『転職アンテナ』motoが教える20代の勘違い転職5つのこと「大手企業出身、新人MVP……その肩書き“だけ”では戦えない」
5回の転職により年収が240万円から1500万円にアップした‟転職の達人”こと、motoさん。運営するブログ『転職アンテナ』が人気を呼び、著書『転職と副業のかけ算』は発売7日目で3万部超のベストセラーとなった。
motoさんの元には、キャリアに悩む20代から、日々たくさんの転職相談が寄せられている。しかし中には、学生時代の就活情報や小手先ノウハウを鵜呑みにしたまま、「勘違い転職活動」をする人も多いようだ。
そんな20代に対して、motoさんは「最新の転職情報を知ることは、いざというときの“救命ボート”を用意しておくようなもの」と話す。
実際に転職するにしてもしないにしても、『いつでも転職できる状態』をつくっておくことで「会社に依存した働き方」から抜け出すことができます。この状態をつくるためには、社内の情報だけでなく、社外の情報もキャッチアップしておくことが大切です。
「いつでも転職できる」状態にするためには、最新の正しい情報をゲットして『今の自分の市場価値』を把握することがポイントだ。
今いる会社の中での立ち位置ではなく、転職というマーケットの中で自分はどこに位置しているのか、世の中ではどんな能力が求められていて、自分には何が足りないのかという、社内と社外における“差分”を正しく把握することが大切。
どのような能力を身に付けたら自分が世の中から必要とされる人材になれるか分かれば、どんな仕事をすべきかも見えてきます。
しかし、これだけ世の中には転職に関する情報が溢れているのに、その中には古い価値観のものも多い。特に初めての転職を経験する人たちの中には、数年前に転職した経験のある先輩や、親のアドバイスなんかを鵜呑みにしてしまっている人も。
そこで今回は、motoさんに寄せられた「転職の勘違い」の例を紹介。最新の情報にアップデートして、何があっても困らない“キャリアの救命ボート”を用意しよう!
勘違い1「大手企業って“潰しが利く”んでしょ?」
「有名企業に入社すれば自分の市場価値が上がると思っている人は案外多い」とmotoさん。確かに就活のときも、「大手に入れば潰しが利く」と言われてとりあえず有名企業を目指す人は多かったはずだ。しかし「大手出身」の肩書き自体は、市場価値に直結するものではないという。
僕は「市場価値=自分の生産性」だと思っています。つまり「会社の看板を外した時に何ができる人なのか」という「個人」に紐づくもの。
大手企業に在籍していても、上司に言われたことしかやっていなかった人や、自分の意志を持たずに仕事や作業をこなしてきてしまった人は、社外に出たときに価値が付きづらいと思います。所属企業のネームバリューだけでなく「成果を最大化するために、自分の脳みそにどれだけ汗をかいたか」が大切です。
例えば転職先で「プロモーションを任せる」と言われたとする。その時、前職と同じことをして同じ成果しか出せない人と、前職の経験を踏まえた上で改善し、高い成果を出す人だと、後者の方が評価されるのは当然だ。中途採用で活躍する人が必ずしも「大手出身」とはいえないことに、多くの企業は気付き始めている。
転職活動で評価されるのは「どこの会社にいて、どんな仕事をやってきたか」という点だけでなく「この人は、何ができる人間か?」という仕事の中身と再現性の高さです。たとえ小さな会社にいたとしても、高い成果を自力で出してきた人であれば市場価値も高いはず。
僕自身も、ファーストキャリアは地元のホームセンターだったので、決して大手有名企業というわけではありません。それでも市場価値を意識して『自分にできること』を考えて行動し、成果を出し続けた結果として2社目で年収110万円アップの転職を叶えることができました。
勘違い2「“新人MVP”のカードって、最強でしょ?」
「新人MVP」や「全社○○賞」など、社内表彰は確かにその人の実績だ。でも、あくまでも社内評価だということを忘れてはいけない。
社内表彰は確かに素晴らしいものだと思いますが、あくまで“社内の物差しにおける評価である”ということを認識しないといけません。転職市場で評価される能力と、社内で評価される能力は必ずしもイコールではない。
「新卒1年目なのによく頑張った!」と褒め称えられることもありますが、どの部分が評価されて、世の中ではどのように評価されるものかを考える視点を持つことが大切です。
改めて、市場価値とは「自分が何をしてきたのか」で決まるものだということを忘れてはいけない。大手企業が従来ほど潰しが利かなくなったのと同じく、今の転職市場で問われているのは「ブランド」や「肩書き」ではなく、明確な実績なのだ。
社内表彰が市場価値に直結しているかどうかは、社外の人に『私はこういう表彰を受けて、こういう点を自分なりに努力したんだけど、あなたの会社ではどういう人が評価されてる?』と聞いてみるといいです。そうすれば、自分の正しい立ち位置や、周りへの見せ方も分かってくると思います。
勘違い3「資格は“専門知識があります”って、アピールになるよね?」
希望する仕事に関連する資格を取れば採用されやすい、と考える人は多い。ただ、“取っただけ”で市場価値が上がるとは言い切れない。
資格を取ることに対して僕はポジティブに考えていますが、ただ取得するだけでは意味がないとも思っています。
たしかに昔は、資格を持っていることが一種のアピールになりました。ですが今は多くの人が資格を所有していますし、資格を持っている人にクラウドワークスなどを通じて仕事の依頼もできる時代になっている。つまり、ただ資格を持っているだけでは、強みになりにくい時代なんです。
たしかに資格保有者は増えているし、専門的な知識などもネットで誰でも手に入れられるようになった。だからこそ改めて資格を生かして「自分はどんな課題を解決できるのか」を考えないと、その人の市場価値にはつながらない。
資格を取るだけでなく「この資格を活かすことで、私は御社のこんな課題を解決できます」と、自分の能力を掛け合わせた提案をできるようにしておくのが大事です。ただの資格コレクターだと思われないよう、資格の目的と使い方を自分なりに言語化しておくといいでしょう。
勘違い4「“3年働いた事実”は評価されるでしょ?」
motoさんによると「短期間での離職は傷になってしまうから、3年は我慢して働く」と考えている20代は、意外とまだまだ多いそう。
たしかに上の世代ほど「石の上にも3年」と考える人は多いですが、転職が特別なことではなくなった現代においては、そうした考え方に疑問を持つ人も増えている印象があります。
僕個人としては、我慢して働いて在籍期間を延ばしたところで、次のキャリアに繋がるわけではないと考えていて。イヤな上司の下で、ただ言われたことだけやり続ける仕事をするより、自分にとって生産的な仕事をした方が次のキャリアに繋がるはずです。
大事なのは期間よりも、その仕事で「何をしていたのか」なのだ。
主体的に取り組んだ「中身の濃い1年」を過ごした人と、ただ上司から言われたことをこなして、自分では何も考えずに3年を過ごした人。「どちらを採用したいか?」と聞かれたら、やはり目的があって主体的に働いた1年間がある人の方を選ぶ企業が多いと思います。大切なのは期間ではなく、仕事の中身ですから。
勘違い5「内定貰ったら、転職しなきゃいけないよね?」
転職の決意が固まっていないのに、採用試験に臨むのは気が引ける……と思う人は多い。しかしmotoさんは「気にすることはない」という。
採用試験に受かったら、転職しなくてはいけないと思っている人は多いです。でも入社する・しないは求職者が決めること。受かったからといって必ず転職しなきゃいけないわけではありません。
もちろん、冷やかしで選考を受けるのはダメだ。しかし、多少なりとも転職が視野にある状態で受ける分には問題ないとmotoさんは考えている。
また、人事は求職者に対して「お互い納得した上で入社して、長く働いてほしい」と思って採用を行なっているわけなので、選考の結果「やはり転職しなくていい」と思ったのであれば、断ることがお互いにとってWIN-WINなのだ。
入社するかどうかは受かってから考えればいいので、選考段階で不安になる必要はありません。
誰もが1社だけ受けて内定を決めるわけではありません。選考中は『自分の価値が評価されるのかどうか』、そして『この企業は自分のキャリアにとっていいのかどうか』を確かめるくらいの気持ちで挑んでいいと思います。
最新の転職情報は、フレッシュな中途入社者に聞け!
今回はmotoさんに”勘違い転職”の例を紹介してもらったが、転職に関する情報は日々変わっている。新しい情報は、どうやって手に入れたらいいのだろう?
motoさんは「まず自分の中で“情報のテーマ”を決めて、周りにいる転職経験者の話を聞くこと」が一番の近道だと教えてくれた。
僕の場合は「年収を上げた人はどんな転職をしたのか」をテーマにして、いろんな人に話を聞きました。そうすると、年収を上げるはこういう考え方をしているんだなと、自分にはない視点や共通点が見えてきます。
実際に僕がよく語る、自分の仕事の軸を年収水準の高い業界にずらしながら転職する「軸ずらし転職」も、転職で年収を上げた先輩方の話と実体験から気付きを得ました。
例えば社内にいる中途採用の人をランチに誘って、「前の会社でどんな仕事をしていました?」「どんなふうに転職を決めました?」などと質問すれば、いろんなことを教えてくれるはずだ。最近まで転職活動をしていた人なので、一番フレッシュな情報を手に入れることができる。
転職活動は個人によってまったく違うものなので、正解はありません。あくまで転職は“手段”の一つに過ぎないので、自分にとって参考になる点を取り入れた上で、転職するかしないかを考えればいいです。
僕と全く同じやり方で転職したとしても、全く同じ結果になるわけではないので、自分で情報を集めて、自分で行動することが大切です。
こうやってライトに知人の体験談を聞いた上で、次は転職サイトや転職エージェントといったプロの手を借りるのも一つの手だ。
転職サービスは、最新の転職事情を知る、自分の市場価値を計るという目的で気軽に登録していいと思います。
そこから「この能力を身に付けていけば、次にもっと理想的な会社にいけるかも」とか「今の会社だと無理そうだな」みたいなことが分かってくる。その差分を埋めるために今の仕事を頑張るべきのか、もっといい会社に転職するべきなのか、自分のキャリアを考えるきっかけにもなるのです。
「会社を辞めること」を目的とした転職活動はするな
最後にmotoさんは「転職活動をするしないに関わらず、キャリアについて真剣に考えたいなら、職務経歴書は常に最新の状態にしておくのがオススメ」とアドバイスをくれた。
毎月のように職務経歴書をアップデートすると、改めて自分の仕事を振り返ることになります。さらにそれを持って転職イベントや転職エージェントの面談に行ってみてください。
特に転職エージェントはプロなので、「この人はどの企業でも受かる」と感じたら、求人をたくさん出してくれます。こうした転職エージェントの反応から今の自分に市場価値があるのかどうか分かりますし、求人を紹介してもらえない場合も「何がダメなのか」が見えてくると思います。
逆に、してはいけないのは、「会社を辞めること」を目的とした転職活動をすることだ。
転職はあくまでも手段です。「自分はどんな生き方をしたいのか」という目的を達成するための選択肢の一つに過ぎません。自分が目指すキャリアを忘れないためにも、職務経歴書を更新することで自分の仕事を振り返る機会をつくるといいですよ。
自分の市場価値を、日々意識すること。そのために最新の転職情報を、直近の転職経験者や、転職サービスを使ってどんどんアップデートさせていくこと。転職が当たり前のものなった今を生きるビジネスパーソンにとって、理想的なキャリアを歩む上でこれらは必須のアクションといえるだろう。
取材・文/キャベトンコ 企画・編集・撮影/大室倫子
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