勤務初日で売上トップクラスに~「未経験から結果を出す人」普遍の3原則を凄腕タクシードライバーに学ぶ【1万時間未満でプロになる方法】
「1万時間の法則」というものを耳にしたことはないだろうか。
「スキルをプロ級に熟達させるには1万時間くらいの修練が必要だ」という説で、起業家やスポーツ選手、職人など、あらゆる分野で超一流と呼ばれる人たちに共通しているのは、その仕事に1万時間以上を費やしている、というものだ。
しかし、世の中には1万時間を費やさずにトッププレイヤーへと上り詰めている人たちもいる(事実、こんな説もあったりする)。そのような人たちが、短期間で成果を挙げられる理由はどこにあるのか。
今回は、国際自動車に転職してすぐに、トップクラスの売上をほこるタクシードライバーとなった鈴木篤史氏を紹介しよう。
新人タクシードライバーの売上は1日4~5万円が平均値。1日8万円を超えると、業界ではトップクラスのドライバーといわれている。そんな中で、鈴木氏は勤務初日から8万円を稼ぎ、5日目には11万円、3カ月経つころにはひと月で109万円の売上を上げていた。
タクシードライバーになる前は実家が営む建設会社に12年間勤めており、「作業員を送迎することはよくあった」もののプロのドライバー経験はなかったという。なのになぜ、すぐにこれだけの成績を上げられたのか。
そこには、どの仕事にも通用する、シンプルな「秘訣」があった。
【1】業界に古くからある「標語」は、成果を出すための最高の教科書
どの業界や企業にも、理念や行動指針を示すような標語があるだろう。ただ、それを普段から強く意識して仕事に臨んでいる人はどれだけいるだろうか。
タクシー業界でも「安全・確実・迅速・快適」という標語があるが、実はこの標語を忠実に実践することこそが、トッププレイヤーへの近道だったと鈴木氏は語る。
「私は、この4つの単語の順番にも注目してみました。これはお客さまが私たちにお求めになる順番です。
お客さまの命をお預かりしている以上、『安全・確実に目的地に着くこと』は大前提。着目すべきはその次に『迅速』が来ていることです。接客ももちろん大切ですが、お客さまは接客力を基準にタクシーに乗られるワケではありません。法定速度を守りながらも、1分でも早くお客さまを目的地にお届けすることを優先させた上で『快適』をご提供することが、実績を残していくための秘訣です」
接客に力を入れ、長距離移動の多い指名客を増やす方が売上につながるのでは……とも思ってしまうが、いつ、どこから連絡があるか分からない指名客に依存するのは得策ではないという。
「長距離移動の多いお客さまと人脈を築き、売上を伸ばしているドライバーがいることは事実です。が、それだと売上はお客さまのご都合次第になってしまう。当たり前ですが、お客さまからご連絡がなければ売上は上がりません。また、お客さまをお迎えに上がる時間やお送りする時間を考えると、その時間も有効に使う方が効率が良かったりもします。
もちろん、私も名刺を交換してご指名いただくことがありますので、その際は伺わせていただきますが、基本的には『一期一会』を大切にしています」
乗客を乗せ、目的地までお送りする。タクシードライバーの仕事は非常にシンプルだからこそ、「安全・確実・迅速・快適」を愚直に実行するしかなかったと鈴木氏は笑う。
さまざまな危険が潜む都内の道を「安全・確実」に走るだけでも簡単なことではないが、この4つの標語を順番通りに実行することこそが乗客の満足につながり、かつトッププレイヤーへの最短距離となるようだ。
【2】1つの仕事から2つ目、3つ目の仕事を生む
どの仕事でも大切になってくるのが「段取り」。特にタクシードライバーの場合は、空車の時間をできる限り少なくするためには、次の仕事、またその次の仕事をイメージすることが重要だ。
「お客さまが手を挙げて、乗ってくださる」というのはあくまで結果であって、そこまでの過程が大切だと鈴木氏は語る。
降車地を伺う際に、「この場所だったら降りていただいた後にA地点へ行けば次のお客さまがいるかもしれない、もしいなかったらB地点へ、そこにもいなかったらC地点へ……」といったように、2手、3手先まで考えながら組み立てているという。
「お客さまがいるポイントや、効率よくお乗せできるルートを考えながら段取りを取っていくのは、経験を重ねないとできないと思いがちです。でも、実はその逆。『何もできない新人の自分に、何ができるんだろう』と考えた時に、自分でもできるのはまず段取りを考えることだなと思ったんです。
そこで私が目を付けたのは、繁華街。24時間お客さまがいらっしゃる場所として思い浮かんだのが、新宿の歌舞伎町辺りでした。とりあえず歌舞伎町に向かって走る。すると、経験値がゼロだった私でもある程度乗車していただけるので、近辺の乗車確率がいい場所や時間帯を、頭の中にストックしていくことができます。
このストックが増えるにつれて、お客さまが降車した後に行くべきルートが、自然と頭の中で組み立てられるようになっていきました」
右も左も分からないからこそ、確率のいい繁華街を拠点に仕事をして、他人の何倍ものスピードで知識と経験を習得していった鈴木氏。決められた時間の中でより多くの経験を積める環境に自ら身を置き、短期間で経験値を高めていく。それが、1つの仕事を2つ目、3つ目の仕事へと広げていく秘訣なのかもしれない。
【3】“3分”を生み出す
皆さんはタクシーを利用した時、「このタクシー、よく信号で止まるなぁ」なんて思ったことはないだろうか。この「信号停止」の時間をいかに削るかで、売上は大きく変わってくるという。
「30分の距離を走る時に3回赤信号で停止すると、3分のロスになります。一方、すべて青信号で行ければ、27分で到着することができる。『たかだか3分』と思うかもしれませんが、私たちは1日で平均して30回はお客さまをお乗せするため、単純計算で3分×30=90分。つまり、1日で1時間半も無駄な時間を過ごすことになるのです。
1時間半を無駄にするドライバーがいる一方で、人より1時間半多く仕事ができるドライバーになることもできる。同じ時間勤務していても、『仕事をしている時間』にはこれだけの差が生まれるのです」
まさに「ちりも積もれば山となる」だ。では、どのようにしたら無駄に停止することなく、走り続けられるのか。その秘訣は、「常に周りの状況を確認すること」だと鈴木氏は言う。
例えば、都内の道は左車線に駐車車両が多いので、なるべく左車線を避けて走る。走る車は多いがそこにスペースが生まれる。ほかにも、自分がいる道路にバスやトラックが走っていないかを確かめる、そもそも信号がない裏道へ抜けられないか考える……などと状況を常時確認し、判断を変えることの積み重ねが、“3分”を生み出すのだそうだ。
「この“3分”を生み出すことにこだわっていると、(前の乗客に)降車していただいた直後に不思議と次のお客さまの手が挙がるんです。逆に『今日はスムーズに行かなかったな』という日は、お客さまの手も挙がらない。信じられないような話かもしれませんが、自分なりに質の高い仕事をしてベストを尽くせると、イメージが湧くんです。『お客さまはおそらくこの辺りにいらっしゃるんだろうな』っていう。実際そこに行くと、ちょうどお客さまがいらっしゃるんですよ」
意識を良い状態に保ち、自分の中でリズムができると、自然と幸運を呼び寄せるのかもしれない。
一番の秘訣は、「好きこそものの上手なれ」
こうして、自らさまざまなノウハウを見いだしてきた鈴木氏だが、トッププレイヤーへと上り詰める一番の秘訣は「『好き』を仕事にすること」だったと言う。
「子どものころ、祖母の家に遊びに行くと、よくタクシーでおもちゃ屋さんに連れていってもらっていました。その時に、『タクシーの仕事をやってみたいな、楽しそうだな』なんて思っていて。大人になってからも、やっぱり運転は好きでしたね。父の建設会社を手伝っている時も、毎日仲間を家まで送迎していて、『疲れているから少しでも早く届けてあげたい』と思って早く到着できるルートを自然と考えたりしていました。
タクシードライバーになってからは、『仕事=趣味の延長』といった感覚。お客さまが乗っていると、自然と疲れないんですよ。多分、根っからこの仕事が好きなんでしょうね」
気力・体力が必要な仕事でも、心から楽しむことができれば、自らトッププレイヤーへと駆け上がる最短距離を見つけられるのかもしれない。
取材・文・撮影/光谷麻里
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