世の中にニーズがあってこそ技術に価値が出る技術者にとっての発想力の大切さ
「技術者は技術のみに精通していれば良い」という考えは過去のもの。エンジニアにこそ、自分の技術がどう活かせるのかを発想できる能力が求められている。
そんな発想力の重要性、発想力を高めるための行動を、2人の識者に聞いた―。 【Word/MASARU YOSHIHARA(E-type) Photo/TETSUJI OSHIMA】2008年5月号より
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経歴
1992
理系を志した中学校時代、高校時代より起業を志す(※1)
1998
東京大学工学部に入学。半導体の材料の研究に没頭する
PC(Windows2000)に初めて触れ、HTMLを覚える
PC(Windows2000)に初めて触れ、HTMLを覚える
2001
大学在学中に、サスライトの前身である有限会社ユミックスを設立。USBでデバイスの開発(※2)をスタート
2004
『SASTIK 0MB』(※3)を開発。日本発・世界初の技術が評価され、中小企業優秀新技術・新製品賞、グッドデザイン賞など多くの賞を獲得
2005
ハードとソフト、ネットワークを融合した会社を目指す
2008
サービスをブラッシュアップし、『SASTIKVシンクライアントレイヤー』を発表
【FUTURE】
「ポータブル・パーソナリティといえばサスティック」(※4)という存在が目標
「ポータブル・パーソナリティといえばサスティック」(※4)という存在が目標
※1 会社は入るものではなく作るもの
漠然とではあるが、将来的に起業することを考え始めたのは、高校時代。誰の影響というわけでもないが、「会社は入るものではなく、作るものだ」と思っていた。大学時代は、何をビジネスにしようかということを模索。なかなかこれというものに出会えなかった
※2 出先で簡単メールチェックを実現
現会長の小林氏に、「出張先にPCを持っていっても、使うのはメールだけ。何とかならないか」と言われたのが開発のきっかけ。サーバーにデータを保存すれば良いと思いついた。当初のデバイスは弁当箱サイズだったが、2年越しで小型化。今の形に落ち着いた
※3 『SASTIK 0MB』
※4 技術は人に使われてこそ価値がある
「独立起業で得られる成功の醍醐味を社員にも味わってほしい」と、再雇用ありの独立支援制度を導入。輩出した起業家のもとで、アクティスのエンジニアが別の事業分野で力を発揮するといった、新しい終身雇用の形もイメージしている
がっかりしがちな仕様変更も
ニーズをとらえる最大のチャンス
ニーズをとらえる最大のチャンス
株式会社サスライト 代表取締役社長
植松真司 氏
植松真司 氏
『SASTIK』の生みの親であり、サスライトの創業者でもある植松真司氏は、東京大学在学中にUSB自動起動技術を考案。その原点は、現会長の小林氏が言った、「自分のPCじゃなくても、安全にメールソフトを立ち上がらせられないものか?」という“わがまま”だった。
日本発・世界初の商品『SASTIK 0MB』は、PCに挿すだけで自動的にサーバー上にあるアプリケーションが起動し、出先のPCからでも安全にメールチェックなどができるUSBデバイス。この商品を軸に、サスライトは特許を取得したUSBデバイスの自動起動技術を用いた商品を軸に、それを応用したサービス事業によって着実に成長を遂げている。
冒頭のエピソードからも察せられるとおり、植松氏は自らどんどんアイデアを発想するタイプではないという。
「ユーザーのニーズをカタチにしていくのに喜びを感じるタイプ。面白いわがままに出会えると、やりがいを感じます」
こうしたアイデアの発掘は、常に顧客の声を収集している技術者なら絶対に得意なはずだと、植松氏は続ける。
「開発を受託すると、必ず仕様変更が発生するもの。けれど私は、そんな仕様変更こそチャンスだと考えています。仕様は言い換えればニーズであり、お客さまからいただくアイデアです。その声から、新しいビジネスの原点が生まれる可能性があるのですから」
植松氏は、「エンジニアは、経営に近い稀な職種」と語る。相手がマーケット全体か、取引相手かの違いだけで、必要とされる視点はほぼ同じだからだ。
植松氏の今後の目標は、サスライトのサービスをデファクトスタンダードと呼ばれるまでに昇華すること。技術者としても経営者としても、ぜひ叶えたい夢だ。
日本発・世界初の商品『SASTIK 0MB』は、PCに挿すだけで自動的にサーバー上にあるアプリケーションが起動し、出先のPCからでも安全にメールチェックなどができるUSBデバイス。この商品を軸に、サスライトは特許を取得したUSBデバイスの自動起動技術を用いた商品を軸に、それを応用したサービス事業によって着実に成長を遂げている。
冒頭のエピソードからも察せられるとおり、植松氏は自らどんどんアイデアを発想するタイプではないという。
「ユーザーのニーズをカタチにしていくのに喜びを感じるタイプ。面白いわがままに出会えると、やりがいを感じます」
こうしたアイデアの発掘は、常に顧客の声を収集している技術者なら絶対に得意なはずだと、植松氏は続ける。
「開発を受託すると、必ず仕様変更が発生するもの。けれど私は、そんな仕様変更こそチャンスだと考えています。仕様は言い換えればニーズであり、お客さまからいただくアイデアです。その声から、新しいビジネスの原点が生まれる可能性があるのですから」
植松氏は、「エンジニアは、経営に近い稀な職種」と語る。相手がマーケット全体か、取引相手かの違いだけで、必要とされる視点はほぼ同じだからだ。
植松氏の今後の目標は、サスライトのサービスをデファクトスタンダードと呼ばれるまでに昇華すること。技術者としても経営者としても、ぜひ叶えたい夢だ。
【私が妄想する新サービス】
ホンネのアイデア収集システム
ユーザーのホンネを、短時間で引き出すことができるシステムがあったらいいなと思いますね。オフィシャルな場でのヒアリングやアンケートでは、なかなか「こんなものが欲しい」という意見が上がってきません。上がってきたとしても、ホンネとは少し違う意見だったりすることも。けれど、ひとたび飲みに行ったりすると、思い付きベースのアイデアがポンポン飛び出してくることがあります。そんな荒削りなアイデアからヒット商品が生まれることもしばしば。「ホンネのアイデア収集システム」が実現したらうれしいですね。
ユーザーのホンネを、短時間で引き出すことができるシステムがあったらいいなと思いますね。オフィシャルな場でのヒアリングやアンケートでは、なかなか「こんなものが欲しい」という意見が上がってきません。上がってきたとしても、ホンネとは少し違う意見だったりすることも。けれど、ひとたび飲みに行ったりすると、思い付きベースのアイデアがポンポン飛び出してくることがあります。そんな荒削りなアイデアからヒット商品が生まれることもしばしば。「ホンネのアイデア収集システム」が実現したらうれしいですね。