株式会社キャリアエピソード
代表取締役
備海宏則さん
景気拡大が戦後最長の「いざなぎ景気」を超え、中途採用は業界を問わず盛り上がっている。中でも採用が活発化している業界はどこか。ヘッドハンターの備海宏則氏は次のように話す。
「2年前に比べ、最も伸びているのは金融業界。不動産、住宅、コンサルティングなどの業界も堅調です」
好景気による人手不足に加え、団塊世代が定年退職する2007年問題が控えているが、採用に対する姿勢は、「5?7年前のITバブル期より慎重」と、備海氏は明かす。募集が多い割に、内定への道は意外と険しい――。今の転職市場はそんな状況にあるのだ。
備海氏によれば、ニーズが最も多い年齢層は28歳?30歳代半ばであるという。「企業の大半が1996年?2003年に新卒採用を減らしたため、この年代の社員は少ない。しかし今は、リーダークラスであるこの年齢層の需要が増しています。そのため、きちんとした教育を受けたこの年齢層のニーズがとても高いのです」
未経験転職は27歳まで。コンサルなら30代でも
一方、27歳くらいまでの若手なら、業界・職種をまたぐ未経験転職のチャンスがある。狙い目は次の業界だ。
「まず第1は、伸び盛りの金融業界。法人営業の経験者を他業界から採用しようという考えです。第2には、未成熟な業界。業界内から採用しようにも経験者がまだ少ないのです。その代表が人材業界でしょう。流通・小売業界にもいい人材が少ない。また、コンサルティングも新卒ではまだ足りない状況です」
職種としては、未経験でもニーズが多いのは営業職。27歳くらいまでなら、経験よりもコミュニケーション能力などその人の持ち味が売りモノになる。一方、30代の場合は、経験を活かさなければ良い転職はできないケースが圧倒的だが、コンサルタントなら30代前半でも未経験転職のチャンスがある。
「未経験でもコンサルタントになれる人は次の3パターンがあります。まず第1に、MBAなどアカデミックなバックボーンがある人。第2に、大手企業で経営企画や事業企画などに携わり、高い視点からビジネスを考えた経験の持ち主。第3には、ロジカルシンキングやコミュニケーション能力などに長けた人です。職務経歴書に現れないコミュニケーション能力などは、面接している時に、話のキャッチボールのうまさなどで見抜けます。また、物事を比較したり、数字を頭に入れて話すことのできる人は、与えられた問題を解決する能力も高く、コンサルタント向きだと考えられます」
30代に求められるのは即戦力であること
株式会社ディーバ
管理本部人事部
採用担当
シニアスタッフ
田中智之さん
採用する側の話も聞いてみよう。連結会計パッケージソフトの開発・導入を手掛けるディーバでは、06年7月からの1年間でコンサルタントや開発者など20名強の中途採用を予定している。
「当社には、会計系とIT系の2種類のコンサルタントがいます。プロジェクトマネジャークラスの人材が転職してくることもありますが、社内で育つパターンがほとんど。コンサルタントは未経験でも、会計かITのどちらかをかじった人が応募するケースが多いですね」
そう話すのは、同社人事部の田中智之氏だ。未経験者をコンサルタントとして採用する場合、27?28歳が年齢の分岐点となるという。
「それより若いなら、未経験でもOKです。各社それぞれ事情は異なると思いますが、当社の場合は、既存社員の年齢とスキルのバランスを考慮しての判断です。未経験者でも採用したいのは、価値観や顧客に対するスタンスを共有できる人物。どんなにスキルの高い人でも、顧客に対するスタンスがズレていると、チームワークが崩れます。また、会社の価値観に共感してくれることが、活躍できる人材の条件と言えます」
同社のコンサルタントには、前職が会計専門学校の先生だった人やメーカーの研究職だった人などもいる。その共通点は、ITか会計業務のいずれかの実務経験を持っているということのようだ。
一方、30代の場合は、ERPや会計系モジュールの経験のある人、大小問わずプロジェクトリーダー(マネジメント)経験者など、即戦力を求めているという。また、田中氏の場合、経験者・未経験者を問わず職務経歴書の中で注目するのは、転職理由や志望動機だ。
「どんな会社で何をしていたかということより、新卒の時に何がしたくてその会社に入って、どんなギャップがあって辞めたくなり、なぜ当社が転職先の候補になっているのかということを重視します。人材紹介会社のアドバイスで化粧した志望動機はすぐ分かりますよ。もっと自分の言葉で書いてほしいですね」
最後に、20代がよりよい転職を実現するためのアドバイスをもらった。
「逃げの転職を繰り返すと、ヘタをしたらジョブホッパーになってしまいます。辛いことを乗り越えてから転職した方が、いいキャリアを作ることができるはず」(田中氏)
「目先の給与だけで安易な転職をすると、キャリアにバラつきが出てしまいます。未経験分野にも転職できる20代なら、将来目指す仕事から逆算して経験を積んでゆくべきです」(備海氏)