シチュエーション別に見る技術が伝えられる人伝えられない人の天国と地獄

コミュニケーションの場でちゃんと技術が伝えられるエンジニアと、伝えられないエンジニアの差は何なのか? ここではコミュニケーションにおける“ 天国と地獄”を紹介。成功のためには何が必要か、体験談から学ぼう!
Word/KOJI URANO.YASUNORI NARAHARA(E-type) Photo/MAKOTO OSAWA.GENKI.TAKASHI TOGAWA
Illustration/SHOBU TSUCHIYA Styling/CHIKARA NAKAMURA Retouch/SHINYA
 situation 04 プライベート
長谷川 和寛 氏

フリーランス システム・エンジニア
「フリーランスで仕事を始めたころは“理想像”みたいなスタイルで人と接しようとしましたが、すぐにやめました。それでは円滑なコミュニケーションができないということが分かったんです」

フリーランスのSEになって今年で15年目という長谷川和寛氏の実感だ。

「特に初めて受注していただくときなどは、安心感や信頼感を持ってもらおうとして変に自分を演出する態度や言葉遣いをしがち。でも安心や信頼は連絡や相談をしていくうちに自然とお互いの間にできてくるのがベスト。そう思ったときに吹っ切れましたね」

前向きな姿勢と明快な言動―。これに勝る極意はないと長谷川氏は言い切る。紹介を受けて顧客と初めて話すとき、まず自身のキャリアや実績を知ってもらうために15分ほど時間を割いてもらう。先方が求めるニーズを満たせるかどうかを率直かつ誠実に説明するためだ。

「プレゼンテーションの場ですが、そこで自分の実力以上のことを披露するなど姑息な手段は絶対通用しない。むしろ相手が誤解しないよう慎重かつ丁寧に等身大の自分自身を知ってもらうようにしていますね」

長谷川氏は、業界での基準は「人柄が4割で技術は6割」という実感を持っている。同じ技術、スキルレベルならば人柄や性格が重視されるということだ。

「今の仕事に多少の行き違いやトラブルは付きもの。いざというときの対応力や処理能力が仕事の質にも影響します。そういう場合に備えて、先方がどんなキャラクターなのかもしっかり把握します」

一方、複数で受託開発を行う場合は“始め”と“終わり”をきっちり詰めると長谷川氏は言う。

「2008年の初めも3人でチームを組んで仕事をしましたが、1人がマネジャー役で2人はプログラミングを担当。打ち合わせを何度も行って、どのフェーズで誰がどこまで進めるのかをかなり細かく確認します。途中はメールで進捗状況を連絡し合って、納品前の数日は全員で一気にアップする。このスタイルが一番うまくいくようです」

最初にしつこく打ち合わせを行うのは、共通のゴールを確認してチームワークを高める目的もある。この段階でうまく役割分担ができれば、プロセス全体がスムーズに進む確率も高いと長谷川氏は強調する。顧客からの安心、信頼はこうした工夫の積み重ねと着実な成果によって高まっていく。あれこれ策を労するよりは、あくまで自然体で―。一見簡単そうで実は難しい正攻法のノウハウこそが、ベテランエンジニアがたどり着いた結論である。
 situation 01 顧客編
 situation 02 部下への指導
 situation 03 転職面接
 situation 04 プライベート
どんな相手にも常に正直でいること それが自分と周囲に信頼関係を築く
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