転職する人の割合は約2人に1人。ウィズコロナで市場はどう変わる?
終身雇用が崩壊に向かい、転職が当たり前になったといわれる現在。コロナ禍で転職を意識した人も少なくないでしょう。転職市場を見ても、ウィズコロナを見据えて求人する側のニーズに変化が見られます。この記事では、今の時代を背景にした転職にまつわる意識や転職市場の変化について解説しています。
コロナ禍で変わる日本の転職事情
約2人に1人の割合で転職する時代
現在の日本では、2人に1人が転職する時代になったと言われています。ある民間の転職市場に関するアンケート調査結果では「転職経験あり」と答えた人が「転職経験なし」と答えた人を上回っています。また、就活生を対象に行った民間調査でも、将来的に転職はありか?」の問いに、約7割が「はい」と回答しています。
雇用形態が多様化して終身雇用が現実的でなくなっていることや、自分らしく生きることを理想とする時代の変化、AIによって多くの仕事が無くなるという予測があることからも、若い世代を中心に転職への抵抗感が薄れていると思われます。実際に転職する人が増えていくことで、今後さらに「転職が当たり前」の風潮は広がっていくでしょう。
転職者の比率は2019年から微減傾向
厚生労働省の労働力調査(2021年度)によると、2019年に転職した人は5.2%で、2020年は4.8%と減少に転じて(対前年比マイナス0.4%)います。また、2020年(7~9月)と2021年(同期)を比較すると、4.9%から4.3%に減少しています。これは、コロナ禍で転職市場の求人数が減った影響や、転職活動を控える人が増えたことによるものと思われます。
しかしながら、コロナ禍でも一定数は転職をしており、休業を余儀なくされて転職せざるを得ない人、会社や仕事の将来性に不安を感じた人、リモートワークでゆっくりと自分の人生について考え直した人などが、転職を選択したと推測できます。
2022年に向けて有効求人倍率は回復の兆しあり
コロナ禍に入ってからの有効求人倍率を見ると、2020年10~12月は有効求人倍率が1を割り込みました。しかし、2021年になってからは1を超えており、2022年も引き続き回復傾向が見られます。考えられる理由としては、ウィズコロナの時代に合わせて再び経済を動かしていく時代に変化したことや、人手不足になった企業が求人を増やしていること、コロナ禍での新しい働き方やDX(デジタルトランスフォーメーション)へ対応できるIT関連人材のニーズが高まり、IT関連人材のニーズが増加していることなどが挙げられます。
厚生労働省の調査による転職理由
転職理由は「自己都合」が76.6%を占める
厚生労働省の調査によると、転職した人が直前の勤め先を退職した主な理由は、「自己都合」がダントツの1位で76.6%です。次いで、明確に会社都合だと判定できる「倒産・整理解雇・人員整理による勧奨退職」が5.8%です。他には、「契約期間の満了」が4.9%、「定年」が3.0%、「出向(移籍出向)」が2.3%、「早期退職優遇制度等」が1.0%となっています。多くの人が、自分の意思を持って転職をしていることがわかります。(他の理由:「その他」4.5%、「不明」1.8%)
自己都合の内訳トップは「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」
上で記述した「自己都合」による退職理由を同じ調査から詳しく見ると、1位は「労働条件(賃金以外)が良くなかったから」で28.2%です。人間関係、労働時間、有給休暇の日数、評価制度などへの不満によって転職していると考えられます。2位が「満足のいく仕事内容でなかったから」の26.0%。自分が望む業務内容でないことや、将来的にも成長できる環境でなかったなどの原因が考えられます。続く3位が「賃金が低かったから」で23.8%です。
男女別に転職理由のトップを比べると、男性は「満足のいく仕事内容でなかったから」で28.4%、女性は「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.1%と違いが見られました。
転職が当たり前の時代になった理由
①働き方改革による終身雇用時代の終わり
日本で現在進んでいる「働き方改革」は、多様な働き方を選択できる社会を実現するための改革です。「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」の実現、また非正規社員の不合理な待遇の解消を目指し、2018年6月に関連法案(※1)が成立し、2019年4月1日から施行されました。(※2)働き方改革が必要になった背景には、長く日本経済が低迷したこと、それにも関わらずグローバル競争が激化したこと、社会のデジタル化が進んだことで過度な労働時間や非正規社員が増加したことなどがあげられます。
また、この施行開始のほぼ同時期に経済界のトップが相次いで「終身雇用の維持が困難」と発言したことから、終身雇用時代の終わりの幕が開けたとも言われています。
※1 労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正
※2 一部の施行は別時期
②QOLを向上させる生き方が理想に
日本では長らく、がむしゃらに働いて昇給・昇進し、車やマイホームなど物質的・量的に豊かな生活を手に入れることを人生の目標とする価値観がありました。高度経済成長期を生きたビジネスパーソン達が通ってきた道です。しかし、今では「暮らし」や「家族」という側面、つまりワーク・ライフ・バランスを意識することが増えました。QOL(生活の質)を向上させることを理想として、社会の意識が変化してきたのです。この変化により「長時間労働やサービス残業もやむなし」「仕事は我慢するもの」といった意識が薄れ、仕事にやりがいや充実感などの幸福を強く求めるようにもなりました。こうした時代の変化が、より良い労働環境ややりがいのある仕事を求めて転職することを促し、転職が当たり前の時代が進む一因となったと言えます。
③多様性を受け容れる時代の変化
平成の時代を通して、就職して結婚~子育て~マイホーム購入~定年退職、のようなあり方が「人生の正解」ではなくなっていき、また、性的指向や性自認がマイノリティだったLGBTG+の方々への理解が深まるなど、あらゆる面で個人の多様性を認める社会へ時代が変化しました。働き方においても、フリーランスを選択する人が増え、副業が解禁される企業が増え、最近ではFIRE(※1)と呼ばれる資産運用による経済自立で早期リタイアする生き方に注目が集まるなど、個々で自由な働き方が珍しくなくなりました。令和という時代では「QOLを上げるための転職は当たり前」という意識が高まり、転職への追い風はますます加速すると言えるでしょう。
※1 Financial Independence,Retire Early(経済的自立と早期リタイア)
ウィズコロナでも後悔しない転職をするために
ライバルが増える前に準備を進めておく
ウィズコロナの時代はもう目の前で、転職市場でも今後、様々な業界の求人意欲がさらに回復してくると予測されています。「もう少し、世の中が落ち着いてから転職しよう」と様子を伺っていると、転職活動を始めるころには他の求職者も一斉に動き出していて、ライバルが増えている可能性は高いです。それならば、リモートワークで時間に余裕がある今、業界・企業研究、自己分析、職務経歴書などの準備をしておくことをおすすめします。
また、今転職活動を始めると、オンライン面接で直接面接よりも大幅に時間が節約できるメリットもあります。
正解が無い時代は自分の意思が重要
コロナ禍で突然、これまで通り働けない、生活できないという体験を経た今、多くの人々が将来の予測が困難なVUCA(※)時代に突入し、今までの正解が通用しなくなったことを感じているでしょう。想像もできないような事態でも生き抜く力が必要であると実感した人も多いのではないでしょうか。今後は、より個人を重視した時代になり、決まった正解が存在しない時代になっていくと考えられます。つまり、自分自身でビジョンを強く持つことが重要です。転職を検討するにあたり、まずは今後自分がどんな風に働いていきたいか、生きていきたいかをていねいに考えていきましょう。
※Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性
まとめ
ウィズコロナの時代は、非接触のコミュニケーションが許容され、時間と場所の自由を謳歌できる時代とも言えます。より自由を大切にするための転職をする人もいるでしょうし、自分の目指すキャリアプランを描き直すための転職をする人もいるでしょう。あるいは、SDGsやメタバースなど、変化する社会を見据えて新しい領域を選択する人もいるかもしれません。どんな時代であろうとも、自分の心に従って決めた選択は正解であるはずです。コロナ禍というピンチを、人生を切り開くためのチャンスに変えるために、今動き出してみませんか。
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