「自分」「精神」「社会」を見直して折れない心を作る21のトレーニング
「折れない心」や「逆境力」などと訳される「レジリエンス」という言葉を知っていますか? 近年注目を集めるレジリエンスについて深彫りした1冊を、10分で読める内容にまとめました。本書を読んで、ストレス社会で強く生きる術を身に付けましょう。
タイトル:折れない心のつくり方 人生が変わる21日間プログラム
著者:Dr.ゼラーナ・モントミニー 著/森嶋 マリ 訳
ページ数:264ページ
出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン
定価:1,404円(税込)
出版日:2016年08月24日
Book Review
近年、「レジリエンス」という言葉が注目されている。日本語では「折れない心」や「逆境力」などと訳され、目まぐるしく変化する現代社会では、これまで以上にこうした要素が大きな意味を持っている。生きるうえで不可欠な強さや障害を乗り越えるためにチャレンジして教訓を得る能力は重要である。しかし、この強さや能力を獲得する方法については、これまであまり語られてこなかった。
「レジリエンス」を持ち続けることができれば、つらい気持ち、苦しい気持ちを少しでもやわらげることができるかもしれない。折れない心をつくるにはどうしたらよいのだろうかと真剣に考えるのは、現実に困難に直面したり、苦境に立たされたりしたその時なのではないだろうか。しかし困難を乗り越える心をもつためには、日頃の過ごし方や毎日の自分や周囲の人との向き合い方が重要になる。本書では、それを「自分」「精神」「社会」という3つの観点から、合計21の方法として、今日からできるトレーニング法とともに紹介している。
ひとつひとつ見ていくと、断片的には考えたり意識したりしたことがある項目のようにも思える。しかしそれらを体系的に、ステップを踏んで身につけられるようにまとめられているのが本書の特長である。考え方や行動を変えることで「折れない心」を身につけ、困難に適切に対処することができるようになれば、人生はよりポジティブに、有意義なものになるだろう。
自分を変えたいけれども何から始めていいかわからないという人に、お薦めの一冊だ。
幸せのカギは、「折れない心」
「折れない心」はトレーニングで身につけられる
人は幸せを求めるが、うまくいかないケースも多い。それは「幸せだけ」を追求しているからである。一生の幸福を掴むには、幸せでないときがあって当然である。むしろ幸せでないときがあるからこそ、末永い幸福が手に入るのだ。
何か問題や障害が現れたときにあきらめずに耐え、出口が見えるまで粘り強く立ち向かえる「折れない心」をもち、経験した困難を次への糧にできるかどうかが重要である。
本書は「折れない心」を身につけるのに必要な21のポイントを、三週間にわたって1日1ポイントずつ継続してトレーニングするためのトレーニング・マニュアルである。何かを学ぶときには、反復練習がカギとなる。「折れない心」を手に入れるためには、本書のトレーニングが生活の一部になるように意識して、コツコツと積み重ねることが必要である。
「折れない心」があれば苦しみから学べる。つらい経験やストレスからは逃れようがないが、「折れない心」によって苦しみはやわらいで、ストレスに対応することができるのだ。
一週目、自分を見つめる
習慣にする
人が一日に行っている行動の内、約40%は習慣的なことを無意識に行っているという。朝起きてから寝るまで行動の多くは、自身の習慣となって自動操縦で行っているのだ。まずは、自分の行動や考え方がどのように習慣化されているか振り返り、それを自分の理想に近づけることから始めよう。習慣化するには、その行動に合図と報酬が伴うことが必要だ。何かの合図によって行動を起こし、その行動によって報酬が得られるという図式である。
希望をもつ
希望をもつことは、人のエネルギーの源となる。自分はできる、現状を変えられるという気持ちをもち、やれば成功すると前向きに考えられることは何かをするうえでとても大切だ。不安や心配があっても、いい面に目を向け、成功した自分をイメージするとよい。希望や目標をビジュアル化し、常に目に触れるところに掲げておくのも効果的だ。
健康になる
健康でいることは、当たり前と思うかもしれないが、本当に重要なことである。栄養のある食事、適度な運動は体を強くするだけでなくストレスへの抵抗力も高める。事実、マウスを使ったアメリカの研究でも、よく運動しているマウスはそうでないマウスに比べて高いストレス耐性を示した。いろいろな食材を摂り、体を動かす。義務感ではなく「そうしたいからするのだ」と自然に気持ちが前向きになれば、なお良いだろう。
コントロールする
「自分が何をやっても無駄だ、何も変わるわけがない」という思考に入ってしまうと、そこからなかなか抜け出せなくなってしまう。折れない心がある人は、自分が行動したことによって結果が変わるということを肌で感じている。自分の人生、そして結果は、自分の行動次第で変えることができるのだ。小さなこと、具体的なことからでも目標に即した行動をとってみよう。それによって結果が変わるのを実感することで、あなたは少しずつ人生を自分でコントロールできるようになっていくだろう。
ユーモアを大切にする
どんなに深刻な状況下にあっても、ユーモアを忘れないことで折れない心は強くなる。ユーモアがあれば、自分も周りもポジティブになり、問題解決がよりしやすくなるだろう。失敗したこと、散々な目にあったこと、そんな経験があればいかに面白おかしく人に話せるか考えてみよう。周りにユーモアセンスのある人がいれば、その感性や話術を学ぶのもよい。すぐには身につかなくても、意識し続けることで少しずつ物事の見方も変わっていくに違いない。
自尊心をもつ
折れない心の持ち主は自信をもっているものだが、その自信は単なる高慢やプライドの高さとは異なる。思い上がりすぎず、卑下しすぎるわけでもなく、「自尊心と品格が伴うもの」と言える。それは自分のため、社会のために誠実に行動してきたという実績があるからこそ生まれるものであり、苦しい状況でもあきらめずに少しずつ行動し、困難を乗り越える力につながっていく。
自分を知る
自分自身のことについて、「考え方」「気持ち」「行動」のそれぞれの観点で客観的に理解を深めることはとても意義のあることだ。自分について知っていれば、何か困難や苦痛を伴う出来事が起きた時でも冷静に状況判断したり、自分の心身について見つめたりすることができる。自分はどんなときにネガティブになり、どうすれば少しでもポジティブになれるのか。日頃から自身について理解することは必ず強みとなる。
二週目、精神を見つめる
楽観的になる
楽観的であることは困難を乗り越えるうえでとても大切だ。楽観的な性格かどうかというのはある程度生まれ持った性質もあるが、変えられないものではない。幸せになれるとポジティブに考えて生きていれば、幸せな出来事が起こるようになっていくだろう。大事なのは、非現実的な楽観主義ではなく、きちんと現実に根付いたものであることだ。ネガティブな感情は否定するのではなく、受け容れる。起きたことは起きたこととして受け止め、そこからどう再起していくかを考えるのである。そうすれば、現実に起きることに対応し、自分を信じて行動できるのだ。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、「いまこの瞬間の体験に気持ちを向けて、現実をあるがままに受けいれること」である。苦しい時でも集中し、状況を受け入れることにより折れない心も強くなる。そのためには1日の中で何もせず心を無にする時間を作るとよい。徐々に自分の気持ちにも敏感になっていくだろう。
高潔を目指す
その時々に置かれた状況によって、きまりやマナーを守らなかったり、人に言えないことをしてしまったりと、本来の自分の価値観に反することをしてしまうこともあるかもしれない。そのような経験は、後悔や罪悪感となって後々長く心に影を落とすこととなる。後悔をするくらいなら自分の言動を一致させ、人からの信用を得、高潔に生きるほうが前向きな人生である。道徳や正直さを大切にして、思慮深く行動するべきである。
精神性を重視する
心が満たされ、気持ちが穏やかになると精神性が高まる。そのきっかけは人それぞれだが、人との絆が深まったり、自然を体いっぱいに感じたりすることで高まることも多い。信仰の有無にかかわらず、自分は大きなエネルギーの中の一部なのだと認識し、つながる思いを感じられる人は、困難も乗り越えるだろう。自分と周りの世界に意識を向け、感じることで絆も深まっていくことだろう。
柔軟でいる
柔軟であること、すなわち、状況によって感情や行動を変えて対応できることは、困難に対しての苦しみをやわらげる。何事も変化することは止められない。ならばその変化を受けいれ、融通を利かせて対処すればよいのだ。困難には必ず終わりがあると信じて前に進もう。
忍耐強くなる
忍耐強さをもつことは成功に直結する。「自分を信じて最後までやり抜く」というのはシンプルなことだが、幾度となく失敗をくり返しても諦めずにやり続けるというのは容易ではない。忍耐力を身につけるには、人生の目標を具体的に挙げ、そのために達成する行動、さらにその行動のうち1時間以内にできることを考え実行するなど、集中力をもって取り組むとよいだろう。
受けいれる
現状を受けいれることは大切だが、諦めることとは違う。ネガティブな感情も状況も、逆にすばらしいこともすべてを受けいれ、何ができるかを考えるのだ。起こった出来事から何が学べるか、自分はどうしたらよいのか。心をフラットにして考えることで必ず困難を乗り越えることができるようになるに違いない。
三週目、社会を見つめる
独創的になる
答えのない社会を生きていくには、あらゆる問題に対処していく想像力や独創性が欠かせない。問題や壁に当たったとき人と違う見方や新しいものを生み出す力があれば、問題を巧みに解決することができる。そのためには日頃からさまざまなものや見方に触れ、心からリラックスできる時間を確保して、自由に発想する環境を作ることも大切だ。
心の知能を磨く
心の知能とは、「自分や相手の気持ちを感じとる能力」や「それをもとに行動する能力」を意味する。苦しい時や、他人と意見が合わずぶつかってしまった時も、自分の気持ちを伝え、相手の気持ちを理解し、どうすればよいか考えられることで困難を乗り越えることができる。自分や相手の中にある感情がどのようなものなのか、適切な言葉で表現できることも大切だ。それにより感情を区別することができ、的確にとらえることができるからである。
目的を持つ
目的を持って生きることは、人生を生きる意味をもつことと同じである。目的があれば、おのずと進むべき道も見え、たとえ途中で道を誤ったとしても軌道修正して立ち直ることもできる。変化の激しい時代でも、目的を見つけ、社会や人とのつながりについて真摯に考え、行動しよう。その結果、自分の行動の1つ1つにも意味を見出すことができるようになるだろう。
問題を解決する
問題が起きたときにうまく対処して解決できること、特にそれが危機的状況下であっても逃げたりパニックになったりすることなく発揮できることが真に重要である。問題解決の力を養うには、ある問題に対して思いつく限りの解決策を書き出す訓練をするとよい。そしてそれぞれのシナリオやいい点悪い点を考えていくことで、問題解決の精度は上がっていく。
人とつながる
困ったときに協力してくれる人がいることで心が安定し、折れない心につながる。人数の多さではなく質で考えよう。困ったとき、話を聞いてくれるだけでもよいのだ。信頼し、理解しあえる相手を大切にしよう。
人に尽くす
人を思いやり、相手が何を考えているかを察し、そのために自分の時間やお金、体力を使って何かをするのが、人に尽くすということだ。現代社会では自分中心で人に尽くすという経験は意識しなければなかなかできない。1日に何かひとつは人のために何かを行い、思いやりをもてるようになれば、あなた自身の心も豊かになっていくことだろう。
感謝する
日々当たり前だと思っていることも、実はとても恵まれたことだと気づき、感謝することができるようになれば、心も強くなる。無理やりいつも感謝しなければいけないということはないが、日常の中で感じる気持ちを大切にし、相手に伝えたり、行動に移したりするとよい。感じたことを記録として残すのも有効だ。無理をせず少しずつ実践していけばよいだろう。
※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介
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Dr.ゼラーナ・モントミニー
心理学博士。
ポジティブ心理学、ヘルスケア・ウェルネスの専門家として≪グッドモーニング・アメリカ≫≪トゥデイ≫といった全米ネットワークTV局の人気情報番組で活躍。コーネル大学で栄養学を専攻したのち、臨床心理学で博士号を取得。全米心理学会メンバーで、応用ポジティブ心理学の研究機関コンサルタントを務める。夫と二人の子供とともにロサンジェルス在住。 -
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