快眠セラピストが教える「驚くほど眠りの質が良くなる」睡眠メソッド100

朝の寝覚めの悪さは、どうすれば治せるのか。「1万人の悩みを解決した」快眠セラピストである三橋美穂が記した本書には、睡眠の習慣を改善するための環境や生活へのアドバイスがたくさん書かれている。本書を読んで毎日の睡眠を見つめなおしてみてほしい。

驚くほど眠りの質が良くなる睡眠メソッド100

タイトル:驚くほど眠りの質が良くなる睡眠メソッド100

著者:三橋 美穂

ページ数:256ページ

出版社:かんき出版

定価: 1,512円(税込)

出版日:2015年06月08日

 

Book Review

目覚まし時計が鳴る。まだだいじょうぶかと思って目をつぶる。また目覚まし時計が鳴る。むむ、起きられない……。
こうした朝の寝覚めの悪さは、どうすれば治せるのか。本書によれば、脳に刺激を与えられるように耳を引っぱってみる、もしくは交感神経を働かせるために意識して息を吸う、などいろいろと試すべきメソッドはある。(ちなみにわたしには、「目が覚めたら目を閉じない」というやり方が非常によく効いた)また、寝起きが悪いのはひょっとしたら眠りが浅いせいかもしれない。質のよい睡眠のためには着るものや寝室を見直すのも大切だし、よく眠れるように日中よく活動をし、きちんと食事をとらねばならない。こうした、睡眠の習慣を改善するための環境や生活へのアドバイスも、本書にはたくさん盛り込まれている。
「1万人の悩みを解決した」快眠セラピストである著者は、睡眠をホリスティックにとらえ、悩みに対してさまざまな方面から解決法を提示する。そのどれもが簡単に試せるものばかりなので、気軽に暮らしの中に取り入れてみるとよいだろう。
著者によると、疲れをとるだけでなく、成長を促す睡眠こそが「快眠」だという。限界まで働いて、バッタリ倒れ込むような眠り方というのはじつは不健全なのだそうだ。身に覚えのあるビジネスパーソンの方々はぜひ、本書を読んで毎日の睡眠を見つめなおしてみてほしい。

「起きられない」をなくすコツ

朝起きられないとき

朝起きられないとき

なかなかベッドから出られないときは、耳を引っぱるとよいらしい。耳には100以上のツボがあり、耳たぶにあるツボは脳へ刺激を与えられる。左右の耳たぶを持って横へ引っぱることを繰り返せば、目が覚めてくる。また、耳全体を揉んだり揺らしたりすれば、血行もよくなり、体が活動モードに切り替わりやすくなる。
そして、二度寝の誘惑に負けそうなときは、目を閉じてはいけない。目を閉じるから寝てしまうのである。起き上がるのすらおっくうなときは、ただ目を開けることだけに集中し、一点をじっと見つめる。
目覚まし時計はベッドから遠くに置いておけば、アラームを止めにいく過程で運動をすることになるので、目覚めやすくなる。スマートフォンを目覚ましにすると、ブルーライトを目が感知し、脳の目覚めを促すのでおすすめだ。
二度寝の眠りは、浅い眠りだ。7時に起きるために6時半に目覚ましをセットしてスヌーズ機能を使うよりは、7時にセットしてスッキリ一発で起きたほうが疲れはとれる。

起きてからボーッとするとき

起きてからボーッとするとき

朝起きてからシャキッとしないときは、胸にたっぷり息を吸い込んでみよう。息を鼻から短く4回に分けて吸い、お腹に力を入れて口から強く吐き出す。交感神経と副交感神経を支配する自律神経系のなかで、唯一自分の意志でコントロールできるのが呼吸だ。息を吸うと交感神経が働くので、体を活動モードに切り替えることができる。
身支度は明るい外の光が入る場所で行うのが理想的である。エンジンがかかりにくい場合は、20分から30分、窓際で新聞を読んだり朝食をとったりするとよい。明るい光は、睡眠ホルモンのメラトニン分泌を止める働きがあるため、眠気をとばすことができる。
体内時計は全身の細胞に存在するが、その親時計、マスタークロックは脳の奥深くにある。頭は起きているのに体は寝ているというアンバランスな状態を避けるためには、朝食は起床後1時間以内にとるのがよい。胃腸をしっかり動かすことで、全身の体内時計を脳のマスタークロックにピタッと合わせることができる。

「寝つけない」をなくすコツ

夜眠気がやってこないとき

難しい本を読むと眠くなるという原理を生かして、枕元にそういう本を1冊用意しておくと、入眠に役立つ。難しい本を読むと、苦痛を取り除くためにβエンドルフィンという神経伝達物質が分泌される。これはいわゆるランナーズ・ハイ状態の時にも分泌されるホルモンで、鎮痛効果や気分の高揚、幸福感などが得られるため、寝つきやすくなるのだ。
日曜日の夜になかなか眠れないというケースの原因は、仕事が嫌だからでなく、朝寝坊が原因のことが多い。人間の体のしくみとして、起床後15~16時間後から睡眠ホルモンが分泌されはじめる。そして眠くなり、その1~2時間すると眠る。つまり、朝10時まで寝ていると、眠れるのは2~4時ごろということになってしまう。なるべく起床時間をふだんと同じにするか、月曜日の夜に早めに寝て、睡眠リズムを立て直すとよいだろう。

ストレスで眠れないとき

ストレスで眠れないとき

心がざわざわして眠れないとき、考えすぎで目が冴えてしまったときは、物理的に頭を冷やしてみよう。保冷剤などをハンカチに包んで、ひんやりと気持ちいいくらいの冷え加減に調整する。それをおでこか後頭部にあてると、脳の温度が下がって、代謝が減速され、寝つきが早まる。アメリカの研究報告によると、前頭部を冷やすことによって、不眠症の人が寝つくまでの時間は平均13分短縮されたという。
それでも思考の連鎖が止まらなくなってしまったときには、頭に「ん~」という音を意識して響かせてみよう。目をつぶって、両耳をふさいで、鼻から息を細く長く吐きながら、ハミングするように行う。これはヨガの呼吸法にヒントを得た方法で、精神的なリラックス効果も見込める。
大きなショックを受け止めきれずに眠れないというときは、じつは無理をして眠らなくてもよいという。眠ると記憶が定着するため、眠れないというのは、嫌な記憶を定着させないための体の防御反応なのだ。不眠は一過性のものだと思って、眠くなったらベッドに入ればよい。

リラックスして眠りたいとき

ストレスにさらされている現代人は、体に力が入ってしまっていることが多い。リラックスして眠りにつくためには、あごと目の奥の力を意識してゆるめてみよう。噛みしめると固くなる咬筋は、精神的緊張によっても収縮する。また、パソコンやスマートフォンなどの一点を長く見つめると固くなるのが眼球をとりまく外眼筋で、外眼筋を眼の奥で束ねているのが総腱輪(そうけんりん)という部位だ。咬筋、総腱輪に意識を向けるだけでも、かなり緊張はとける。
特に、「目は露出した脳である」といわれるように、目の疲れと脳の疲れは密接に結びついている。目を癒すことで脳も癒されるので、手のひらを1分まぶたに当て、温めるのも効果的だ。

毎日の習慣で眠りが変わる

快眠のための入浴習慣

快眠のための入浴習慣

また、快眠のためには入浴もうまく活用するといい。人間の深部体温は17時頃に上がり、入眠1~2時間前からホルモンの働きによって体温は下がる。このため、寝る前に体温を少し上げると、体温が下がるタイミングで寝つきやすくなり、眠りも深くなる。冷えやすい人は就寝直前の入浴、ほてりやすい人は就寝2~3時間前の入浴がおすすめだ。
基本は、ぬるめのお風呂に15分くらいゆっくり入ることだ。体温上昇だけでなく、リラックス効果も得られる。ただ、疲れすぎてお風呂に入る気力もないときは、手浴と足浴でもじゅうぶんな効果が得られる。手浴と足浴には、43度くらいの熱めのお湯を使う。体がぽかぽかしてくるまで温めよう。

快眠のための食事習慣

「目を閉じればすぐに寝落ちする」「いつでもどこでも眠れる」という人は、じつは健全な状態ではない。ただの睡眠不足なのだという。健康な人は、入眠に10~20分かかるのが普通なのだ。睡眠不足が続くと生産性が落ち、さらに時間がなくなって睡眠をとれなくなってしまう。十分に眠ることはとても大切なのだ。
睡眠の質は、体が健康だとよくなる。だからこそ、食事の内容にも、タイミングにも気を遣うべきだ。たとえば朝食は、前日の夕食から十分な時間をあけて、空腹状態でとることが望ましい。空腹状態での食事によって、血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌量が増え、体内時計のスイッチが押されることになる。昼食からだいぶ時間があいて、深夜に食事をすると、体がそれを朝食と勘違いして時差ボケ状態になってしまう。
また、夕食はやわらかく、温かいものを食べ、就寝前までに体内の消化活動を終えておくことで、眠りやすくなる。

眠りが変わると人生がうまくいく

睡眠で人生を変える

睡眠で人生を変える

睡眠に関する、イギリスのユニークな研究がある。新年になると宣言する「今年の目標」の達成度と、毎日の睡眠習慣を調査した結果、睡眠をしっかりとっている人の方が、約4割も目標達成率が高いというのだ。睡眠を十分にとることで、疲労に影響されることなく意志が強くなり、それが目標達成を支える。
睡眠を重視する風潮はアメリカのビジネス・エグゼクティブのあいだでも広まりつつある。大けがをきっかけに睡眠を長くとるようになった、ハフィントンポストの創設者、アリアナ・ハフィントン女史は、「成功と幸福感を同時に手に入れるためには、十分な睡眠をとることが不可欠」と語っているという。
著者は、睡眠は、「活動の後始末のためにあるのではなく、もっとポジティブなもの」と語る。著者のいう「快眠」とは、マイナスをプラスに転換する眠りだ。睡眠は本来、疲労回復のためだけにあるのではなく、成長を促すものだ。いろいろなできごとに取り組みながら精神的な成長をするというのが人生の意義である。睡眠は、そのあと押しをする。疲れを引きずったまま、バタンと倒れるように眠るのでなく、自分の成長をイメージしながら眠りにつこう。

眠りを仕事に生かす

アインシュタインの「相対性理論」やビートルズの「イエスタデイ」など、睡眠中の夢からひらめきを得たという偉大な仕事は多くある。睡眠中の情報整理のプロセスが、起きているときには思いつかないような発想を可能にするということは、科学的に立証されている事実だ。
また、何かを学んだあと、直後にしっかり睡眠をとることで、成績がかなり向上することが知られている。ただし、学習したあと、午前2時から睡眠をとった場合は効果が上がらなかったことが報告されているという。24時前に就寝するようにタイミングを合わせて学習するとよい。
こうした効果を仕事にも生かせるよう、睡眠はおろそかにすべきではない。けれど、そうしたことがわかっていても、なかなか睡眠の優先度が上がらず、つい寝る時間が遅くなってしまうという方も多いだろう。寝る時間をしっかりとるためのポイントは、入浴時間を決めてしまうことだ。23時半に就寝するつもりなら、22時にお風呂に入ると決めてしまい、その時点で仕事やその他のことはすっぱり切り上げる。すると、就寝時間が大幅にずれこむというようなことは減るだろう。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 三橋 美穂(みはし みほ)

    快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。
    寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。現在は、全国での講演や執筆、個人相談のほか、ベッドメーカーのコンサルティング、ホテルのコーディネイト、快眠グッズのプロデュースなど、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。とくに枕は、1万人のフィッティングをしてきた経験から、その人の頭を触っただけでどんなタイプの枕が合うかわかるほど。 眠りを多角的にとらえたアドバイスには定評があり、睡眠のスペシャリストとしてテレビや雑誌など多方面で活躍中。NHK「おはよう日本」やフジテレビ系「バイキング」などにも出演するほか、数多くの女性誌で快眠メソッドを紹介。「誰でも手軽に快眠できる」と支持を集めている。 『快眠セラピー』(KKロングセラーズ)をはじめとする多数の著書に加え、監修・ナレーションを手がけたイメージ法のCDブック「快眠メディテーション」(デラ)も好評。豊かな眠りが世界中に満ちあふれることを願いながら、日々活動中。 http://sleepeace.com

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