技術者は技術以外の力も必要です
私が新人のころに比べて現在は取り巻く環境もだいぶ変化したと感じます。私が新人だった頃はVisualBasic6が全盛期でした。汎用機からオープン化が進んできており、Linuxも業務システムで使われ始めたころです。コンピューターの価格はどんどん下がりつつも、性能は向上し続け、ネットワークもテレ放題のおかげでインターネットに安価につながり始め、ISDNやADSLなどの通信技術により高速化&常時接続が当たり前になりつつありました。
同じく、オープンソースという文化が認知され始め、素晴らしいソフトウェアを安価に使うことができるようにもなりました。多くのプログラミング言語は無料で学習することが可能となり、稼働環境の構築においてもお金が掛からなくなりつつありました。次第にフレームワークが台頭し、Webアプリケーションの時代へと移っていったわけです。
さて、そんな時代の変化の中でどのようにエンジニアとして生きていけばよいか。キャリアプランと言えばかっこよすぎますが、私としても大好きなコンピューターの業界で長く働きたいと思っている以上、何らかの動きをする必要があると感じていました。
そこで私の場合はできる限りエンドユーザーのそばで開発を行い、細かく感想を伺い、様子を観察してソフトウェアをどんどん作っていくというやり方がふさわしいと考え、最初の転職をしたのを覚えています。この時の判断は間違ってなかったと今でも考えております。
素晴らしい腕前で、誰にも作れないプログラムを書く人は世の中に必要な存在だと思います。ですが、残念なことに私にはそれほどの実力があるとは思えませんでした。一方で、たとえ多少ダメな腕前であっても、ユーザーと向き合ってソフトウェアを作ることができれば、満足して頂けるものを作ることは可能だと思います。
つまり、私たちは何を目的に活動しているのか。そして、その目的を達するためには何が必要か。この根源的な問いを考えることで私は活路を見出してきたように思います。一つの結論としては「技術者は技術以外の力を持つ必要がある」という考え方です。
よりよいエンジニアライフを送る上では少なからず開発能力以外にも何か特徴的な力を持っていると、より選択肢が広がり、よりよいお仕事が可能となります。これから3回の私が担当する部分では技術力以外の力に気が付くことを狙いとし、出題をさせて頂きたいと思っておりますので、是非皆様も取り組んでみてください。
今回の課題では全3回で、以下の内容に取り組みます。
1.自分の特徴を表現しよう
2.難しい話を提案してみよう
3.聞き入るための工夫をしてみよう
この課題を通し「表現力」を身につけ、皆様が持っている技術力を含む複合的な価値を人に伝える力に磨きをかけましょう!
自身の特徴をとらえよう
第1回目の今回は「まず自分と向き合うこと、そしてそれを表現すること」をテーマにしてみようと思います。私の場合は自分と向き合うと困ったことに「ダメなところ」しか思いつかないです。でも、そんな厳しい目線ではなく、もうすこし緩い感じで自分と向き合ってみましょう。「やべー、オレ完璧だわー」という人は、あなたの後光に世の中の人は迷惑していますので、もう少し光を落としつつ表現を試みてください。
今回は4つ自分の特徴を探してみてみましょう。4つ以上思いつく方は特に際立っていると思われるものを選ぶようにしましょう。
「特徴」という価値観を考える時のポイントとしては、他者から見た場合を想像することです。例えば、人の役にたてそうなところ。周りと比べて・・・ではなく、自分の持っている色々な力などのうち上位4つを選ぶようにしてくださいね。
私の場合は以下の4つが思いつきました。
・転職経験があり、ソフトウェア業界を色々な角度から経験した
・新しい技術が好きなので勉強が苦にならない
・結構な厳しい状況であっても仕事はやりきる
・よくしゃべる
あくまで価値観を自分の中に設けることがポイントです。
特徴を捉えることにはどんなメリットがあるのでしょうか。実は「よくしゃべる」という点をつい最近までは私は自分の大嫌いな特徴として捉えていました。ベラベラとよくしゃべるので、エンジニアと思われず営業出身と思われることもしばしばあります。自分としては嫌いな特徴でしたが、もしかするとこれは良い特徴なのか?と考えるようにしたところ、何度か講演やセミナーをさせて頂く機会を頂き、新しい仕事を見つけることができました。 もしずっと嫌いだったらどうなっていたでしょうね。
最近ではエンジニアがLTなどのピッチをする機会も多くなってきました。ですが、私は2年ほどクラウドのお話を色々なところでさせてもらえるようになったおかげで、以前よりもクラウドについて詳しくなりました。そして、その知識などを人へ伝えることができるようになりました。人に解りやすく説明することほど、自身を成長させる手段はないとさえ思います。
他者から見た自分という視点、つまり客観性はあらゆる場面で役に立つ力です。自分ではなく人のために。そんな仕事の仕方をストイックにやり続けることができれば、もっと楽しい仕事ができるかもしれないです。利己的に自分をコントロールするという意味ではなく、周りに生かされている自分という視点があれば、多くの方から助けてもらえたり、多くを教えてもらえたりします。
嫌いな特徴であっても、人の役に立てる。何かをアウトプットすることで人に喜んでもらえるというのはとても素晴らしい体験です。そのためには、自分と向き合いつつ、どのように良いところを活用するかを真剣に考えてみることから始めるのが大きな変化を生み出す一歩となります。