2018.03.13
【前田裕二×中川悠介対談】世界で愛されるサービスはどうして作られたのかグローバル展開裏話(動画付き)
きゃりーぱみゅぱみゅ、中田ヤスタカ、三戸なつめなどの人気アーティストを輩出する中川悠介さん。誰もが生配信できる仮想ライブ空間『SHOWROOM』を提供する前田裕二さん。海を越えて愛されるカルチャーやサービスを生み出してきた2人のスペシャル対談。グローバル展開成功の秘訣に迫る。
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【プロフィール】
SHOWROOM株式会社 代表取締役社長
前田裕二2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業。外資系投資銀行に入社後、ニューヨークに移り、株式市場において数千億?兆円規模の資金を運用するファンドに対してアドバイザリーを行う。13年にDeNAに入社。仮想ライブ空間『SHOWROOM』を立ち上げる。現在はSHOWROOM株式会社 代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いている
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アソビシステム株式会社 代表取締役
中川悠介2007年にアソビシステムを設立。ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿の街が生み出す『HARAJUKU CULTURE』を世界に向けて発信し続けている。近年では、KAWAIIのアイコン・きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーを成功させた他、『もしもしにっぽん』を発表し、日本のポップカルチャーを発信している
「楽しい」という感情から、世界で愛されるビジネスモデルが生まれる
――お二人ともご自身の好きなことを仕事になさっているかと思うのですが、今のビジネスをはじめたきっかけを教えていただけますか?
中川 学生時代から、人が集まるイベントが大好きで、そのイベントを開催するきっかけが原宿だったんです。原宿に集まる仲間たちと一緒にファッションショーやヘアーショーを開催する場所を、自分たちで作り上げていきました。人が集まることが好きだからこそ、イベントは必要なコンテンツだったんです。
イベントをやるにあたって、音楽であればハウス、テクノ、ヒップホップなどのジャンルで分けて企画されるケースが一般的だったのですが、ジャンルではなくコミュニティ、つまりそこに来る人で分けたいと思っていました。自分の仲間からはじめて、さらにその仲間に広がっていけば良いな、って。
――お客さまとしても「このジャンルの音楽を聴きに来ている」のではなく「楽しい空間に来ている」という感覚ということですね。
中川 こちらのエゴでジャンルを決める必要はないですよね。なのでドレスコードなども意味がないと思っていて。こちらが決めたものを提案するのではなく、ユーザーにとって楽しいことこそが一番大事な時代なんです。
――その思いが、イベントに携わるきっかけだったんですね。
中川 そうですね。
――前田さんはいかがですか?
前田 きっかけはふたつあります。まずひとつめは、僕自身がふたつあって、ひとつは僕自身が以前ストリートミュージシャンをやっていた時に、こんなに素晴らしい稼ぎ方があるんだ、と感じたこと。パフォーマンスをしてお金をもらうのは価値を提供する人と支払う人の1to1で行われることなので、一番儲かるのでは、思ったんです。クリエイターがファンコミュニティを形成して、ファンがクリエイターに直接的な支援をするというビジネスモデルが成立するのではないかと感じていました。
ふたつめは、ニューヨークの投資銀行で働いていた時、ニューヨークの新興市場で中国のとある企業が上場するのを見たこと。その企業がまさに「おひねり×インターネット」のビジネスを手掛けていたんですよ。人を幸せにしてその対価をもらうという、僕が素晴らしいと思っていたビジネスモデルが、インターネットを介せば世界中の人にリーチできるわけじゃないですか。そうすれば、クリエイターの可能性はもっと広がっていくと思ったんです。それを先にやられてしまった、という思いが強くて。これはもう株のアドバイスをしている場合じゃないな、と考えるようになったことが、キャリアチェンジのきっかけとなりました。
「海外に出るのは普通のこと」「コンプレックスと憧れの塊」相反する海外への思い
――お二人とも、最初から「これは海外で当たるな」という確信はありましたか?
中川 原宿というテーマが海外の方に注目されていたので、良いものを作れば伸びていくだろうとは思っていましたが、僕らよりも上の世代の方が海外に対する憧れは強かったのではないかと思います。でも、僕にはその憧れが全くないんですよ。僕は海外に出ることは普通のことだと思っていて、原宿、かわいいといったテーマであれば海外で受け入れられるのではないか、と考えたんですよね。なので、きゃりーぱみゅぱみゅの最初のPVも、世界観を大切にして作りました。音楽も、美術も、日本人だからこそ出せるクリエイティビティのすごさにこだわって。日本人って、自分たちを表現するのが苦手じゃないですか。職業であっても業界で区切られていますし、ファッションにもジャンル分けがある。日本はそれぞれの垣根が強すぎて外に出て行きづらくなっているのかもしれないと思っていたので、その垣根も関係なく取り入れていくことが大切だな、とは考えていました。
――今のお話を聞いて、前田さんはいかがですか?
前田 僕は真逆かもしれないですね。だからこそ面白い。僕にとって中川さんは憧れなんです。自然体ですよね。僕の場合は、絶対に海外を倒してやると思っていましたし、コンプレックスの塊でした。なので英語も勉強しましたし、海外への憧れを乗り越えて勝ちたい、という思いを原動力にしていたタイプです。
――ハングリーという言葉が似合いますよね。
前田 ストリートミュージシャンの時に自分も悔しい思いをしたし、周りにも同じように悔しい想いをしている人がたくさんいた。でも、その人たちが悪いのではなくて、世の中の仕組みが悪いんだと思っていたんですよ。
例えば、ちづるさんという方がいらっしゃるんですが、10代の頃、彼女はおニャン子クラブに入りたかったんです。ですが、入りたいからといって入れるものではない。主婦として生活してきた彼女は、おニャン子クラブを夢見ていた頃から約30年の月日を経て、SHOWROOMと出会いました。まずは視聴者として見始めるのですが、だんだん自分を表現したいという気持ちが高まっていき、ついに配信にチャレンジしたんですよね。ちづるさんの歌やダンスは、アイドルと比べれば技術的には叶わないかもしれない。それでも、ちづるさんを応援するファンがいるわけじゃないですか。その小宇宙感が好きなんですよね。従来の最大公約数での一方通行的なコンテンツの出し方しかできない世界では戦えなかった彼女の才能も、SHOWROOMであれば自分の才能を使ってコミュニティを作ることができるんですよ。
中川 30年越しの夢が叶ったということですよね。
前田 ちづるさんには実力があると思うんですよ。では実力とはなんでしょうか?僕は、ファンをつけることだと思います。あなたが言うのであれば付いていきます、という人が何人いるのか。
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※このコンテンツは、2017年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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