自分ブランドとは、「価値を提供するという継続的なコミットメントと、周囲の期待値の連鎖によって成り立つ」ものだと定義される。つまり、「○○に関しては任せて!」という自らのメッセージと、「○○に関しては○○に任せておけば大丈夫」という周囲の期待が連鎖することが大切であり、自分側の自信や、相手側の期待だけではブランドになり得ない。
では、自分にとって自信が持てる専門分野の取捨選択は、いつするべきなのだろうか。
このタイミングに関しては、論者によって意見が大きく異なる。なるべく早いうちから専門性を磨くべきという意見は、若いうちから職種特有の経験を積む大切さを意識したもの。一方、若いうちは専門性を意識すべきでないという意見は、ひとつのことしかできない「専門バカ」になる危険を意識した意見である。
ただし共通するのは、ビジネスに関する基礎的なスキル、つまりロジカルシンキングやヒアリング力などは、一通り平均レベル以上をキープしておくべきであるというものだ。間違いやすいのは、ある能力だけ秀でているために、その能力に関連するスペシャリティを伸ばせばよいという考え方。しかし、他の能力を上げる努力を怠ると、その唯一の能力を他人から「都合よく」使われるだけの立場になりがちだ。スペシャリストとして大成するためには、基本的な能力が全て一定レベルに保たれていることが条件となる。
こうして専門分野を定めたら、最後まで全うしなければならない。キャリア途上の変更は、それまでの時間をムダにする。若いうちは専門分野を意識しなかった人こそ、年を経てからの途中変更は命取りになる。
キャラに合った専門性はキャリアの選択肢を拡げる
そこで重要になってくるのが、キャラにあった専門を選ぶということ。例えば、人と話すのが苦手な人が営業のプロを目指したとしても、途中で自信がなくなり、辛くなってしまうはずだ。キャラに合った仕事とは、「興味があり、やっていて楽しい仕事」ということ。そういう仕事であれば、自ずと表情も明るくなり、周囲の人の覚えも良くなっていく。
このようにスペシャリティが確立されると、「○○さんならあの仕事もできるのではないか」というイメージの連鎖がはじまり、プロフェッショナルへの道が拓ける。専門バカには「それしか出来ない」という狭さがまとわりつくが、プロフェッショナルは、その得意分野をフックに、仕事の幅を拡げることができるとともに、人脈も広がっていくのだ。
このようなプロフェッショナルになることができれば、社内で一目をおかれるばかりか、転職時にも有利。何をコアにどのようなことができるかを説明できるだけの経験を十分に積んでいるため、説得力のあるプレゼンテーションができるはずだ。
嗚呼、悲しき「ダメ社員」ブランド
キャリアを潰した安易なキャラ設定
コンサルタントはキャラが命。しかし、キャラの立て方を間違ってしまったことで、「ダメ社員」のレッテルを貼られてしまったのが、村木聡氏(仮名)だ。村木氏はどのような失敗を犯してしまったのだろうか?
「はじめはうまくいっていたんです。25歳の時にコンサル未経験で転職してきたので、まずは若さを押し出そうと考えて、『何でもやります!』と言っちゃう可愛いヤツを演出していました。それが浸透してきたところで、キャラを変えようと思っていたんですが……」
第2新卒扱いで転職した村木氏の選択はあながち間違いではなかったはず。しかし、一度浸透した「可愛いキャラ」は変化することなく、「任せておけない」「何となく心配になる」という漠然とした不安を抱かせるブランドになってしまった。いつまで経っても永遠の後輩。気がつけば、次第とプロジェクトにもアサインされることが少なくなっていた。
「正直なところ、使えない社員のレッテルを貼られているんじゃないかとビクビクしています。いっそ別のファームでリスタートしようと、転職活動をしているんですが……」
複数のファームに応募書類を送ったものの、実績が乏しい村木氏のキャリアではと、にべもなく断られる始末。完全にキャリアが行き詰ってしまった状態だ。たった一度のキャラ設定を間違えたために訪れた不幸。村木氏は今後も「転職デビュー」できる企業を探し続けるという。
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