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佐々木紀彦と塩野誠が時代に切り込む!『ポスト平成のキャリア戦略』を要約で

NewsPicks編集長を務める佐々木紀彦氏と株式会社経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター・パートナーの塩野誠氏による対談本。これからの時代を「ポスト平成」という新時代とみなし、「できる人」の定義が根本から変わると強調するのはなぜか? 真剣に自らのキャリアと向き合いたいならぜひ読むべき一冊。

ポスト平成のキャリア戦略

タイトル:ポスト平成のキャリア戦略

著者:塩野 誠、佐々木 紀彦

ページ数:264ページ

出版社:幻冬舎

定価:1,620円

出版日:2017年12月25日

Book Review

本書は、今をときめく二人の対談本である。一人は、NewsPicks編集長を務める佐々木紀彦氏だ。そしてもう一人は、堀江貴文氏や冨山和彦氏といった傑物とともに事業を創ってきた、株式会社経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター・パートナーの塩野誠氏である。
二人の切り込みはとにかく鋭い。これからの時代を「ポスト平成」という新時代とみなし、「できる人」の定義が根本から変わると強調する。オペレーションばかり上手くて、リスクを負って挑戦する人が少ない。そうした人たちを「チャレンジ童貞」と揶揄するなど、耳が痛い発言も多い。
しかし、そうした厳しいキャリア論が展開されているにもかかわらず、逆に背中を押されるような、ワクワクした感覚が湧き上がってくるのも確かだ。現状に満足できず、漠然とした不安を感じている人。リーダーとして新たな挑戦を希望する人にとっては、本書は強力なサポーターとなってくれるだろう。
また、AIとロボットの融合領域における「ロボットフレンドリー」という発想は、大変興味深い。コンビニを一つの大きな自販機とみなすなど、すでにあるものを、これまでとまったく違う角度から眺めてみることは、自社の既存事業の今後を考える上でも役立つに違いない。
VUCAの時代に、真剣に自らのキャリアと向き合いたいなら、本書のほかに最適なものは思い浮かばない。キャリア戦略の決定版が今ここに。

これからのキャリアのつくり方

昭和と平成の働き方

昭和と平成の働き方

本書のテーマは、「ポスト平成のキャリア戦略」である。佐々木氏によると、「平成モデル」は「昭和モデル」の劣化版に近く、その平成モデルですら陳腐化しているという。ポスト平成のキャリア戦略について語る前に、簡単に平成モデルと昭和モデルをそれぞれ振り返っておこう。
昭和モデルは、右肩上がりの経済の中で築かれた。年功序列で、「男は家庭より仕事優先」といった、時代遅れな面もあった。また、敗戦という悲劇を経験したのもこの時代だった。しかし、国民が一致団結して努力した結果が目に見えた、攻めの時代だった。
一方、平成モデルはというと、長期停滞、男女ほどほど分業、ほどほど年功序列というように、何かにつけて中途半端である。また、バブルが崩壊して経済は低迷し、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大災害が起こった。会社というコミュニティの力は弱まり、コスト削減やコンプライアンスなど、守り重視の人が増えた。
こうしてハングリーな昭和から、守りのニーズが高まった平成を経て、今また「攻め」のニーズが高まってきている。

ポスト平成の働き方

では、ポスト平成の時代においては、どんな人材が「仕事ができる人」とされるのだろうか。スタートアップメディアのNewsPicks編集長を務める佐々木氏は、最低でも3つは得意分野が必要だという。
これまでのメディア業界は分業体制だった。しかし、個人によるメディア運営が可能になった現在では、それが逆に非効率になり得る。得意分野は自動車やIT、金融などの産業領域、動画や写真、デザインといった表現手法、地域の専門性でもいい。3つ以上の専門性を掛け合わせて付加価値を生み出せる人は強い。
これを受けて塩野氏は、「キャリアの掛け算」によりユニークネスを発揮できることの重要性を強調する。例えば、ウェブメディアの経験と自動車業界の人脈を持ち、東南アジアに詳しくて取材もできたら、100人に一人の人材になれる。
また、塩野氏はキャリアについて考える際、「組織固有スキル」と「汎用的スキル」を見誤らないことが重要だと注意をうながす。これまでのキャリアで培ったスキルが、どこでも通用する「汎用的スキル」なら問題ない。しかし、特定の組織内でしか通用しないスキルだった場合、つぶしがきかないからだ。転職を考えるなら、この視点を大事にしたい。

キーワードは「ハングリー&ノーブル」

ポスト平成へ移行するに伴い、リーダーとしての評価軸も変化していくと塩野氏はいう。AIやロボットが進化していく世の中では、ヒューマンタッチ(人間味)やハイタッチ(感性)が、より重視されるようになる。そして、言語感覚や言語操作能力が高い人の評価が高くなる。このときに重要なのが「ハングリー&ノーブル」の姿勢だ。ノーブルとは「高潔な気概」を指す。
昭和の時代には、盛田昭夫や本田宗一郎、松下幸之助といったハングリー&ノーブルの手本となる本物のリーダーがいた。だが、現代のビジネスの現場では、ハングリーさに欠けた人が多く、ハングリーな悪人に騙されることも少なくない。また、ノーブルが欠けていると、日本企業の不祥事に見られるような、「会社のためを思って罪の意識なく悪事に手を染める人」になってしまう恐れがある。
次に、リーダーの評価についてはどうか。日米のスタートアップを比較すると、経営者の能力に明らかな差があると佐々木氏は指摘する。中でも著しく差があるのは「ミッションを創る力」である。
フェイスブックは最近、自社のミッションを、コミュニティのあり方における問題意識を織り込んだものに変更して、話題になった。本来、企業の戦略や機能を変更するときは、その大本となるミッションを変え、それに合わせていくことが求められる。

チャレンジ童貞を脱出せよ

日本の就活生に目を向けてみると、まるで会員クラブのようなシステムの一部になりたがっているように見えると、両氏は口を揃える。そして失敗をおそれてチャレンジしない「チャレンジ童貞」ばかりだという。
失敗して責任を取ることになったとしても、たかだかビジネスの話である。国防の最前線でミサイルのボタンを押すほどの役割でもあるまい。たとえビジネスで失敗しても、最悪の場合、会社を辞めるだけで済む。
戦後、日本人がドイツを押しのけてカメラ市場を席巻したように、日本はかつてベンチャー魂にあふれていた。海外の起業家にとっては、ベンチャーの象徴だった。日本人には絶対に貫き通したい、こだわりという名の美意識があった。この時代の日本人はチャレンジャーだったのだ。
今の日本人が、かつてのチャレンジャー精神を取り戻すにはどうしたらいいのか。佐々木氏のアドバイスは、「漠然とした不安を言語化するとよい」というものだ。そのチャレンジによって何を失うのか。根拠のない不安に取り憑かれているだけではないのか。人口減少により人手が減っていくのだから、万一職を失っても、働き口の心配など無用だと、塩野氏も背中を押してくれる。

ぬるま湯に浸かっている日本

かつてのベンチャー時代から失われたもの

塩野氏は、日本における事業サイクルを、次の4つに大別している。「立ち上げ期」「オペレーション確立期」「まったり期」「崩壊期」である。そして、今は「まったり期」にあるという。
例えば、ソニーやパナソニックをイメージしてみるとわかりやすい。戦前・戦後の時代にベンチャー企業として急成長したのが「立ち上げ期」である。そして企業規模が拡大し、海外に進出した「オペレーション確立期」があり、停滞や事業再生を経験した。今ではリストラなどを経て、一段落ついた「まったり期」に入っている。
さて、大企業を見渡してみると、事業の立ち上げ経験をした人材がいないに等しいことに気づく。日本では「オペレーション確立期」が長く続いたため、多くの人材はオペレーション型になってしまった。つまり、新規事業開発ができる人材がいない。
しかし、「まったり期」に必要なのは、新しい事業を創造することである。時代が大きく転換する中で、既存事業やサービスが今後衰退し、その産業自体が消滅する可能性すらあるからだ。

有事の経営者をめざせ

企業内で経営者人材をめざす際のポイントは何か。塩野氏は、「有事の経営者」をめざすなら、資金繰りの実務経験が欠かせないという。なぜなら、中小企業の経営の7~8割が資金繰りだからだ。資金をつまらせたり、銀行交渉に失敗したりするという崖っぷちの経験をしていないと、いざというときに対処できない。修羅場経験を積むには、若いうちにベンチャーの役員や経営を経験するのがよい。
さらには、「自分がしっかりしなければ会社が傾く」というくらいの当事者意識を持つことも大事だ。いってみれば「ラストマン・スタンディング感」である。自分が責任を持って最後までやり遂げるという気概は、サラリーマン感覚で働いていては、とうてい持てない。リーダーが部下に仕事を任せるかどうかを見極める上でも、「やり切ってくれるかどうか」という指標は重要となる。

AIブームのその先

AIブームはあと2年で終わる

これからの社会を大きく変化させるファクターはAIだ、と佐々木氏は断言する。一方、そのAIブームもあと2年で終わる、と塩野氏は予測する。これは、下火になるということではない。AIがネット以上に目立たずに日常に入り込んで、普通になるという意味だ。
今後AIの普及によるインパクトが最も大きいのは、エネルギーの領域だと塩野氏はいう。特定の領域で、膨大なデータをもとに最適化するという点においては、規模の大きなビジネスであるほど効果が増幅するからだ。例えばAIでコスト削減を考える場合、何兆円の1%を削減するのと100億円の1%を削減するのとでは、天と地ほどの差がある。そういう意味ではGEのような企業は有利だ。

ロボットフレンドリーという発想

AIの専門家である東京大学の松尾豊特任准教授によると、AIとロボットの融合領域では、料理と片付けにおけるAI活用のポテンシャルが高いという。環境面の対応が整えば、その実現可能性は高まるはずだ。
例えば、自動運転実用化の議論では、道路そのものに手を加えずに、いかに自動運転を実現できるかという点が中心となっている。しかし、車体ではなく道路を変えてみるという方法もあるのではないか。自動運転バス専用レーンを作ってしまえば、実用化はかなり現実味を帯びてくる。
同様に、大手不動産会社がマンションやオフィスの室内を、自動掃除を前提に設計する。そうすれば、ロボットによる片付けが普及するのではないだろうか。
このようなロボットフレンドリーな発想は、コンビニにも応用できる。コンビニのとらえ方を180度変えて、一つの大きな自販機とみなすのだ。こういう発想転換がなければ、これからのビジネスは立ち行かなくなると塩野氏は警告する。

AIの人事問題

視点を変えて、人事制度の側面からAIの問題を見てみよう。日本では、実質的に年功序列が残っている。現在の日本企業の雇用体系では、年収500万~600万円のエンジニアの隣に、年収2000万円のサイエンティストを配置することなど、ほぼ不可能だ。しかし、いいものを迅速に作るなら、年間3000万円くらい支払って優秀な人材を世界中から期限付きで雇い、チームに入れることが求められる。
そもそも、企業は「課題ファースト」であるべきだ。自社が取り組む課題に必要な経営資源を手に入れることに注力しなければならない。そのためには、正社員での雇用にとらわれず、プロジェクトの遂行に必要な人的資源を、外部から集めるべきである。いわば「借り物競争」であり、これこそが本当のオープンイノベーションというものだ。

20代のうちに自分をリセットせよ

コミュニティから逃げるという選択肢

コミュニティから逃げるという選択肢

両氏は20代の人に向けて、人間関係に関するアドバイスをしている。佐々木氏は、同じコミュニティの中でお互いに正解を探し合っているような人間関係では、人間力の向上は難しいという。
一方、塩野氏は、コミュニティから逃げることも、人間関係をリセットすることも可能だと知ることの重要性について触れている。今の会社にいることが辛くなったのなら、早い段階でそこから抜け出すことを考えてよい。親の期待に添うことや友達に見栄をはることより、自分の心を守るほうがよっぽど大切なのだから。

一読の薦め

世の中にあふれるキャリア論にはリアリティがない。そう感じる佐々木氏が、自らのチャレンジ経験を後進の若者たちに伝えるべく生み出したのが本書である。対談相手の塩野氏は、ライブドア事件の際に数百時間にもわたって検察の取り調べを受けたようだ。決して順風満帆な人生を送ってきたわけではない。そんなアグレッシブな両氏の話は実に刺激的で、学びも多い。
本書の後半は年代別の章立てとなっており、各年代のキャリア戦略のポイントが述べられている。各年代で読むべき10冊の本なども紹介されているので、そこからさらに学びを深めていただければと思う。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 塩野 誠 (しおの まこと)

    経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター・パートナー、JBIC IG Partners(国際協力銀行とIGPIの合弁会社)代表取締役CIO。
    1975年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、ワシントン大学ロースクール法学修士。ゴールドマン・サックス、起業、ベイン&カンパニー、ライブドア等を経て現職。戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー、各国政府ファンドとの協調投資に従事。政府委員、人工知能学会倫理委員会委員、MBAでの講師等を務める。著書多数。

  • 佐々木 紀彦 (ささき のりひこ)

    1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。2014年7月から「NewsPicks」編集長。最新著書は『日本3.0』。他著に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』がある。

  • flier

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佐々木紀彦と塩野誠が時代に切り込む!『ポスト平成のキャリア戦略』を要約で
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