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佐藤文男氏
佐藤人材・サーチ株式会社
代表取締役社長 |
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「経験則から言って、転職先に求めて同時に実現できる“譲れないポイント”は、多くてせいぜい2つでしょう」
そう語るのは、人材紹介と転職相談を手がけるキープレイヤーズ代表の高野秀敏氏だ。求人数が増えて売り手市場となった今、「じゃあ自分も」と安易な転職に走る人が増えているという。
ヘッドハンティング事業を営む佐藤人材・サーチ代表の佐藤文男氏も、IT成功神話を妄信する危険を挙げる。
「『勝ち組・負け組』という言葉に敏感で、とにかくベンチャーに行って早く成功しなければと焦っている人をいまだに多く見かけます。知人の成功談を聞いて焦り、キャリアをフイにするような転職は避けたいものです」
転職は、今の職場で改善の見込めない不満を一掃する最後の切り札となりうるのは確かだが、方法を誤れば今より状況を悪化させる危険もある。そこで、それぞれの動機に基づく会社選びのポイントを前出の2人に教えてもらった。
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高野秀敏氏
株式会社キープレイヤーズ
代表取締役
キャリアコンサルタント |
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職場の人間関係は外から判断しにくいものだが、職場環境などの周辺情報からある程度の予測が可能だという。
「職場の机のレイアウトからも、さまざまな情報が読み取れます。役職の高い人だけ机や椅子が立派なら上下関係が強い会社でしょうし、営業担当者と技術者の席が近い場合、技術者が開発に没頭できることよりも、売上の追求を優先する会社かもしれません」(佐藤氏)
利潤の追求は企業の使命とはいえ、営業担当者に振り回される技術者は哀れ。こうした部署間の力関係などが人間関係に与える影響は無視できない。人間関係への不満が生まれやすい組織構造・職場環境の恐れがないかどうかを見極めるうえでも、転職活動時にはぜひ、実際の職場を見学させてもらおう。
一方、上昇動機の強い技術者が特に気になるのが評価制度。
「プラス評価や成果主義を言葉で謳う企業は多いのですが、現場レベルで機能しているかどうかは、職場のリーダーがその基準を明確に把握できているかに大きく左右されます」(佐藤氏)
転職活動に際しては、企業側で用意された面接試験のほかに現場社員との面談の場を設けてもらい、選考プロセスのうえでは確認しづらい点について話し合うのが有効だろう。
転職者は会社にとっていわば“よそ者”。入社当初は特に、仕事の進め方や考え方の違いに戸惑うこともあるかもしれない。プロセスを重視する動機が強い人であれば、あくまで自分のやり方を貫きたい気持ちも出てくるだろう。ここで重要なのは、その会社に他者を認め合う風土が根付いているかどうかだ。
「好き嫌いではなく、客観的に他人の能力を認める文化は、自然発生するものではありません。ある程度“教育”の果たす役割が大きいのです」(高野氏)
まずは経営者、そして現場のリーダーが啓発し続けることなしには、個々人の多様性を認め合う文化は育たない。ここに力を入れている企業では、仕事の進め方にもさまざまな工夫をしているもの。特徴的な制度を導入している企業であれば、その制度を導入した経緯と狙いについて聞いておきたい。
求人数が多く、転職者に有利な今だからこそ、志向や動機にマッチしない会社にうっかり入社して後悔することのないよう、会社選びは入念にしたい。 |