不安要素を見極めて本物の年収アップを目指す
30歳を目前に控えて、最後の異業種転職を考える人も多いだろう。確かに業界知識や業務内容を活用することができないので、リスクが伴うのは避けられない。とはいえ、人材活況の背景を受けて、年齢制限や異業種転職者へのハードルは低くなりつつある。中でも、コンサルタントやキャリアアドバイザーといった前職の経験を活かせる職種の採用が活発化している。こうした職業ならば、個人の経験値を年収に加算して評価してもらうことも可能だ。
異業種転職によって、希望の仕事に就ける人も多い。しかし、入社後が最も大切だということを忘れてはいけない。入社後の評価方法や昇給システムが自分に合わないと、年収もモチベーションも下がってしまう。
年収を上げたいのなら、給与水準の高さはもちろん、その会社が業界内でどのくらいのシェアを持っているのか、業界の今後の業績や事業のオリジナリティなども加味して転職先を決めるべきだろう。
転職は自分はもちろん、家族にも影響を与える転機。特に異業種へのチャレンジは、年収面のリスクが高い。ただし、自分の経験が活かせる仕事と、自分に合った評価・昇給体制と出会えれば、さらなる年収アップが可能になる。転職前に不安はすべてクリアにして、真のキャリアアップと年収アップを実現しよう。
年収リスクヘッジ チェックポイント
●ボーナス額も社長のさじ加減 経営者体制
ベンチャー企業や中小企業に多いのが、会社の体制が経営者の独裁政権になっている場合だ。経営者に気に入られれば出世は早いが、逆の場合は正当な評価が受けられず、退職に追い込まれることも。大企業でも、カリスマ経営者といわれるような社長は要注意。よほどその経営手腕にほれ込んでいないと、入社後に辛い思いをする可能性がある
【チェックポイント】
会社の経営陣が同族の場合や、経営者一代で築き上げたベンチャー企業などは注意が必要だ。こうした経営者は、採用面接にも登場することが多い。面接時に、ほかの社員が社長に接する態度を観察するのもいいだろう。経営者と自分の価値観が一致するなら、嫌う必要はない
●時代の流れは減少傾向 おいしい手当
手当は成果主義ブーム以降、徐々に減少傾向にある。特にコンサルティング業界や、IT系など、比較的新興で長期雇用を前提としていない業界や企業は、手当を給与に含め、成果に重きを置いている。また、長期雇用を掲げる製造業などでも、住宅手当や家族手当など、属人的な手当を廃止している企業が増えている
【チェックポイント】
手当が基本給のほかにあるか否かで、総収入は大きく変わる。見かけの収入が低くても、自分に関わる手当の有無をチェックしてみると、満足できる額だったということも。また、「家族主義だからこそ育児手当が充実」など、会社のコンセプトと連動した手当を設けている企業もある
●業界ごとの特徴をチェック 人事評価制度
人事評価には、プロセスを見る「能力・行動評価」と、結果を見る「成果・業績評価」の2つがある。通常は両者のバランスを取った査定が行われる。ただし、金融や不動産の営業職などは結果が、製造業ではプロセスが重視される傾向があり、業界や企業によって、評価の仕組みが異なる。また、360度評価を取り入れる企業も増えている
【チェックポイント】
異業種転職の場合、同じ職種でも業界や会社の価値観が変われば、求められるパフォーマンスが全く異なる場合も。希望する会社では何を重視して評価が行われるのか注意が必要だ。その際、できれば複数の同業他社の評価の仕組みを調べておくと、希望の会社の特徴や相性を知る手助けになる
●「多ければ安心」ではない! 昇給タイミング
昇給は、通常年に1回。企業によって、半期ごとや四半期ごとの場合もある。昇給タイミングが多いのは、業界全体の変化が激しい証拠だ。ITやWeb系の企業など、ベンチャーが活躍する業界に多い。営業職の場合、昇給タイミングが多いほど、成果が給与に反映されるというメリットも。ただし、「昇給随時」には要注意。会社都合で、昇給が見送られる恐れもある
【チェックポイント】
昇給機会が多いのは、短期で高収入を実現したり、思いのほか活躍できなかったときにもすぐに挽回できるチャンスがある。代わりに、長い目で経験や実績を見てもらいたいという志向とはそぐわない場合も。業種や職種に対し、妥当なタイミングで設定されているかどうかをチェックしよう
●出世組はすでに決定していることも! 入社のタイミング
同期のような仲間が欲しいのなら、転職者の入社時期を一定に制限している企業がオススメ。また、優秀な人材でも企業の方針や入社時の年齢により、企業の昇給ルートから外れてしまう場合がある。あらかじめ、社内で転職者がどれだけ活躍しているかは必ず確認しておきたい。できれば転職組の社員と話す機会が持てると心強いだろう
【対策】
30歳前後から、それまでの活躍に応じて、幹部候補生の選抜を開始している企業が増えてきている。将来、幹部として活躍したいのなら、30歳を過ぎてからの転職には注意が必要だ。また、商社やメーカーに限らず、英語ができないと自動的に出世コースから外されてしまうことも。必要なスキルは、20代のうちに身に付けておきたい
●含まれている金額に注意 年俸制の表記
最近、年俸制で示した給与例が求人情報でも増えている。年俸という言葉には決まった定義がなく、年俸以外の手当や賞与は出さないケースもある一方で、年俸と別にボーナスが支払われる企業も多い。また、月収に直した場合、どの企業でも年俸÷12が支給されるわけではない。年俸÷14として、6月と12月には2カ月分ずつ支払うという企業もあるので注意が必要だ
【チェックポイント】
入社前に、実際の給与を確認することは、決して失礼なことではない。逆に、最初の段階で確認しないと聞きづらくなることも。異業種転職では、前職の業界の常識が全く通用しないこともあり、どの程度の収入が見込めるか、将来の展望も含めてきちんと確認したい
●業績の行く末が見極めどころ 社員持ち株制度
自社株を一定基準で購入することができるストックオプション制度や、自社株を社員に持たせる従業員持ち株制度を導入する企業が増えている。特に大量の現金を必要としないストックオプション制度は、ベンチャー企業を中心にボーナスやインセンティブとして利用されることが多い。自分の年収や、退職時に受け取る金額に影響するので注意が必要だ
【チェックポイント】
業績が好調だったり、会社が未上場から上場予定の場合には、今後の株価上昇が期待できるので有効な投資といえる。ただし、従業員持ち株制度で購入した株は退職時に会社に売却するため、業績が悪化してしまったり、上場後に株価が下がってしまうと、損をすることもあるので見極めが重要だ
●業界ごとの格差が激しい 退職金制度
退職金を廃止する企業はまだ少ない。しかし、コンサルティングファームやIT企業など、人材流動が激しい業界は、退職金制度を重視しないケースが多い。また、勤務年数によらず、本人の成果や貢献に支給額を連動させる制度に移行している企業もある。一方で、日系企業の中には年功制を残している所もある。先の話と考えず、前もって仕組みを知っておくべきだ
【チェックポイント】
退職金額は、退職時の基本給をベースに、勤続年数別の係数を掛け合わせるパターンが一般的。転職者は定年退職の年齢に達しても、勤続年数が足りず十分な額を得られないことがある。また、退職金の積立方法も重要。外部積立の割合が高いほど、会社が潰れても退職金が出る可能性が高い
●急増する新たな年金制度 401k制度
確定拠出型年金(401k)は、2001年10月に始まった新しい年金制度だ。確定拠出というのは掛け金が確定しているという意味で、将来受け取る年金の額は掛け金の運用により変動する。また、年金資産は個人別に管理され、転職した場合、新しい就職先に持ち運べる。積み立てた年金をどう投資するかは、基本的に加入者自身が決めるため、企業は加入者向けの投資教育が義務付けられている。こうした教育機会を積極的に利用し、投資知識を身に付けていこう
実際のところ、いくらもらえる? 給与例の読み解き方
求人広告で見るさまざまな給与表示。手当の有無など、表示額から実際にもらえる金額を想定しておくことが必要だ。
《ケース1》
【固定給20万円?50万円】 ※残業代は別途支給
毎月、決まってもらえる金額が最低でも20万円、最高で50万円まで期待できる。また、固定給に加えて時間に見合った残業代が支給される。
《ケース2》
【月給30万円以上】 ※一律、手当てを含む
最低でも30万円が毎月保障される。手当が上乗せされないので、含まれている手当て内容や金額をはっきりさせておく必要がある。
《ケース3》
【固定給25万円+業績連動給】 ※業績給は獲得粗利額の10?20%
営業職などに多い給与体系。毎月25万円は必ず支給されるが、加えて個人の業績に提示の割合を掛けた金額が支給される。
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