リクナビNEXT・doda・type編集長が教える転職の新常識「2020年、20代は“自分を知る”ために動こう」
中途採用が活発化し、目まぐるしく変化する転職市場。もちろんこの波は、採用を強化する企業側のスタンスにも表れている。そういった企業側の変化を知ることは、転職を視野にいれている20代にとって、自身の今後を考えるヒントの一つとなるだろう。
では、実際に採用を強化している企業のスタンスは今、どのように変化しているのだろうか?
今回は、2019年11月28日(木)に開催されたイベント『大手転職サイト・編集長Battle Talk Live #3(主催:一般社団法人グローバル人事塾)』より、多くの採用強化中の企業をクライアントにかかえる転職サイト『リクナビNEXT』、『doda』、『type』編集長の座談会の一部を紹介する。モデレーターは、『HRog』編集長の菊池健生さんが務めた。
またイベント後には、20’s type読者に向けて各編集長から「これからの20代に求められるアクション」についてもアドバイスをもらった。
「転職の日常化、働く人の多様化」が加速した2019年
菊池:この1年、大手転職サイトでは、ロゴやキャッチフレーズなどの変更が目立ちましたよね。これらは転職市場の変化を受けての判断だったのでしょうか?
doda大浦:そうですね。弊社は『DODA』から『doda』に変更したのですが、『DODA』はブランドの自己主張が強くて、ちょっと意識高い系なイメージでした。でも、今後転職は必ず日常のものになってくる。そう考えているので、親しみやすさを表現するために、ブランド名を小文字の『doda』に変更したんです。ふっと転職を思い浮かべたときにdodaが横にいるようなブランドにしたい、という意図です。
菊池:なるほど、転職は意識の高い人だけのものではなくなってきたと。typeもサイト名を『@type』から『type』に変更しましたよね?
type前田:はい。typeはもともと雑誌から派生してWebサイトができたので、その区別のために「@」が付いていました。ただ雑誌もなくなり、Webがメインサービスとなって久しいので「@」を取ることで改めて「typeのWeb版」というニュアンスをなくしたかったのが一つ。
そして、弊社の派遣や人材紹介のサービスなど全てを『type』ブランドで統一したいというのがもう一つの理由です。これからは多様な働き方をする人が増えていくはずだから、「全ての人をtypeが応援したい」という意図ですね。
リクナビNEXT藤井:転職の日常化、働く人の多様化、というのは世の中全体のトレンドですよね。いろんな働き方・生き方が多様化するにしたがって、企業の採用手法も、働く人の転職ルートもマルチプルになっていく。そうなると、人材業界はこれからもっとカオス状態になっていくと思います。
転職サイトだけではなくて、エージェントやダイレクトリクルーティング、リファラル採用などさまざまな採用手法も広がっていますからね。そのとき、多様化・混沌化する手法をどうシンプルに統合するか? この複雑性を減らすことこそ、人材業界に突きつけられる大きな課題になってくると思います。
菊池:転職に対するハードルも下がったし、その手法も多種多様になってきている。それがより一層色濃くなってきたのがこの1~2年だったというわけですね。
個人が「成長のステージとして企業を活用する」流れは止まらない
菊池:企業側が採用で重要視することも変わってきているのでしょうか?
リクナビNEXT藤井:企業側の採用ターゲットの変化でいうと、「偉人から異人へ」という動きは広がっていると思います。つまり異業界や異職種採用が当たり前になるといった動きです。これまでは業界知識を持った即戦力、いわゆる「同業界の偉い人」が重宝されていたけれど、今はその業界の「偉い人が知らない異業界のことを知っている人」、つまり異人を採用する。
自動車業界がAI人材を、化粧品会社がインスタグラマーを採用するのは象徴的ですね。こうした動きが広がると、異人を中核に迎えて進化をし続けるシリコンバレーや大リーグのように、事業的にも組織文化的にも良い化学変化が起こると期待しています。
doda大浦:従来はいわゆる「キャリア」の時代でしたもんね。キャリアは「轍(わだち)」という意味なので、転職でも「どこの大学を出てどの会社にいたのか」というのが重要視されていた。
菊池:たしかに、ひと昔前までは「良い大学・大企業は最強のカードだ」というイメージはありました。
doda大浦:その後、訪れたのが「スキル」の時代です。自分は何ができるのか、という。しかしそれも陳腐化しつつあって、最近は「複数のものを掛け合わせて人生をつくっていく」ことの方が大事だという価値観に変化しています。
リクナビNEXT藤井:元リクルートの藤原和博さんが提唱している、「3つの異なる軸を持っていれば『100万人に1人の存在』になれる」といった掛け合わせ理論ですよね。
type前田:たしかに、昔みたいに本業一本ではなく、「副業など、プライベートでどんなことをしているのか」も含めて総合的にその人の価値を見るようになっていると感じます。
doda大浦:そうだと思います。また、ここ1~2年でいうと、企業も人も「過去や未来」ではなく「今」を見るようになった印象です。例えば「未来の出世のために転勤しましょう」みたいな価値観は少なくなってきている。だから僕ら人材会社側も、「今」転職することにどんな意味や価値があるのかを伝えることが大事になってきたと思いますね。
リクナビNEXT藤井:社員や転職者の「今、これが好き」「今、やってみたい」といった価値観は無視できないですよね。われわれ人材会社もそうですし、採用をする企業も求職者のそういう価値観を大事にしなければ、という感覚を持ちつつあると思います。
菊池:なるほど。
リクナビNEXT藤井:例えば、今までは「社員の出世を応援する」ことは、あくまでも社内のキャリアに限定した話でした。でも最近は、「社内外で活躍できるように社員を応援する」ような企業も増えてきたと思います。アルムナイ(退職者)コミュニティーなんかも重要視されてきましたしね。
菊池:分かります。僕の会社でも、ある営業社員が「エンジニアになりたい」と言ってきたけど、未経験からできるエンジニア業務が社内になかったことがあって。本人の希望もあって、役員総出で転職先を探しました(笑)
doda大浦:企業が一組織のために個人のキャリアを描こうというスタンスは、もう古いのかなと。これまでは、企業が社員を雇用してあげる代わりに、人事権を握っていました。でも今は、企業と個人の関係はフラットになっています。だから個人が「成長のステージとして現職のフィールドを活用する」という流れは止まらないと思いますね。
type前田:転職、副業、パラレルワークなど、社員側が自分の成長のために取れる選択肢も多様になってきましたしね。一方で選択肢が広がったことで、「こうすれば良い」という汎用的な道標がなくなってきたことで、これからの働き方について迷う個人も増えてくると感じています。
doda大浦:そうですね。だから企業側も個人との絆を社内に留める前提で考えないようになってくると思います。採用のためにも「あの会社にいくと、どの会社でも通用するような力がつくんだよね」という企業を目指すようになるでしょうね。これからは「いつでも転職できる力」を社員に与えてあげられる企業が強くなると思います。
リクナビNEXT藤井:企業と個人の関係はフラットになっていますが、採用に関しては、企業よりも個人の方が強くなっている印象です。これから企業は「求職者を採ってあげる」みたいな考えでは採用できないようになりました。まさに「採って用いる」と、人を道具のように見てしまいがちな「採用」という言葉に潜む概念を、一度、疑った方がいいかもしれません。
20代が取るべきアクションって?転職サイト編集長たちのアドバイス
個人が成長のステージとして転職先企業を選ぶ、企業側は「異なる価値観、能力」の持ち主を求めるようになってきた、という昨今の転職市場。では、この企業側のスタンスが今後、当たり前のものになる未来に向けて、20代はどんなアクションを取ればいいのだろう?
最後に各編集長から、20’s type読者に向けてアドバイスをもらった。
リクナビNEXT藤井:確実に言えることは、世の中がますます不確実になることです。来年も”タピる”熱狂が続くか、”笑わない男”を超えるどんなスターが出てくるか誰も予測がつきません。世界全体が、熱しやすく飽きやすい、かつ正解がない社会になってゆくのです。そのときおすすめしたいのが、「Knowing」より「Doing」、そして「Being」というあり方です。
正解のない時代には、単にネットで調べた二次情報の知識を増やす(Knowing)は、飽きやすい熱狂に踊らされ、疲弊するばかり。だから、自らの血肉となる深い見識や身体智を磨く実践(Doing)の場に身を置く必要があります。
そして、他者の人生でなく、自らの人生を自ら切り開くための、「自分は何のためにここにいるのか」「自分は何者なのか」「自分はどうありたいのか」という深い自己から湧き出る価値観・信念(Being)を静かに見つめるんです。「Being」は不確実な時代に、流されない確実ないかりとなるでしょう。
doda大浦:最近では、キャリアオーナーシップ(自律)がより一層大切な時代になってきました。オーナシップは「好きなように働く」というよりも、「好きなように働く力を持つ」というニュアンスに近いと思います。そのためには自分を知り、社会を知り、その中で自分らしい働き方を見つける必要があります。自分らしさを見つけるために、目の前のことにガムシャラになってみる、社会を知るために徹底的に社外と繋がってみる。そういった動きが大切だと思います。
type前田:働き方の自由度が上がって選択肢が増えるということは、言い換えると確固とした指針がなくなるということ。そんな中では「どんな軸を持って働くか」という個人の志向がますます重要になってきます。誰しも好きなことをしたいし、せっかくなら楽しく働きたいと思うものですが「何が好きか」「何が楽しいか」を見定めるのは意外と難しい。この嗅覚を磨くためには、今できることを頑張ることに尽きると思います。そういう意味では20代のうちは選り好みをせずになんでもやってみる。きっとそれが長い目で見たときに「自分の道を選ぶ力」を育てることにつながると思います。
取材・文・撮影/大室倫子(編集部)
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