2018.02.21

幸せになれる仕事観-私たちのキャリア入門第9回

自身の成長のため、やりがいのため、収入のため……。働く理由は人それぞれですが、自身が満足のいくキャリアを築くためには、どういった仕事観を持つのがよいのでしょうか?今回はアンケートをもとに、仕事観とキャリアの満足度の関係性を読み解きます。

幸せになれる仕事観-私たちのキャリア入門第9回

  • 【プロフィール】

    高橋 俊介(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)

    慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋俊介

    キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ−に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。

あなたはどのタイプ?三つの仕事観

仕事観とは、簡単に言うと「あなたにとって仕事とは何ですか?」という質問に対する回答になるものです。つまりは、仕事をしていく上での価値観のことですね。

仕事観について、大規模なアンケート調査を行ったことがあります。20代から50代の会社員約7000名を対象にアンケートを行い、仕事観と仕事に対する満足度、キャリアに対する満足度など、様々な相関関係を探っていったのです。その際に、まずは仕事観を三つに分けて定義しました。

1.内因的仕事観
やりがいや自己成長など、自身にとって精神的・心理的な意味合いが大きいという考え方。

2.功利的仕事観
働くこと自体が目的ではなく、お金や社会的地位を得るための手段であるという考え方。

3.規範的仕事観
仕事とは自分のためではなく、社会や人々のためにするものだという考え方。

仕事観は、キャリア満足度に影響するか

では、仕事観とキャリア満足度には相関関係があるのでしょうか?結果、功利的仕事観、特に「家族を路頭に迷わせないために」といった損害回避を目的にしている場合には、キャリア満足度との相関はほとんどゼロであることがわかりました。

もちろん、功利的仕事観が悪いわけではありません。ですが、「賃金を得るために働く」という認識は、自活していかなければならない大人であれば当然のように持ち合わせている考え方です。他の仕事観をあわせ持たなければ、幸せなキャリアを築くのは難しいでしょう。

一方で、内因的仕事観と規範的仕事観に関しては明確にキャリア満足度との相関が見られました。さらに、仕事観とキャリア満足度の相関は年齢と比例して高くなっていきます。キャリア満足度を高めるためには、年齢を重ねるほどにしっかりとした仕事観の形成が重要だということですね。

自分らしいキャリアを築くためには「心の利き手」を使うことが必要だと、これまでもお伝えしてきました。それに加えて、自分にとって意味を感じられる仕事をすることも、自分らしいキャリアを築く大切な要素となるのです。例えば、仕事観が希薄だと給料日以外に仕事の意義を感じられなくなってしまいます。そうならないためにも、ぜひ今一度自身の仕事観を見つめ直してみてください。

仕事観を育てる存在とは

この時のアンケート調査では、仕事観の形成に影響したものについても聞きました。結果、上司や同僚、大学の教員、昔からの友達、自己啓発で読んだ本など、回答は人それぞれ。そして、様々な影響を受けている人の方がキャリア満足度が高くなる傾向が見られたのです。

ただし、一つだけキャリア満足度の高さと相関しない影響要因がありました。それは、親の影響です。分析していった結果、女性においては親の影響とキャリア満足度の間にマイナスの相関が表われました。アンケートに回答したとある女性に詳しく話を聞いてみたところ、母親にこう言われて育ってきたと言います。
「女性は手に職を持って経済的に自立しなければならない。でないと、夫と別れたくなっても別れられなくなる」
そしてこの女性の中には「仕事の目的は経済的自立以外にない」という仕事観が形成されていったのです。同じような回答をした女性は複数名いましたが、当然彼女たちのキャリア満足度は低いものでした。

もちろん、必ずしも親がいけないとは言い切れません。ですが、内因的仕事観や規範的仕事観は、上司や同僚、学生時代の恩師など、社会的な存在から影響を受けて養われていくことが多いように思います。狭い仕事観にとらわれないためにも、多くの人々と触れ合いながら仕事観を形成していくことが重要です。

過剰な内的仕事観に潜む危険

実のところ、近年は世界的な内的仕事観ブームであるといえます。先ほどの「仕事は経済的自立のため」という親とは反対に、「好きなことが見つからなければ無理して働かなくてもよい」と子どもを養い続ける親が増えているのです。これは危険なことだと私は考えています。

「好きなことが見つからなければ働かなくてもいい」という考えでは、世の中の経済は回っていきません。自分のためというのはもちろんですが、あわせて人のため、社会のために働くという規範的仕事観も必要なのではないでしょうか。実際、規範的仕事観に突き動かされて働く若者達が起業家として立ち上がる動きも見られています。このようなリーダーの誕生は、良いニュースですよね。

変化の継続が生む成長の好サイクル

Vol.7から、自分らしく働き、自分らしいキャリアを築いていくためには、自身が持つ心の動機やそれに基づいた心の利き手、仕事観などをドライブさせることが必要であると説明してきました。

変化の継続が生む成長の好サイクル

まず、心の動機は大きく分けて「コミットメント系の動機」「リレーションシップ系の動機」「エンゲージメント系の動機」の三種類。これらの動機を自分の意志で変えることは難しいので、動機に基づいた心の利き手を使って仕事に生かしていくことが必要となります。加えて大切なのが、今回説明した仕事観です。心の動機と異なり、仕事観は周囲の影響や大きな出来事によって変化していきます。それまでお金が一番大切だと想っていた人が、「世の中、お金ではない」と思うようになることだってありますよね。

これらのことにプラスして、成長のために認識しておきたいことが三つあります。

1.自己肯定感
持っている仕事観は同じだったとしても、「自分ならできる」と思えるか「自分なんてだめだ」と思ってしまうかで、行動は大きく異なります。よって、健全な自己肯定感が必要なのです。

2.環境の認識
世の中の環境はどんどん変わっていきます。自分と世の中の環境を客観的に見つめて「このままでは置いていかれてしまう」という危機感を持つことが、行動につながっていきます。

3.職務能力の開発
自己と環境を正しく認識できたら、これからすべきことを考えます。心の動機を大切にしながら、能力を磨いていきましょう。

これらを習慣化することによって、違う景色が見えてきます。すると、認識も徐々に変化していきますよね。磨くべき能力も変わるかもしれません。このサイクルの繰り返しで、人は継続的に成長することができるのです。

*vol.10へ続く

【連載】私たちのキャリア入門

会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。

本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。

企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)

※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。

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