世の中にニーズがあってこそ技術に価値が出る技術者にとっての発想力の大切さ
「技術者は技術のみに精通していれば良い」という考えは過去のもの。エンジニアにこそ、自分の技術がどう活かせるのかを発想できる能力が求められている。
そんな発想力の重要性、発想力を高めるための行動を、2人の識者に聞いた―。 【Word/MASARU YOSHIHARA(E-type) Photo/TETSUJI OSHIMA】2008年5月号より
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発想は新しい組み合わせの発見だ
株式会社知識工房 代表取締役
株式会社アジルパートナーズ パートナー
山崎将志 氏
株式会社アジルパートナーズ パートナー
山崎将志 氏
技術者は“+タイプ”の人間たれ!
株式会社創造開発研究所 所長
日本境域大学院大学 教授
高橋 誠 氏
日本境域大学院大学 教授
高橋 誠 氏
図1:高橋氏の『300分の1の法則』
図2:発想は“着眼点”と“表現”の組み合わせ
昨今、エンジニアの“発想力”に対する要求が高まりつつある。それは、世の中のニーズを敏感にキャッチし、技術をどんなサービスに活かしていくかを考えられるエンジニアが少ないからだ。せっかく“シーズ(技術)”はあるのに、ニーズが把握できておらず、それを活かしきれていない現状がある。
「多くの技術者と出会ってきた中で感じていることは、専門領域は詳しいが、隣接分野になると無知になってしまう技術者が多いことですね」
そう話すのは、ネーミングや新商品開発のコンサルティングを行う創造開発研究所の所長・高橋誠氏だ。これまでに東京ドーム『BIG EGG』、『ゆうパック』『TOSTEM』などのネーミングを手掛けるなど、企画力開発の第一人者として知られる。そんな高橋氏は「技術者は“Tタイプ”ではなく“+タイプ”の人間たれ」と語る。
「専門を深掘りする“Tタイプ”の技術者をよく見ます。しかし本当に必要なのは、それにクリエイティブを足した“+タイプ”なのです。そのためには、今の業務に直接関係しない分野にも興味を持ち、探求していくこと。それが発想力アップにつながります」
ビジネスコンサルティングや思考技術のトレーニングを提供する知識工房の山崎将志氏は「発想とは、新しい組み合わせを考えること。本当に新しいものなんてない」と断言する。
「例えば、新薬が開発されたといっても、全く新しいものが発見されるのではなく、新しい化合物が見つかるということ。元素は118種しかないのですから、どう組み合わせるかで今までにないものが生まれるのです」
技術者に置き換えると、現在自分が持っている技術を基本として、さまざまな“ニーズ”が組み合わせの要素になる、と山崎氏は言う。
「技術者にとって、お客さまからのニーズがない新しいものを生み出しても何の意味もありません。お客さまが抱える問題を技術で解決する。技術+ニーズが世に新しいサービスを生み出すのです」
それでは、発想力を高めるために技術者がやるべきこととは何か?
「まずはボキャブラリーを増やすこと。よく『思考は言語によって構成される』と言われます。その通りで、ボキャブラリーがあってこそ気付きがあり、新しい発想が生まれる。そのためには、多くの人と話す、本を読む、出掛けるなど、自ら行動することが重要です」(山崎氏)
また高橋氏は、技術者が陥りがちな行動パターンに警鐘を鳴らす。
「目先の情報だけを追ってしまう“専門バカ”にならないこと。自分とは関係ないような“横穴”への興味・関心も持つことがとても大切なのです」
視野を広く持ち、無駄だと思うことでも行動してみること。それが発想力アップの近道といえるだろう。
世の中のニーズを的確にとらえて、今ある技術を形にする。エンジニアは、そんな「技術をビジネスにつなげる」という醍醐味が味わえる唯一のポジションだ。次ページからは、今まさに技術を活かしてビジネスを創り出しているエンジニア出身社長が登場。彼らがこれまでのキャリアの中で、どのような発想からどんな行動を取ったのかをひもといていく。
「多くの技術者と出会ってきた中で感じていることは、専門領域は詳しいが、隣接分野になると無知になってしまう技術者が多いことですね」
そう話すのは、ネーミングや新商品開発のコンサルティングを行う創造開発研究所の所長・高橋誠氏だ。これまでに東京ドーム『BIG EGG』、『ゆうパック』『TOSTEM』などのネーミングを手掛けるなど、企画力開発の第一人者として知られる。そんな高橋氏は「技術者は“Tタイプ”ではなく“+タイプ”の人間たれ」と語る。
「専門を深掘りする“Tタイプ”の技術者をよく見ます。しかし本当に必要なのは、それにクリエイティブを足した“+タイプ”なのです。そのためには、今の業務に直接関係しない分野にも興味を持ち、探求していくこと。それが発想力アップにつながります」
ビジネスコンサルティングや思考技術のトレーニングを提供する知識工房の山崎将志氏は「発想とは、新しい組み合わせを考えること。本当に新しいものなんてない」と断言する。
「例えば、新薬が開発されたといっても、全く新しいものが発見されるのではなく、新しい化合物が見つかるということ。元素は118種しかないのですから、どう組み合わせるかで今までにないものが生まれるのです」
技術者に置き換えると、現在自分が持っている技術を基本として、さまざまな“ニーズ”が組み合わせの要素になる、と山崎氏は言う。
「技術者にとって、お客さまからのニーズがない新しいものを生み出しても何の意味もありません。お客さまが抱える問題を技術で解決する。技術+ニーズが世に新しいサービスを生み出すのです」
それでは、発想力を高めるために技術者がやるべきこととは何か?
「まずはボキャブラリーを増やすこと。よく『思考は言語によって構成される』と言われます。その通りで、ボキャブラリーがあってこそ気付きがあり、新しい発想が生まれる。そのためには、多くの人と話す、本を読む、出掛けるなど、自ら行動することが重要です」(山崎氏)
また高橋氏は、技術者が陥りがちな行動パターンに警鐘を鳴らす。
「目先の情報だけを追ってしまう“専門バカ”にならないこと。自分とは関係ないような“横穴”への興味・関心も持つことがとても大切なのです」
視野を広く持ち、無駄だと思うことでも行動してみること。それが発想力アップの近道といえるだろう。
世の中のニーズを的確にとらえて、今ある技術を形にする。エンジニアは、そんな「技術をビジネスにつなげる」という醍醐味が味わえる唯一のポジションだ。次ページからは、今まさに技術を活かしてビジネスを創り出しているエンジニア出身社長が登場。彼らがこれまでのキャリアの中で、どのような発想からどんな行動を取ったのかをひもといていく。