世の中にニーズがあってこそ技術に価値が出る技術者にとっての発想力の大切さ
「技術者は技術のみに精通していれば良い」という考えは過去のもの。エンジニアにこそ、自分の技術がどう活かせるのかを発想できる能力が求められている。
そんな発想力の重要性、発想力を高めるための行動を、2人の識者に聞いた―。 【Word/MASARU YOSHIHARA(E-type) Photo/TETSUJI OSHIMA】2008年5月号より
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経歴
1984
かっこいい生き方を目指し、多摩美術大学に入学
1989
やりたいことを好きなだけやった学生時代
祖父の勧めで証券業界を意識。(※1)大手証券会社のシステム子会社に就職
祖父の勧めで証券業界を意識。(※1)大手証券会社のシステム子会社に就職
1993
システムを作る側になりたいと、準大手証券に転職
1998
オンライン証券を立ち上げるため、伊藤忠商事に転職(※2)
1999
日本オンライン証券(当時)設立。(※3)手数料自由化の波に乗り、成長を遂げる
2004
カブドットコム証券(※4)代表執行役社長に就任
【FUTURE】
創業10年を迎える2009年、新オフィスに移転予定
【FUTURE】
創業10年を迎える2009年、新オフィスに移転予定
※1 逆境から周りと同じスタートラインに
美大出身でも社会人になれば同じと考えていたが、現実はマイナスからのスタート。理系出身の同期がSEとしてモノづくりに参加しているのに、自分に与えられたのは単純作業ばかり。その屈辱感から、独学で情報処理系の資格を取得。同じスタートラインに立った
※2 技術者特有の力は綿密な企画を生み出す
オンライン証券の立ち上げという夢を現実にすべく、伊藤忠商事に入社。エンジニアならではのシミュレーション力を活かし、綿密な企画を練り上げた。さらに、商社という大きな組織の中で企画をブラッシュアップし、事業成功のための知見を得ていった
※3 システマティックなオフィス作り
エンジニア時代に磨いてきた、工夫・改善をモットーとするモノづくり気質を発揮し、設立当初の雑務をこなしていった。また、クラスタリングや水平負荷分散の考え方を応用し、部長2人制を用いた独自の体制を確立。システマティックなオフィスを作り上げていった
※4 カブドットコム証券
シミュレーション力を用いて
次の10年を見据えた対策を
次の10年を見据えた対策を
カブドットコム証券株式会社 取締役 代表執行役社長
斉藤正勝 氏
斉藤正勝 氏
他社に例を見ない革新的なシステムをベースに、次々とユニークな新サービスを展開しているカブドットコム証券。その設立に携わり、現在は社長として組織を率いているのが、齋藤正勝氏である。美大卒からエンジニアを経て経営者になった異色の人物だ。
齋藤氏が語るエンジニア出身社長の特徴とは、地に足の付いた発想に長けているということ。
「エンジニアは、今ある素材を活かし、工夫しようという傾向が強い。根っから“改善”が好きな人種なんだと思います」
カブドットコム証券も、一つ一つのサービスは画期的だが、その裏の技術は格別目新しいものばかりではないと、齋藤氏は説明する。
「確たる技術という材料を使い、素晴らしい料理を作るのがエンジニアの真骨頂。技術を深く理解し、それをどう活かすかを模索することが発想力の源でしょう」
ただし齋藤氏は、「このままいけば、10年後には日本のITは滅ぶ」と警鐘を鳴らす。今は日本語という壁に守られているから生き長らえているだけという会社も多い。いつかは中国やインドに負けることが目に見えている。
「カブドットコム証券の歴史に置き換えてみると、1999年の株式の委託手数料の完全自由化と、技術革新の流れに乗って、ここまで成長できました。ただし、次の10年もこの流れが続くとは限らない。いつまでも自分たちがうまく行くとは考えず、常にあらゆる可能性をシミュレーションしておくべき。エンジニアは、このシミュレーション力に長けているはずです」
近い将来、アジアもEUのように、共通言語、共通通貨制になるかもしれない。「エンジニアだからこそ、目の前の事象のウラを見よ」と、齋藤氏は語る。
齋藤氏が語るエンジニア出身社長の特徴とは、地に足の付いた発想に長けているということ。
「エンジニアは、今ある素材を活かし、工夫しようという傾向が強い。根っから“改善”が好きな人種なんだと思います」
カブドットコム証券も、一つ一つのサービスは画期的だが、その裏の技術は格別目新しいものばかりではないと、齋藤氏は説明する。
「確たる技術という材料を使い、素晴らしい料理を作るのがエンジニアの真骨頂。技術を深く理解し、それをどう活かすかを模索することが発想力の源でしょう」
ただし齋藤氏は、「このままいけば、10年後には日本のITは滅ぶ」と警鐘を鳴らす。今は日本語という壁に守られているから生き長らえているだけという会社も多い。いつかは中国やインドに負けることが目に見えている。
「カブドットコム証券の歴史に置き換えてみると、1999年の株式の委託手数料の完全自由化と、技術革新の流れに乗って、ここまで成長できました。ただし、次の10年もこの流れが続くとは限らない。いつまでも自分たちがうまく行くとは考えず、常にあらゆる可能性をシミュレーションしておくべき。エンジニアは、このシミュレーション力に長けているはずです」
近い将来、アジアもEUのように、共通言語、共通通貨制になるかもしれない。「エンジニアだからこそ、目の前の事象のウラを見よ」と、齋藤氏は語る。
【私が妄想する新サービス】
システマティックな育児支援
最近の私の趣味は、まだ小さいわが子の育児なんです。そんな日々の中で、「もっと国家体制や農業の仕組みをシステマティックにできないものか?」と自問することがあります。日本が明るい未来を描くには、何といっても若い世代の人口増加が必須。そのためには、育児に対する大きなインセンティブが必要だと思います。そこで、システマティックな育児支援や自給率を上げるための農業支援などが必要だと痛感しています。エンジニア出身の政治家が増えれば、少しは日本も変わるのではないでしょうか?
最近の私の趣味は、まだ小さいわが子の育児なんです。そんな日々の中で、「もっと国家体制や農業の仕組みをシステマティックにできないものか?」と自問することがあります。日本が明るい未来を描くには、何といっても若い世代の人口増加が必須。そのためには、育児に対する大きなインセンティブが必要だと思います。そこで、システマティックな育児支援や自給率を上げるための農業支援などが必要だと痛感しています。エンジニア出身の政治家が増えれば、少しは日本も変わるのではないでしょうか?