仕事がうまくいくコミュニケーションの法則

普段の仕事の中で、「もっと人に協力してほしいな」とか、「もっと相手のホンネに迫りたい」と思う瞬間がないだろうか。そんなあなたのためのスキルだ。あざといテクニックと笑うなかれ。ちょっとした心がけがあなたの仕事をスムーズにしてくれる。

芦屋広太氏

オフィスエーロンプランニング 代表
大学を卒業後、金融機関でシステム開発に従事。SE、プロジェクトマネジャー、システムアナリストとしての経験をもとに、優秀な人材の行動プロセスを分析した「ヒューマンスキル教育」をモデル化し、IT人材教育を行う。現在、株式会社ネクストエデュケーションシンク経営支援顧問としても活躍中。著書多数


仕事を進めるうえでもっとも基本となる能力がコミュニケーション力だ。これがなければ、後述する交渉もマネジメントも成り立たない。

「コミュニケーションとは誰かから情報やメッセージを受け取り、また別の誰かに伝えること。システムは1人で作るものではありません。ITエンジニアにはまず、顧客や上司、部下、協力会社など立場の違う人間同士をつなぐネットワーカーとしての役割が求められるのです」

こう語るのはIT教育コンサルタントの芦屋広太氏。しかし近年、プロジェクトの複雑化、短納期化が進んでいくなかで、意思疎通のみに終始する最低限のコミュニケーションではシステムの品質が維持できなくなっているという。

「新規のシステム開発となれば、最近はWeb2.0に代表される新しいビジネスモデルの根幹を作るような開発案件も多い。前例がない、誰も見たことがないシステム開発を深い相互理解なしに成功させられるはずがないのです」

より深いコミュニケーションをとるための基本は、まず相手を受け入れる意識を持つことだ。

「相手が同僚でも上司でも、まずは相手の話を最後まで聞くことがとても重要です。話の途中で反論してしまう人をよく見かけますが、それはNG。相手の話を全面的に受け入れることで、『この人はわかってくれる』という印象を持ってもらえるのです。また、話を聞くなかで論点を浮き彫りにしていく質問ができれば、より深いコミュニケーションが取れるようになるでしょう」

もしそのやり取りのなかで、お互いの利害が対立したら、自分は多少損をしても相手に得をしてもらう選択をする。

「『??さんに得をさせてもらった』と信頼を得ることで、その後のコミュニケーションは驚くほどスムーズになります。日ごろからできるだけ多くの人に“貸し”を作ることも、コミュニケーションを円滑にする方法だといえるでしょう」

顧客とのコミュニケーションに限れば、“相手の話を鵜呑みにしない”ことが大きなポイントになると芦屋氏はいう。

「顧客企業の担当者は『とにかく早くやってください』、『上司がこう言っている』など、そのときの立場や状況で話すことが往々にしてあります。なかには、担当者自身が自分たちのニーズを把握していないケースもある。コミュニケーションの結論は、相手の話から見つけるのではなく、自分のなかに作り上げていくという意識が必要です。事前に頭のなかで体系立てていた仮説から新しい提案ができれば、それが顧客の信頼につながるのです」

最終的には相手からの信頼を得ることが、コミュニケーション成功のカギだといえる。しかし、このようなコミュニケーションを心がけているエンジニアは残念ながらほとんどいないと芦屋氏は語る。

「こうした行動は積み重ねることで自分のなかでやり取りがパターン化され、そのうち無意識にできるようになるものです。1カ月単位で少しずつテーマを変えるなどして、ぜひ習慣付けてほしいですね」


横田雅俊氏
Masatoshi Yokota

株式会社カーナープロダクト
代表取締役

設計士を経て外資系ISO審査機関の営業職となり、最短・最年少で世界8カ国2300人のなかでトップセールスを記録。その後、カーナープロダクトを設立し、代表取締役に就任。実践経験に基づいた営業コンサルティングで辣腕を振るう。著書『「売れ続ける会社」の営業法則』(ディスカヴァー)のほか、メルマガ「トップセールス千人斬りインタビュー」なども配信中
営業でもSEでも、相手のニーズを知らないと何も提案することはできません。まずはできるだけ時間を使って相手が何を思っているのか徹底的に質問し、ホンネを引き出すくらいの気持ちが必要です。

営業の場合、最初はお客様がこちらの話にまったく興味がないというところからスタートするわけです。いくら「役に立ちたい」と思っていても、本当のニーズをを引き出すためにはそれなりの工夫が必要になってきます。

私の場合は、質問リストを持ち歩いて効果的な質問ができるようにしていました。英単語を覚えるように、質問項目を分類してリスト化していったんです。気づけば、3000項目ほど作っていました。

こうした準備をしておくと、たとえば相手が決定権者か知りたい場合は「あなたは決定権者か?」と失礼な質問をしなくても、それを聞き出すことができるのです。質問の仕方ひとつで相手の態度は違ってきます。どんな聞き方をすれば望む答えにたどり着くのか、トライ&エラーで実践することが重要です。これを続けることで、筋肉と同じように、話す力や聞く力は確実に鍛えられていきます。

このような工夫を行うモチベーションとなるのが、人間そのものへの興味だったと思っています。私は経営者に対して営業を行っていたのですが、コミュニケーションを繰り返すなかで、経営者が営業マンを見るときは「信頼と数字」が判断基準だとわかりました。でも、そのどちらを重視するかは人によって違う。そこで今後は、経営者の価値観やキャラクターでタイプを分類していきました。そうしてタイプに合わせたアプローチの方法も見出していったんです。

SEの場合も、担当者の人間性や立場に興味を持つことで、今まで気付かなかった相手の気持ちに思い至ることができるのではないでしょうか。

ビジネス上の会話は、最初は誰でも苦手なんです。得意といっている人のほうが何か重大な見落としをしてしまっているんじゃないかと思います。何も特別なテクニックが必要なわけではありません。相手の真意がどこにあるのかを聞き出す仕組みを自分のなかに作ることが、営業マンでもSEで必要なのだと思います。


Q. 人にうまく協力を仰ぐことができません。
A. 日ごろから多くの人に“貸し”を作っておく
『あの人の依頼なら断れない』という気持ちにさせられる人っていますよね。そういう人は過去に自分のために動いてくれた人ではありませんか? エンジニアは自分と他人の仕事の間に線を引きすぎる傾向にありますが、日ごろから他人のための苦労を厭わないことが、実は円滑なコミュニケーションの素地になるのです。
Q. 部下が思い通りに動いてくれません。
A. ピグマリオン効果(期待に応えようとする行動心理)を活用する
人は信じられると期待を裏切れないという性格を持っています。「君なら正しい仕事をしてくれる。君のやり方で協力してもらえないか?」と、自分を認めてもらったうえで依頼されれば、部下は協力してくれるものです。また、部下がピンチに陥っているときにも、「君ならできると思って任せているんだ。相談ならいつでも乗る」とコミュニケーションを取るだけで大きな効果があるはずです。
Q. 上司への提案がなかなか通りません。
A. 上司の関心ポイントを探り、提案のツボを押さえる
上司の視点と部下の視点は違います。上司に協力してもらえない場合、この点を把握していないケースがほとんどです。メンバーがどんなに工夫を凝らしたシステムの仕様を提案しても、上司が考慮しなければならないコストや要員配置、その後の運営などについて言及がなければ提案を受け入れてはもらえないでしょう。自分の責任範囲を飛び越え、上司の関心事を観察することが第一歩です。
Q. 顧客の無理な要求を断ることができません。
A. 相手にとってのデメリットをソフトに説明する
無理難題を受け入れてしまってはやがて信頼を失います。たとえば、システムエラーが発生して無料で直してほしいという要求があった場合、「この修正を無料ですると、御社にとってこんな不利益が出てしまうんです」と相手にとってのデメリットをソフトに指摘したうえで断ります。断る理由や言い方をよく考えてから断れば、逆に感謝されるケースも出てくるでしょう。
Q. 顧客の本当のニーズをなかなかつかめません。
A. 事前に仮説を作って質問項目リストを作る
顧客の本当のニーズを引き出すためには、事前に交渉の流れについて仮説を作っておく必要があります。その仮説をもとに質問をぶつけ、仮説を修正していきます。話の流れによっては仮説を練り直す必要が出てきますが、10パターンくらい想定していけば、大抵は想定の範囲内に収まるもの。『この部分を変えると、ここも変わってきますよね』と即座に反応できれば、対応力への信頼にもつながるのです。





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