転職における「35歳の壁」を賢く乗り越える方法

公開日:2022年12月13日 #キャリア #転職知識 #応募・選考

転職における「35歳の壁」を賢く乗り越える方法

35歳ともなると「家族のために収入を上げないと……」「会社に将来性を感じない」など切実な不満や不安を感じやすいかもしれません。あるいは、キャリアに一区切りをつけて新しいスタートを切りたい、と考える人もいるでしょう。正直なところ、転職市場の「35歳の壁」はあります。しかし、賢い戦略を持てば35歳からの転職を成功へと導くことは可能です。
この記事では、「35歳の壁」がある理由と、35歳からの転職で成功する人の特徴や成功するためのコツをご紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。

転職で「35歳の壁」がある理由

採用する企業側の理由

ポジションが少ない

会社組織は、年齢が上がるにつれて人材選別が進みます。30代になると花形部署への配属など、同期で誰が出世コースにのっているかが見えてきたりしていませんか。一般的な傾向として、会社で35歳前後といえば課長職への出世競争が活発化している頃でしょう。そんな35歳前後を中途採用するとなると、そもそもポジションの数が少なく、求人数自体が20代と比べると減ってしまうのは当然のことと言えます。

即戦力がほしい

転職市場で、35歳の人材は「即戦力」が求められる傾向にあります。「そこそこキャリアを積んできた」という漠然としたものではなく、自社内で足りていない専門性の高い知識やスキルや、マネジメント経験があるかどうかに企業側は注目しています。つまり、35歳での転職では、応募職種で高いレベルのスキルや知識を持ち、なおかつマネジメントも任せられる人材が求められていると言えるでしょう。

マネジメントしづらい

35歳にもなると、社会人経験が10年以上あり、自分の中に成功体験から来る仕事のやり方やこだわりを持っている人は少なくないでしょう。また、社内での評価が高かったのなら「他社でも同じかそれ以上に評価される」というプライドを持っている人もいるかもしれません。しかし、そうしたものは企業側にとっては「マネジメントしづらい」と思わせる要素であり、壁となっている理由でもあります。

コストが高く、リスクも高い

企業側は、ポジションに応じた年収を準備する必要があります。国税庁の民間給与実態統計調査(令和2年分)を見ると、35~39歳の平均給与437万円に対して、25~29歳は362万円ですから、60万円以上多いことがわかります。多くの企業で20代よりも30代の方に多くの年収を支払いますから、企業側は採用に失敗したときのリスクが大きいのです。

応募する求職者側の理由

企業に求める条件が上がる

35歳の転職には、求職者側の事情が20代とは違うことも影響します。結婚しているなら生活に必要な額も上がり、「現状の年収キープが最低条件」「年収アップ希望」「安定雇用」など金銭面を中心に希望条件が上がるでしょう。それらに加わって、ワークライフバランスの変化や家庭の事情で「残業は今より少なめ」など他の譲れない条件も増えるなら、結果として企業側とのマッチングが難しくなります。
また、そもそも35歳前後の求人数が少ない中で、好条件の求人の競争率が高くなるのは当然のこと。このように「35歳の壁」とは、求職者側のライフステージが変化していることも一因となっているようです。

【男女別】35歳から転職した人の賃金変動データ(令和2年)

35歳~39歳で転職した人の転職理由(男女別)

厚生労働省の令和2年雇用動向調査の結果で転職理由(35~39歳の区分)を見ると、男性のTOP3(「転職入職者が前職を辞めた理由」より、男女とも「その他の理由(出向等を含む)」を除く)は「会社の将来が不安だった」が12.8%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が10.0%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が9.6%です。この年代で、会社の将来を見据えた転職へと踏み切っていることがうかがえます。
また、女性のTOP3は「職場の人間関係が好ましくなかった」が13.0%、「給料等収入が少なかった」が10.2%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が9.9%です。2位と3位を見ると、多くの方が待遇面やワークライフバランスでの好条件を求めて転職をしているようです。

35歳~39歳で転職した人の賃金変動状況

厚生労働省の令和2年雇用動向調査の結果(転職入職者の賃金変動状況別割合)によると、35~39歳の区分で、転職して賃金が「増加した」割合は37.4%です。賃金が「変わらない」と回答した割合は27.2%。つまり、転職で現職以上の年収を得たのは64.6%で、6割以上の方が収入アップしたというデータが示されています。また、賃金が「増加した」うちの、68.7%(約7割)の方が「1割以上賃金が増加した」と回答しています。

「増加」または「変わらない」が6~7割を占める

上述したように、35歳からの転職で、賃金が「増加」または「変わらない」割合は6割を超えています。つまり、35歳からの転職でも給与水準をキープもしくはアップを十分に目指せることがわかります。
ただし、大企業にいる場合は要注意です。大企業の多くは、年功序列で一律で給与ベースが上がっていくものですし、マネージャー職になれば年収が1,000万円を超えることもあるでしょう。大企業の場合、収入面だけを見れば「社内に残る」という選択の方が良いことも少なくありません。

35歳からの転職が成功する人の特徴

スキルを次の企業へ持ち越せる

35歳からの転職では、20代で求められた学歴などのステータス、人柄で判断されるポテンシャルよりも、キャリアの実績がより重視されます。応募先の企業には、「自社にはないスキルや知識、経験からくる知見を持ってきて欲しい」という明確な希望があるからです。業界や職種に紐づく専門性の高いスキルだけではなく、問題解決力、新しい環境でも力を発揮できる協調性やマネジメント力など、どの職場でも活かせるポータブルスキルに高いレベルが必要とされています。35歳からの転職で成功する人は、こうした転職先へ持ち越せるスキルがあり、かつ上手くアピールできる人です。

採用側の目線に立てる

35歳からの転職で成功する人とは、採用側の目線に立てる人です。採用側にとって「外から来て、少ない管理職に就く」というポジションになること、「自社にはない知識とスキルを得るため」に求人が出ていることが、しっかりと理解できています。そのうえで、応募先の企業が中途採用に踏み切る意味、つまりその仕事の課題や会社の抱える課題まで見えていて「自分を採用すればどんなメリットがあるのか」を示すことができる人です。そうでなくては、競争を勝ち抜くことは難しいでしょう。
こうした企業側のニーズが1人では判断しづらいという方は、転職のプロである転職エージェントに相談して戦略を立てることもおすすめします。

明確なビジョンを持っている

35歳からの転職では、自分の今後の人生を思い描いたうえで「理想とする働き方」のビジョンを持てるかどうかが成功を左右します。ビジョンがあれば、スキルアップやキャリアアップのための条件、さらにライフステージに合わせた条件、将来起こりえる変化も考慮に入れた条件をも考慮して、譲れない条件や優先順位が定まってくるからです。転職での自分の軸が明らかになると、自分にとって重要ではない条件に振り回されなくなり、転職後の満足度の高さにつながります。

35歳からの転職を成功させるコツ

心の持ち方

35歳からの転職を成功させる大事なコツは「心の持ち方」にあります。新しい環境に身を置きたい、というリフレッシュ目的の転職は、失敗する可能性が大きいのが35歳以上です。家族がいるなら、影響は自分1人ではありませんから、特に年収など待遇面は「今の職場にいた方が待遇が良いか?」という検討を必ず行いましょう。そのうえで転職を進めたいなら「今あるスキルを活かす職場」への転職が必要だと心得ましょう。
20代のようなフレッシュさはもはや武器になりません。伸びしろではなく「今できること」が35歳以上の転職市場で期待されているのです。「これまでに磨いたスキルで貢献する」という意識を持つことが重要です。

企業の選び方

35歳からの転職には「業務経験で築いたキャリア資産をどこまで活かせるか」という視点での企業選びが必要です。シンプルに同業界・同職種での転職なら、専門知識やスキル、コミュニケーション力などのポータブルスキルや人脈など、キャリア資産を活かせる可能性は高いと言えるでしょう。あるいは、自分と同じキャリア資産を持つ人材が少ない業界へ行く、という選択も方法の一つです。なぜなら、貴重な人材というポジションを取れば、ライバルが少ないので活躍が目立つというメリットを期待できるからです。こうした「自分が貢献できること」に焦点を合わせた企業選びを行えば、採用されやすいうえに転職後の社内評価も手堅く、満足感が得やすくなるでしょう。

自己PRはニーズに合わせる

自分の実績に自信がある人ほど、自己PRが自慢話になってしまわないよう注意が必要です。自己PRはあくまでも、採用側が求める人材にいかに自分がマッチしているかを示す場面です。自分が話したいこと(=実績や自分が出来たこと)ではなく、面接官が知りたいこと(=自社での再現性)をロジカルに話さなくてはいけません。自己PRが「相手の求めるニーズ(貢献)をいかに自分が満たせるか」にポイントを置いているかを十分にチェックしておきましょう。

業種だけを変える転職も視野に

35歳からの転職で年収ダウンのリスクを減らすには、職種、つまり業務内容は変えずに、異業界へ転職する方がおすすめです。年収水準がそもそも高い業界への転職なら、年収アップも期待できるかもしれません。一例をあげると、印刷関連会社の営業職から広告業界の営業職への転職など。専門性の高い分野の職種なら特にこのパターンはおすすめで、例えば、IT業界のエンジニア職の人が、金融業界や医療業界などに活躍の場を広げることもあります。

未経験なら採用されやすい業界で

35歳から未経験の職種へ転職するなら、待遇面での現状維持は難しいと心づもりをしておきましょう。「未経験」は新人として一からやり直すということですから、収入面以外でも、職場で上司や同僚がみな年下という環境もあり得るという覚悟が必要です。その覚悟が持てるなら、35歳からでも未経験者が採用されやすい業界を検討してみても良いかもしれません。介護業界やビルメンテナンスや警備を含む保安業界は年代を問わず採用がありますし、建設業界も視野に入れても良いでしょう。こうした業界は、実務経験を積んで資格を取得すると待遇アップにつながりやすい面があり、最初は厳しくても努力次第で管理側へとステップアップするチャンスはあります。

まとめ

35歳という年齢は、プライベートの人生設計も考慮してキャリアを見直したいと感じやすいタイミングです。これまで働いた時間よりも先の時間の方が長く、ここで一念発起して理想の働き方をつかみたいと「転職」の文字がよぎる人も少なくないでしょう。戦略さえ良ければ年収アップも十分狙えるのが35歳ですから、ここで一度、検討を始めてみてはいかがでしょうか。

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