キャリア Vol.635

「根性論が多い」「量をこなして残業するなって矛盾じゃない?」20’sの疑問を“リーマン・ショック世代”にぶつけてみた

アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが2008年秋に経営破綻したことによって生じた、世界的な金融危機、リーマン・ショック。その影響は日本にも及び、当時新卒社員だった2008年入社世代と、内定前後で世の中の状況が一変した2009年入社世代の中には、辛酸を嘗めた人も多かった。

「なぜ、“リーマン・ショック世代”の先輩は怖いのか」を探る本企画。後編では、実際に20’sから募った「リーマン・ショック世代への疑問」を本人たちにぶつけてみた。

>>前編:“リーマン・ショック世代”の先輩はなぜ怖い? 2008&2009年入社の人を集めて理由を探ってみた

リーマンショック世代
石垣さん(仮名):2008年、Web系企業に新卒入社。約3年営業として勤めた後に転職し、昨年独立
上野さん(仮名):2009年、ネットメディアを運営する企業に新卒入社。約5年勤めたのち、金融系企業に転職
深川さん(仮名):2009年、人材系企業に新卒入社。現在入社11年目の中間管理職。

20’s「つらいなら辞めたら? って言われてドン引きした」
→リーマン世代:むしろ優しくないですか?

−−後編では、入社1〜3年目の人に聞いた、リーマン・ショック世代への疑問を見ていきたいと思います。まずはこちら。

20's

「仕事が合わないと思うなら辞めたら?」と言われてドン引きした。ちょっとドライ過ぎる気が……。

石垣さん:いやいや、むしろこれ優しくないですか? 辞めたら自宅まで追いかけるようなブラック企業が問題になっていて、退職代行サービスもある中で、「逃げ出していいんだよ」って言っているわけで。なんとなく、引き止めさせることで現状を改善させようとする甘えが見える気がしますね。

深川さん:「つらいから辞めたい」って話してきた後輩に、「じゃあもう辞めたら?」って実際に言ったことは過去何度かあるんですよ。話をよく聞いた上で「現状のつらさから逃げたいだけなのか」「会社や仕事が本当に合わないのか」を判断して、前者の場合はすぐ言っちゃいますね。

−−後輩の反応は?

深川さん:大抵が「ちょっと待ってください」って焦りだします。引き止めてもらうことで必要とされている実感を得たいという気持ちも分かりますけどね。

上野さん:僕はそもそも会社を辞めることがネガティブなことだとは思わないです。自分のやりたいことや身に付けたいスキルを考えた時に、辞めるっていう選択肢を持つのは大事だと思うんですよね。僕自身、転職したのはスキルを伸ばしたかったからだし。それに、組織構造はなかなか変わらないから、不満があるなら環境を変える方が手っ取り早いとも思います。

深川さん:同感ですね。リーマン・ショックの時に退職した同期は、今幸せに仕事をしているんですよ。合わない環境が分かったからこそ、自分に合った職場が見つけられる部分はある。退職者が多い時期に社会人になったからこそ、思うことかもしれないですね。

「根性論が多い」
→自覚あります。でも、根性って大事だよ!

−−続いて、一番多かった意見がこちらです。

20's

根性論が多い。

上野さん:これは僕らが氷河期世代に対して抱いていたイメージと同じですね。30代は根性論を言いがちな世代なのかな?

石垣さん:僕も上の世代から「俺の若いころは『24時間戦えますか?』っていう栄養ドリンクのCMを地でいく働き方をしていた」って話をされて、ウザいと思ったことがあります(笑)。

深川さん:私は根性論が嫌いですけど、どこかで根性論は大事だとも思っているんです。根性がないと何も成し遂げられないと思うし。そういうのがにじみ出ちゃってるんだろうなぁ。

石垣さん:でも、根性って必要ですよ。アイデアや工夫でどうにかできることには限界があって、粘り強さに人は動く。「お願いします」って頭を下げたり、食い下がる勇気を持ったりするのは大事なんじゃないかな。

上野さん:パッションは絶対に必要ですよね。最近は「個の力を強めよう」ってよく言われるけど、それって人に言われてやることじゃないですよね。例えば僕はアクセス分析をする部署にいた時、統計のスキルがあればもっとやれることが増えると思ったから、独学で休日に勉強していた時期がありました。誰かに言われたわけじゃないけど、「こうなりたい」っていう想いがあるから頑張るわけじゃないですか。

石垣さん:なりたい姿ややりたいことを実現するために、仕事に手をあげる、勉強する、人に会いに行く。数字がいかない時にただ頑張れって言うだけの根性論はよくないと思うけど、全ての根性論が悪いわけではないとは思いますね。

「とにかく量をやれ!って言う」
→効率的な方法を考える余地はたしかにある。ただし……

−−根性論に関連したところで、こんな声も多く寄せられました。

20's

「とにかく量をやれ」と言われる。

20's

「目標を達成してないのに帰るな」という圧力を感じるが、残業をしない方がいいという今の風潮に合ってないのでは?

石垣さん:量が質に転化するっていうのは絶対にあると思っていて、社会に出て最初の数年に頑張った人は、あとでやっぱり成果を出すんですよ。センスがものを言いそうな音楽やアートの分野ですら、一流の人は三流の人よりもボツ作品が多いんです。それだけ時間を費やして量をやっているってことじゃないですか。

深川さん:ある程度量をやるのは大事だと思う一方で、がむしゃらに働いてひたすら量をこなそうっていう考え方への違和感も同時にあります。もっと効率的なやり方を考えられる余地はあるし、私たち上の世代がやらなければいけないとも思う。ただ、目標に届いていなかったり、やるべきことを残していたりするのに早く帰るのは気になりますね。どういう気持ちで帰るの?って思っちゃう。

石垣さん:売上目標はお客さんの都合や時の運もあるけど、例えば「1日100件電話をかける」っていう目標は自分次第じゃないですか。それはやりなよって思っちゃうなぁ。

リーマンショック世代

石垣さん:ハングリーなタイプが減っているって話は同世代からよく聞きますね。

深川さん:入社1〜3年目くらいの子を見ていると、「会社に雇われている」という意識が強過ぎる気がするんですよ。仕事が与えられるのも、できなくてフォローしてもらえるのも当たり前で、仕事を自分事と捉えていない人もチラホラいる。だからやるべきことを残して帰れるんだろうけど、それだとやっぱり実績は出にくいですよね。

「量をやりつつ残業するなって矛盾じゃない?」
→実現できる工夫を一緒に考えたい

−−その一方で、こんな戸惑いの声も見られました。

20's

リーマン・ショック世代が量をこなせたのは、残業OKだったからなのでは?

20's

「量をやれ、でも早く帰れ」というのに矛盾を感じる。

石垣さん:これは大変だよなぁと思います。めちゃくちゃ仕事をしたい人にも残業をしてはいけないっていう制限がかかってしまっているから、どうやってスキルを伸ばしていくべきか、悩んでいる人は多いんじゃないかな。

上野さん:前職では残業時間を減らすことを目的に、商品構成をシンプルにして、売りやすくしたらしいんですよ。その結果、個人の営業力は上がりにくくなったし、腕のいいセールスもいらなくなりました。売上に差がつかないからインセンティブが減って、優秀な人は辞めてしまっている。それでも会社が回るような構造になってはいるものの、「その仕事は楽しいのか?」っていうのは考えちゃいますね。

深川さん:成長の機会を奪わずに業務量のバランスを取るのは難しいですよね。

上野さん:それこそ「時間内に頑張れ」ってただ言うだけの根性論ではなく、合理的に進められる工夫は一緒に考えていきたいですね。

「ワークライフバランス、ある?」
→仕事とプライベートのバランスは見直さなきゃって思っています

−−同じようなところで、こんな意見をあげる人もいました。

20's

リーマン・ショック世代には、ワークライフバランスがない。

上野さん:僕が今と昔で一番違いを感じるのは、まさに働き方の部分なんです。僕らが新卒だったころは派遣社員や業務委託を切った分、一人一人の業務量が増えて、残業も多かった。それから10年経ったら今度はワークライフバランスって言われて、ギャップが一番大きい世代な気がするんですよね。

深川さん:ワークライフバランスっていう言葉が独り歩きし過ぎている気もしますけどね。ものすごくライフを大事にしたいわけでも、仕事をしたくないわけでもないのに、「ワークライフバランスが実現できる会社はホワイトで正しい」っていうイメージが強過ぎるんじゃないかな。

石垣さん:そもそもワークとライフのバランスは人によって違うはずで、「ワーク9対ライフ1」がちょうどいい人もいると思うんですよ。ごちゃごちゃ言う若手の子ほど、自分にとっての良いバランスが分かっていない感じがしますね。自分なりのワークとライフのバランスは、ある程度仕事をやってくうちに見えてくるものだと思いますし。

深川さん:ただ、少なくとも「上司が残っているから帰れない」っていう理由でワークライフバランスが取れないメンバーがいるのは嫌だから、私は早く帰るようにしています。私たちも仕事とプライベートのバランスは見直す必要があるなと思いますね。

「10年前と話が違うぞ?」リーマン・ショック世代も戸惑っている

リーマンショック世代

−−リーマン・ショックが起きて景気がガタガタになったのが2008年で、働き方改革が提唱されるようになったのは2016年。急に世の中が変わって、リーマン・ショック世代にも葛藤があるというのは新たな発見でした。

上野さん:ワークライフバランスも、限られた時間内で量をやるって話も、これまでにはなかったことなんですよ。ここ数年に初めて起きていることで、我々も模索中なんです。「10年前と随分話が違うぞ」って、僕らも戸惑っているんですよ。

石垣さん:僕ら世代も完璧ではないから、若手の意見を聞かせてほしいし、思うことがあるなら相談してほしいなと思います。その上で、一緒に良いやり方を考えていきたい。でも、噂で不満の声を聞くわりには直接耳に入ってこないんですよね。やっぱり怖がられているのかな? 言ってくれればどうにかできることは案外ある気がするんですけど……。

深川さん:あとは私たちも価値観のアップデートが必要ですよね。例えば最近、マネジメントの時に怒るよりも褒める方が効果的な気がしていて。自分が新卒のころを振り返ると、怒られてばっかりで、褒められた記憶って全然ないんですよ。でも同じように怒るマネジメントをしてしまうのは、ある意味で八つ当たりだし、今の時代にも合わない。そこはやっぱり、私たちも変わっていかないといけないですね。


なんだか怖いリーマン・ショック世代。前編では、景気が悪い時期に社会人になり、「その当時の厳しい状況がデフォルト」になってしまっていることが、20’sから「怖い」と言われてしまう大きな要因であることが分かった。20’sの疑問をぶつけた後編では、世の中の働き方が急速に変化する中、「まだ変化に追いつけていない」という彼らの戸惑いが垣間見えた。

会社の中堅メンバーであるリーマン・ショック世代が変われば、20’sが働きやすい環境は実現しやすくなるはず。「自分たちも変わらなければ」と話す先輩たちの変化を加速させるのは、きっと若手の声だ。リーマン・ショック世代と一緒に新しい仕事の仕方や働き方を模索するつもりで、困っていることを相談してみよう。若手のころに苦しい思いをしてきた世代だからこそ、真剣な後輩には親身に手を差し伸べてくれるはずだ。

取材・文・構成/天野夏海

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