能性を広げるために、他のダンサーが誰もやっていないことを私はやっていきたいですね。
これまで、大会で負けて一時的に嫌になることはあっても、本気でダンスを辞めようと思ったことは一度もない。それだけMiyuさんにとってのダンスは、彼女の全ての起点となっている。
結局、苦しい思いをするのもダンスだし、ハッピーになるのもダンス。
自分の性格を変えてくれたのもダンスでした。これからも常に、ダンスが隣にある人生を歩んでいくんだと思います。
取材・文/天野夏海 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 企画・編集/栗原千明(編集部)
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