シンギュラリティとは、技術的特異点(Technological Singularity)ともいわれ、 コンピュータの進化が人類の知能を超えることで、過去の人類の進化に基づいた社会の変革モデルが予測できなくなる状態のことをいいます。
この概念は、数学者でSF作家でもあるVernor Steffen Vingeと、発明家で実業家としても活躍するRaymond Kurzweilによって提唱されたものです。
VingeとKurzweilは、コンピュータテクノロジーや生命科学が今のペースで発達すると、2045年ごろに、この技術的特異点(シンギュラリティ)に到達する、と定義づけています。知性を持ったコンピュータが出現し、その知性が人類が持つ知性の範疇を越えてしまうということです。
この理論は、「2045年問題」などと名付けられ、SF映画やSF小説の題材としても用いられてきました。もし現実のものとなれば、我々が想像するよりもはるかに深刻な問題となることが予測されています。
世界中でシンギュラリティに関する取り組みが盛んに
米国では、シンギュラリティを専門研究分野とする学術機関「シンギュラリティ大学」が、2008年に設立されました。「加速するテクノロジーを人類の挑戦に適用させるため、各界のリーダーを育成、奮起する」ことを目的としています。
GoogleやNokia、Ciscoといった有名IT企業も出資しているこの大学は、設立されるや否や高い注目を集め、2009年の第1回学生募集では、定員40人に対して1,200人もの応募が殺到しました。
欧州でも、2013年に約12億ユーロが投じられ、人間の脳をシミュレートする「ヒューマン・ブレイン・プロジェクト」が立ち上がっています。
日本では、2015年2月に総務省が「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」を開催し、シンギュラリティの可能性と未来予測について、議論がなされています。
また、テック系メディアとして歴史のある『WIRED』日本版では、9月末に米国からAI(人工知能)研究の世界的権威Ben Goertzel、Lav Varshney(イリノイ大学)らを招き、「WIRED A.I. 2015 ~TOKYO SINGULARITY SUMMIT #1」を開催しました。
Googleの参画で現実味を持ち始めたシンギュラリティ
シンギュラリティを提唱したRaymond Kurzweilは、現在Googleに入社し、大脳新皮質をコンピュータでシミュレーションする「Neocortex Simulator」というプロジェクトに取り組んでいます。
Kurzweilは、毎日栄養剤を注射したり、大量のサプリメントを摂取したりと、寿命を延ばすためにさまざまな努力を重ねていると言われており、技術の発達による不老不死の体を手に入れることを目指しているということがまことしやかにささやかれています。
シンギュラリティはこれまで、一種のオカルト理論として一部のギーグたちから支持されるに過ぎない代物でした。しかしGoogleがKurzweilとともに本腰を入れて取り組み始めたことで、にわかに現実味を帯びてきたと考えられています。
コンピュータが人間にとって代わる日は、すぐそこまできているのかもしれません。