シェアオフィスと呼ばれる共同事務所がずい分増えてきました。正式にはシェアードオフィス。会社ごとにオフィスを持つのではなく、複数の会社や個人が同じオフィスを共有するわけですが、つくりもモダンでお洒落なところが多く人気が高まっています。
サンフランシスコ発祥の『コワーキング』という働き方
こうしたオフィスでは、スペースを共有することで家賃負担を小さくするという経済的な面はもちろんですが、同じ場所で業態の違う人たちが働くことで生れるメリットもあります。こうしたオフィスのあり方を飛躍させたのが、米国サンフランシスコ発祥の『コワーキングスペース』という発想です。
この発想は、IT系の3人の若者が住居とオフィスを一体化したロフトを『ハットファクトリー』と名づけたことからスタートしました。最初の頃は3人だけで使っていたのですが、リーダーのニューバーグ氏が日中は他の人にもオープンにして、一緒に働くスペースにしようと提案したのです。
これが後に、世界的な広がりを見せることになった『シチズンスペース』の始まりでした。スペースの有効活用だけでなく、知恵を出し合ったり、人脈を広げたり、共同作業をしたり、そこで生れる人間的なつながりをオフィスの新たな機能と考えたのです。この狙いが支持され、ニューバーグ氏のコワーキングスペースは、たちまちのうちに6つの大陸にまたがり、いまや世界中に400ヵ所以上を数えるといわれます。
個人、小規模企業から大手企業の利用へ
その使い方は様々。プロジェクト実施期間中だけオフィスをシェアするプロジェクト型。独立・自営の準備期間や立ち上がりに利用するインキュベーション型。時間貸しや月極めなどのレンタルオフィス型。どれもセキュリティや設備の負担割合など、デリケートな問題はあるものの、企業や個人はそこにさまざまなメリットを見出しています。
コワーキングスペースは個人や小規模企業が利用するだけではありません。あまり表面に出ることはないのですが、実は大手企業もかなり利用しているようです。大規模プロジェクトを進めたり、短期間に集中して業務を進めたり、などの需要があるといいます。
ある大手IT企業は今後の企画を生み出す方法論として、たくさんの人から日常的に意見を集めたいという観点から利用しています。また、企業内でコワーキングの発想を取り入れるなどの傾向も出てきました。IT・ウェブサービス従事者、飲食店経営者、製造業の営業マンなどが、通常の勤務場所を飛び出してコワーキングスペースにやってきます。
ノマド専用というシェアオフィスの段階から、さらに幅広い人たちがコミュニケーションを取りながら仕事を進め、アイデアを持ち寄ってお互いに貢献し合うという仕事のやり方。一度試してみるのもいいかもしれません。
ちなみに料金は、フルタイム2万2000円/月、週2回程度パートタイム1万2000円/月、朝のみの利用は6000円/月(いずれも1名)といったあたりが平均のようです。