ワトソンワイアット株式会社
コンサルタント
森田純夫さん
成果主義の導入で実際の年収は想定しにくくなった!?
異業種への転職は大幅年収アップのチャンスとなり得るが、同時に入社後に思わぬ年収ダウンを招くリスクもある。仕事内容はもちろんだが、給与面でも前職の業界の常識が通用しないケースは多い。組織変革・人事コンサルティングを手掛けるワトソンワイアットの森田純夫氏は、こう語る。
「いわゆる土地勘≠発揮できないのが、異業種転職最大のリスクです。入社してみないと見えない情報が必ずあるという前提で、調査をしていくべきですね」
ただし共通しているのは、いずれの業種においても人事制度改革はほぼ完了し、程度の差こそあれ、成果主義を導入しているということだ。
「多くの企業は、成果主義の導入を終えています。その効果的な運用に悩んでいる企業が多いのが現状です」
年齢に関わらず、成果や業績に沿った報酬が約束される成果主義。しかしその導入により、転職者にとって見えにくくなってきたものもある。それは、入社後の年収アップ推移の予測だ。
「年齢昇給への依存をなくし、成果を評価するということ自体は、その会社で経験を積んでいない転職者にとって嬉しい制度でしょう。しかし、実力次第という言葉のもと、一体どのくらいの収入が将来にわたって提供されるのかが分かりづらくなっています」
ハイパフォーマーの給与モデルに惹かれて入社したものの、現実は厳しかったというのもよくある話。また好景気で忘れがちだが、転職先の業績が下がれば、もちろん年収も下がる可能性がある。
そのようなリスクを回避するためにも、人事部に詳細を確認することが大切だ。まず「家族を大切にする」、「メリハリある働き方」など、企業の価値観と自分自身の価値観が一致しているかどうか。さらに一致していれば、手当などの人事制度上にその価値観がどう反映されているかをチェックするべきだろう。
「異業種転職」運命の分かれ道
|
異業種からの転職で、大幅年収アップを実現したのが、現在ITコンサルタントとして働く東原昇氏(仮名/30歳)だ。東原氏は大学卒業後、地元のソフトウエア会社にSEとして就職した。約8年間在籍し、着実にキャリアを重ねていった。
ところが、結婚を機に東京で生活することに。自分一人での転職活動に限界を感じた東原氏は、人材紹介会社を利用した。すると、自分の年収と提示される年収額の差に驚いた。地方と東京の給与水準が大きく異なったのだ。さらに成果主義によって、自分の業績が直接年収に跳ね返る体制も新鮮に感じた。
結局、前職から200万円アップでITコンサルティングファームへの入社が決まり、無事に転職活動を終えた。今、東原氏は外資系ファームでITコンサルタントとして活躍している。地方出張の際には手当もきちんともらっているという。業界間の給与格差はもちろん、地方と都市部の格差や成果主義の導入を利用し、思わぬ年収アップとなったうらやましい例だ。
|
現在、証券会社に勤める芳野哲雄氏(仮名/28歳)は、異業種への転職で年収がダウンしてしまった一人だ。芳野氏は新卒で大手証券会社に就職し、アナリストとして活躍。当時の年収は大台の1000万円を超えていた。しかし10年のキャリアの後、自由な空気に惹かれて、友人が設立したベンチャー企業に転職する。年収は200万円ほどダウンしたが、満足だった。
ところが、1年もすると会社の経営が悪化。経営者側の立場にいた芳野氏の年収も、大幅にダウンしてしまった。結局、家族との生活を支えるため、退職することになる。このときの退職金はもちろんゼロだ。
こうして芳野氏は証券業界へ舞い戻ることに。現在の年収は最初の証券会社時代よりも100万円安い。生活に支障はないと語る芳野氏。しかし、退職金は勤続年数に比例して増える仕組みだ。芳野氏は10年間のキャリアを棒に振ってしまった。ずっと同じ会社に勤めていたら……。この回り道が芳野氏に重くのしかかるのは30年後かもしれない。
転職力診断であなたにおすすめの求人をご紹介!
- 1
- 2