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平尾誠二氏
Seiji Hirao
株式会社神戸製鋼所
神戸製鋼ラグビー部 ゼネラルマネージャー |
1963年生まれ。伏見工業高校3年時、全国高校ラグビー大会優勝。同志社大学在学中、大学選手権を3連覇。神戸製鋼所に入社後3年目から、チームを7年連続日本一に導く(V1?V3まではキャプテン)。現役引退後は、1997年2月から2000年11月まで日本代表監督を務めた。現在、神戸製鋼ラグビー部ゼネラルマネージャーとしてチームの運営に当たる |
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強い組織を作るためには、まずチームの目標をハッキリさせることが重要です。迷いが生じたとき、目標が明確であれば「何を優先すべきか」がわかってくるからです。
ラグビー日本代表の監督を務めていたころ、私の方針に反発するメンバーがいました。私も人間ですから、いい気持ちはしなかった(笑)。でも、「試合に勝つ」というチームの目的があるから、リーダーとしては、彼の力を認めてチームに活かす術を考えないといけない。必要とあらば、ときには譲歩することもありましたね。すべては目標を達成するための行動です。そこに好き嫌いを挟みこむ余地はありません。
試合に勝てば、チームとしての達成感が、メンバーとの関係を劇的に変えてくれます。そして、苦労が報われたという成功体験が組織を強くしていくのです。だからこそ、達成感を味わえる目標を設定すること、そして目標達成に向けてぶれない姿勢がリーダーには必要だと思います。
強い組織には強い個が必要ですが、メンバーと接するうえで意識してきたのは、「距離感」ですね。メンバーとの距離感は、近すぎると緊張感がなくなり、遠すぎるとコミュニケーションが取りにくくなる。自分の言葉がメンバーの心に響く距離感を見つけ、それをうまく保てれば、リーダーの仕事はグッとしやすくなるはずです。
メンバー育成という意味では、「気づき」がポイントだと思います。神戸製鋼に大畑大介という選手がいますが、私が日本代表監督に就任した頃、彼はディフェンスが弱点だといわれていました。でも、私はその弱点を意識して指導はしなかった。得意なオフェンスで持ち前のスピードとパワーを発揮してもらおうと思ったからです。
そのうち実力を発揮できるようになると、今度は大畑選手自身が弱点克服に前向きに取り組み出した。今では、「実は大畑はディフェンスの方がいいんじゃないか」と思うほどにまで成長しました。
リーダーはどうしてもメンバーの弱点についてうるさく言ってしまいがちです。大畑選手のケースは一例に過ぎませんが、メンバーの性格を見極めてどうしたら自発的に取り組んでくれるかを、リーダーはよく考える必要があるのではないでしょうか。 |
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