キャリア Vol.1065

東大院卒・元LINEトップ営業の27歳がおにぎり屋に“即転身”できた理由「肩書は守るものじゃない」【RICE REPUBLIC代表・川原田美雪】

2022年、虎ノ門にオープンしたおにぎり専門店『TARO TOKYO ONIGIRI』。

独創的なおにぎりがSNSで話題を呼び、連日女性客を中心に大行列。TVやメディアでも多く取り上げられている。

注目すべきは、運営会社であるRICE REPUBLIC代表・川原田美雪さんのキャリアだ。

東京大学、東京大学大学院、LINEというエリートコースを歩む彼女は、LINE営業として月間売り上げ6億円の成績を残し、ベストルーキー賞を受賞。高く評価されながらも、入社2年目で退職し、RICE REPUBLICの社長に就任した。

なぜ順調だった大手企業の仕事を辞め、全くの未経験で「おにぎり」の世界に飛び込んだのだろう。

※この記事は姉妹媒体『Woman type』より転載しています

川原田美雪(かわらだ・みゆき)
RICE REPUBLIC取締役社長

1996年生まれ。東京大学工学部卒業。東京大学大学院修了。2020年、LINE入社、営業部配属。中小企業向けのLINEマーケティングソリューションの営業提案、運用コンサルティングに従事。営業業務を離れた後は、社内のインサイドセールス組織の立ち上げとデータの可視化・分析を担当。大企業向けの広告商品を中心とした広告媒体の企画業務に携わり、広告事業本部21年度のベストルーキー賞を社内で唯一受賞。22年7月、おにぎりチェーン店『TARO TOKYO ONIGIRI』を都内2店舗に展開するRICE REPUBLIC入社。同年12月、社長に就任

おにぎりの可能性を信じ、世界一を目指すと決意

私は今「世界一のおにぎり屋」を目指しています。

目指すならば1番。わざわざ2番目を目指さなくてもいい。なれるかどうかを考えるよりまず、1番を目指し続けることが重要だと思っています。

だから、大学は東大を目指しましたし、「日本一のプラットフォーマーになりたい」と思って新卒でLINEに入社しました。

でも入社2年目の時、転機が訪れました。大学の先輩である、まん福ホールディングスの加藤智治社長から「世界一を目指す、おにぎり屋の代表をやってみないか」と電話をもらったんです。

驚いたけど、すごく魅力的でチャレンジングなお話だったので、単純に「面白そう!」とワクワクしましたね。

それと、「おにぎりは世界で通用する」という社長の言葉に納得できたのも大きかったです。

海外では“washoku(和食)”という言葉が通じるくらい日本食はメジャーでヘルシーなものとして認識されていて、“sushi(寿司)”や“ramen(ラーメン)”が公用語になるくらい広がっています。

そんな中、日本発のファストフードはまだほとんど存在しない。誰でも手軽に食べることができて、比較的簡単に作ることができるおにぎりは、ハンバーガーやサンドイッチと同じくらい市場が広がっていくかもしれない。

だからこそ、「おにぎりって想像以上に伸びしろがあるのかも」と思ったんです。

LINEで「日本一のプラットフォーマー」を目指すこともできたけど、大きい組織なので正直かなり時間がかかると感じていて。そんな時に声を掛けてもらえるなんて、こんなチャンスは人生で何度もあることじゃない。

だから、電話を頂いたその場で「やります、いつからですか?」と即決しました。悩んだところで、「やる」という結論は変わらないと思ったんです。

東大院卒・元LINEトップ営業の27歳がおにぎり屋に“即転身”できた理由「肩書は守るものじゃない」【RICE REPUBLIC代表・川原田美雪】

「勝てるチーム」を目指し、一人一人の思いをとことん聞く

そうしてRICE REPUBLICに入社してからは、まずは虎ノ門の『TARO TOKYO ONIGIRI』でアルバイトの店員と同じように働いて、業務を覚えることから始めました。

とにかく現場を見て学びたかったので、毎日店舗に立っていましたね。

積極的にお客さんに話し掛けてリアルな声を集めたり、お客さんが商品を見ているときに「どの商品を見て、何を選んだのか」を観察したりしていました。

お客さんの声や行動は、商品コンセプトを決めるヒントになります。例えば、400円の大きいおにぎりを手に取って戻したお客さんを見つけたら、「200円くらいで、かわいらしい大きさにした方が買ってくれるのかな」という発想につながります。

アルバイト期間中から心掛けていたのは、「常に現場に入ること」「常に明るく振る舞うこと」「スタッフといっぱい話すこと」の三つ。

立ち上がったばかりの会社なので、まずはお互いを知って「一緒に働きたい」と思える関係性を築くことが欠かせないと考えていました。

アルバイトや社員といった雇用形態に関係なく、「将来どういうことをやってみたくて、その上でなぜ今ここにいるのか」を一人一人にとことん聞く。

そうやって代表がメンバーそれぞれの思いを集約して、その熱量を同じ目的に向けられる組織って本当に強いんです。

東大院卒・元LINEトップ営業の27歳がおにぎり屋に“即転身”できた理由「肩書は守るものじゃない」【RICE REPUBLIC代表・川原田美雪】

「北海道直送 贅沢いくらの醤油漬け きざみ三つ葉添え」

それは、大学4年生の時に東大アメフト部の幹部を務めていた経験から学びました。

選手150人、スタッフ50人、計200人の部員の中には「とにかく試合に出たい」と思う人もいれば、「今回は試合に出ず、次回に向けて練習したい」と思う人もいる。

マネジャーもまた、「SNS更新が楽しみ」「選手にテーピングをするのが好き」など、皆やりたいことはそれぞれでした。

それでも、勝つためにチームとして一つの方向に向かわなくてはいけない。

もちろん「チームのことを考えて行動して」と強制することもできましたが、私は個々の思いを尊重して「チームの力」にしていきたかった。

それぞれのやりたいことに向かって自発的に努力をした結果、それがチーム全体のためになるのが理想だと考えていたんです。

そういったアメフト部での経験が、今のマネジメントにも生きていると実感しています。

結果は過程に「ついてくる」もの。守るものじゃない

LINEを辞める時、周りの人からは「飲食業をやるのは大変だよ」と心配する意見を頂いたこともあります。でも、私の気持ちが揺らぐことはありませんでした。

思えば子供の頃から、決断において誰かの声を気にすることはなかったですね。

東大を目指すと家族に伝えた時は「青森県の田舎から東大なんて無理だろう」と言われましたし、大学のアメフト部に入るときも周囲から反対されました。

転職を決めた時もそう。「LINEという大企業の社員でなくなるのはもったいない」「東大院卒なのに……」と言われたこともありました。

でも、自分ではまったくそう思わなかったです。

だって、「LINEだからすごい」「東大だからすごい」じゃなくて、「そこに入れるくらい努力ができるからすごい」じゃないですか。

結果はすごく大事ですけど、その結果を出すために本気で努力した過程は、結果よりも価値がある。これはアメフト部のときに先輩から教えてもらったことでもあります。

もちろん何もしていない中で過程が大事だと言うのは意味がないけれど、あくまで結果を求めて努力した過程に、結果がついてくるだけ。ついてきただけだから、守るものでもない

つまり私にとって、東大を卒業したとか、LINEに入社したとか、ベストルーキー賞を受賞したとか、そういったことは、努力した過程の通過点に過ぎません。

仕事や場所が変わっても、その人の価値は何も変わらない。LINEに入ったことで私自身が変わったのではなく、肩書が「LINE社員」に変わっただけ。

自分の価値を肩書に依存しなかったことで、本当にやりたいことに挑戦できたのだと思います。

東大院卒・元LINEトップ営業の27歳がおにぎり屋に“即転身”できた理由「肩書は守るものじゃない」【RICE REPUBLIC代表・川原田美雪】

接客中の川原田さん

やりたいことは「今やる」でいい

私は「何年後にこうなりたい」といったキャリアプランは基本的に考えません。

「5年後にこうしよう」ではなく、「今やろう」って考える性格なんです。「やりたいことは今やる」でいいかなって。5年も寝かせる必要はないですよね。

出産や育児で一時的に職場を離れることについて考えているスタッフも多いですが、私個人としては、今後子どもが欲しいと思った時に自分のキャリアをどう整えるか考えればいいと思っています。

自分を取り巻く環境ややりたいことって、その時にならないと分からない。

だから今は、せいぜい2年先くらいのことまでしか考えていません。

うまく生きようと気負ってキャリアプランを最初からしっかり固めちゃうと、「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」ってストレスを感じてしまいますよね。

それなら私は「やらなきゃ」よりも「やりたい」に素直に生きたい。それでうまくいかなかったら、それは私の実力不足だから次はもっと頑張ればいい。

先のことを計画して行動できる人のことは尊敬していますし、頼りにすることも多いです。

けれども私は元々それが苦手で、とにかく行動する方が得意。振り返ると、自分の得意を生かしてきたのだと思います。

東大院卒・元LINEトップ営業の27歳がおにぎり屋に“即転身”できた理由「肩書は守るものじゃない」【RICE REPUBLIC代表・川原田美雪】

私の大きな夢は、人生の最後に「ああ、これを成し遂げるために生きてきたんだな」と思えるような生き方をすること。

それが学生のときはアメフト部で、LINEのときは日本一のプラットフォーマーになること。そして今は、おにぎり屋で世界一になることです。

そのためにも、まずは『TARO TOKYO ONIGIRI』を2027年までに国内30店舗、海外70店舗まで展開するという目標を必ず達成したい。

どうなったら「世界一のおにぎり屋」と言えるのか。その答えはまだ明確に設定していませんが、いずれにしても、おにぎりを「世界の食文化」として確立させるチェーン店にしたい。

スタッフのみんなが自信を持って「世界一」だと思えるブランドになれたらいいなと思っています。

取材・文/柏木智帆 写真/ご本人提供 編集/柴田捺美(編集部)


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