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「変な人」が新しい時代をつくる!『JTの変人採用』に学ぶ、仕事の面白がり方

JTで採用に携わってきた著者がその独自の採用視点を公開した一冊。本書でいう「変な人」は、発想力が豊かであったり、普通の人とは違う視点で物事を見たりと、これからの時代を活躍できる「新しいものを考え出す力」がある人のこと。変な人になればあなたも仕事が格段に面白くなる!?ぜひ要約で確かめてみてほしい。

JTの変人採用

タイトル:JTの変人採用

著者:米田 靖之

ページ数:224ページ

出版社:KADOKAWA

定価:1,512円

出版日:2018年5月25日

Book Review

「変な人」と聞くとネガティブなイメージを持つかもしれない。一般的に「変な人」とは、言動や性格が変わっている変わり者のことで、ちょっと近寄りがたい存在だろう。一方、本書でいう「変な人」は、ポジティブなイメージだ。発想力が豊かであったり、普通の人とは違う視点で物事を見たりと、これからの時代を活躍できる「新しいものを考え出す力」がある人のことを指す。
本書は、JTで採用に携わってきた著者による一冊だ。著者は、「変な人」を積極的に採用してきたという。といっても本書は単なる採用ノウハウ本ではない。「おもしろい仕事をしたい」と考えている読者に向け、仕事をおもしろくする方法を指南してくれるものだ。「変な人」であることが重要である理由にはじまり、「変な人」の思考パターンや「変な人」のアイデアの出し方、そして「変な人」の育て方までが紹介される。
著者は、「変な人」の資質は誰しも潜在的に持っているものだという。奇人変人や天才肌でなくても、ちょっとしたコツをつかみさえすれば誰もが「変な人」になれる可能性を持っている。そして晴れて「変な人」になることができれば、毎日の仕事が格段におもしろく、楽しくなっていくだろう。ぜひあなたも「変な人」ぶりを発揮し、イノベーションを起こすことに挑戦してみてはどうだろうか。「変わってるね」というのは、大変なほめ言葉なのだ。

「普通」でいることのリスク

グーグルと日本企業の違い

グーグルと日本企業の違い

日本人は、「和をもって貴しとなす」とする民族性がある。だから若い人も「みんなと同じがいい」「ふつうがいい」と幼いころから刷り込まれてしまっているかもしれない。
しかし、それではいけない。「みんなと違っていても、いい」と考え方を変える必要がある。なぜなら今は、「ふつう」でいることのリスクのほうが格段に高いからだ。
昨今、グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックといった企業が圧倒的な強さを見せている。これらの企業が、この3、4年で世界の半分以上のビジネスを牛耳るのではないかとさえ言われているほどだ。これらの会社は、いわば「変な人」集団である。とくにグーグルは、「変な人」を採用し、彼らの遊び心を促進する社内制度を整えていることで知られている。だからこそ、革新的な事業を考案することが可能となっているのだ。
こうした状況において、「ふつうの人」集団である日本企業はもう太刀打ちできないだろう。横並びになってことを成す時代は終わろうとしている。

「変な人」が活躍できるJTの社風

一方、JTには「変な人」が多い。夢みたいな企画を実現したり、失敗ばかり繰り返しながらも1本の見事な場外ホームランを放ったりといった人がいる。そうした人たちを、JTは「やりたいようにやれ」と表だってけしかけているわけではない。しかし「変な人」に対して「どうせやめろと言っても聞かないから、やらせよう」とあきらめてくれる風土がある。
「社員のやる気にふたをしない」社風も特徴的だ。勝算がないことでも、高い確率でやらせてくれるという。
またJTでの仕事が楽しい理由のひとつに、JTの人は「後輩が好きだ」というものがある。先輩社員は無意識のうちに「変な後輩」を探している。他部門であっても、「あいつは変だ」という話を耳にすると「ちょっかい」を出しにかかる。後輩の何気ない思いつきに対して「おもしろいからやってみたら?」と何気なくサポートするのだ。そうすると、後輩もいつの間にか「やってやろう」となるという。このようにして上下横で「変な人」がつながったネットワークがつくられている。

「流れのいい人」になる

「流れのいい人」とは

著者が人材採用において重視していたのは、能力(ポテンシャル)と成長度(社風に合っているか)だ。それらに加えて、「流れのいい人」であるかどうかにも注目していた。「これからの10年は過去の10年の延長線上にある」という仮説を前提とし、中学に入学する前後からの10年、どのように生きてきたかを質問するようにしていたという。重要なのは「何をしたか」ではなく、ターニングポイントにおいてどのように意思決定をしてきたかだ。
たとえば、留学を経験した学生が2人いるとしよう。1人は、大学時代に勉強したことの幅を広げるために海外で学んだ。しかしあまりおもしろくなかったので、帰国してから別のことをやり始めた学生だ。もう1人は、未知の分野を学ぶために留学したものの、留学先で別のことに興味をひかれ、帰国してからそちらに取り組み始めた学生であるとする。この例だと、前者は「おもしろくないから別のことをした」わけで、不要なムダが多い。一方の後者は、「もっとおもしろいことを見つけて別のことをした」ため、経験が必要なムダになっている。この場合、後者のほうが「流れのいい人」と判断される。

「流れ」をよくする方法

では、どうすれば「流れのいい人」になれるのか。そのコツは、「偶然を取り入れやすくする態度」と「偶然に対しての前向きな反応」だ。不測の事態に対してもフラットに向き合えば、「おもしろいほう」を選び、いい道を切り開いていける。
日常のなかで気をつけることは5つだ。(1)頭の中を空っぽにしておく、(2)決断は「おもしろいほう」を選ぶ、(3)変化を愉しむ、(4)おもしろいことの「種」をまいておく、(5)5円玉でも拾う、である。
「5円玉でも拾う」は、もちろんたとえ話だ。人生の「流れ」は、川の流れのように、水の小さな粒子1つひとつが集まってできている。1つひとつの出来事や決断は小さくても、それを丁寧に集めれば流れができていく。5円玉のように、「大河」になるかもしれない「一滴」を無視せず、取りに行こうということだ。
流れをよくするためにはまず、流れがあるということを認識し、信じることが大切である。そうすれば日常生活のなかで流れが見えるようになるし、流れが悪くなったときにそれを変えるための行動を起こすことができる。

イノベーションを起こす「6AKW」

イノベーションを起こさずして企業が生きていくことはできないが、イノベーションを起こすことは決して簡単ではない。そこで著者は、イノベーションにつながるアイデアをひらめかせるための6つの行動として「6AKW(=6 Action Keywords )」を提唱する。
(1)不要なムダ取り:不要なムダを取り除くことによって、必要なムダが入るスペースを増やす。
(2)フレキシビリティ:前例を疑うということ。うまくいっていても変えてみよう。
(3)スピードアップ:不要なムダ取りとフレキシビリティによって、仕事のスピードアップを図る。
(4)本質を見る:スピードアップによって、必要なものだけを見る。
(5)外へ出る:足で稼ぎ、肌で感じて得た刺激こそがアイデアの源になる。
(6)遊び心:常識を疑えば、やがて斬新なアイデアに結びつく。
これらを心がけることによって、無関係のものを結びつけるイマジネーションが豊かになる。イマジネーションに知識・経験が加われば、イノベーションを起こす可能性が高まるであろう。

「変な人」がやっていること

「新しいものを試す

「変な人」は好奇心の塊である。新しいものが好きで、使ってみたい、いいものかどうかたしかめたいという気持ちを抑えることができない。良さそうなにおいがしたら買うというのが「変な人」のルールだ。
もちろん、新しければ何でも買いなさいということではない。しかし、ものを見極める目は、「買わなきゃよかった」と後悔した経験によって養われるものだ。だから若いうちは、安価で新しいものをたくさん購入することで、新しくていいものやおもしろいものに出会える確率が高くなる。
この考え方は、仕事にもあてはまる。一番大事な仕事だけでなく、おもしろそうだと感じる仕事を遊び感覚でやってみよう。新しいものとの出会いが、アイデアを生んでくれる。

「トリの目」と「アリの目」を行き来する

アイデアは、思いつくよりも実行するほうが難しいものだ。アイデアを実行まで持って行くには、「トリの目」と「アリの目」を持つ必要がある。
「トリの目」とは全体を俯瞰して眺めることで、「アリの目」とは目の前の問題を1つひとつ対処していくことを指す。アイデアを思いついたら、自分がトリになった気分で上空から見渡してみよう。すると全体像が分かり、アイデアをどのように形にしていくかという戦略を立てることができる。
次に、「アリ」に変身しよう。石ころを1つ動かすように、アイデアを少しずつ実現に近づけていくのだ。こうして「トリの目」と「アリの目」を行き来していると、アイデアを実現へと動かしていくことができるだろう。
重要なのは、「トリの目」と「アリの目」をあわせ持つことだ。空を飛んだり地上に戻ったりと、視点の切り替えを明確に意識しよう。

おもしろい人に会う

人脈づくりのため、異業種交流会に参加している人も多いだろう。決して悪いことではないが、次につながることは少ないのではないだろうか。
著者は、その種の集まりにはほとんど参加しない。偶然おもしろい人に出会ったり、「おもしろい人がいるんだけど、会ってみる?」といった誘いに乗ったりしたほうが、おもしろいことになる確率が高いと感じている。
一般的な人脈づくりの目的は、コネクションを求めたり、知り合った人から知識や力を借りたりすることだろう。著者がアドバイスするのは、人脈作りの目的を「発想刺激を受けること」に置き換えることだ。つまり、出会った人の話や思考・行動を発想刺激にして、自分の仕事を考え、実行するようにする。そうすれば、おもしろい話につながりやすいという。
「発想刺激を受けること」を人脈作りの目的に据えると、「おもしろい人ネットワーク」を築くことが必要になる。ネットワークを広げる方法は3つある。(1)偶然の出会いを「おもしろい人だったな」で終わりにせず、次回会う日をその場で決めてしまうこと、(2)互いの知っているおもしろい人を紹介し合うこと、(3)興味をひかれたものがあればそれを仕掛けた人に会ってみるなど、おもしろい人をたどってみることだ。

「変な人」を育てる

意欲的に働ける環境づくり

「変な人」がのびのびと働き活躍するには、「どのように育てるか」「どのような仕組みを整えるか」という会社側の視点が欠かせない。
世の中には「理不尽なこと」が横行している。評価が公正ではなかったり、企画や行動の良し悪しが上司の私情で決められてしまったりする。その理不尽によって、社員はやる気を失ったり、不平不満を溜めたりしてしまうものだ。そうなってしまうと、社員の気持ちは腐り、個々の力は伸びず、会社の業績は危うくなる。だから上に立つ人は、下の人が気持ちよく、意欲的に働ける環境を整えなければならない。

「目標シート」より「企みシート」

JTには派閥がない。そのため、社員1人ひとりの実績や能力を公正に評価することができる。異動は本人の適性を見て行われるし、年功序列制度はすでに廃止されている。
評価についていうと、従来、管理職は年度の初めに「目標シート」を書くことになっていた。「目標シート」で目標を設定し、それをもとにして年度末に達成度などを評価して昇給や賞与に反映させる仕組みだ。しかしこの仕組みでは、思い切った目標を書くことができなかった。目標を達成しなければ、普通の評価すらもらえないからだ。
そこで著者は、「企みシート」という新しいフォーマットを採用することにした。これは、できて当たり前の目標ではなく、達成確率が3割くらいのストレッチ目標を書くシートである。そこに掲げられる目標には夢があり、書くほうも読むほうもワクワクするという。
シートを書く頻度も変更した。従来のものでは、年に1度しか目標を書くことができなかった。1年間目標を変えることができないので、やってみてつまらない場合も途中でやめられなかったし、もっとおもしろいことを思いついたとしても先延ばしになってしまっていた。「企みシート」を導入してからは、3カ月に1回の頻度で目標を書き換えてもよいことにしたという。
著者は「企みシート」によって、職場に活気を出すことに成功した。誰しも「達成は難しいけれど、がんばれば不可能ではない」という仕事に取り組んでいるときが1番おもしろいものだ。

一読の薦め

要約には書き切れなかったが、著者は、会社は「社風が合うかどうか」が9割だと主張する。職種や会社の知名度、給与などを判断軸に置くと、会社選びを誤ってしまうという。これはなんとも説得力のある主張ではないだろうか。
求職中の人や転職すべきか悩んでいる人は、実際働いている人とコミュニケーションを取ってみて、社風と自分が合っているかどうかを考えてみてはいかがだろう。その先にはきっと大きな成長が待っているはずだ。
著者が「変な人採用」した人は現在、大いに活躍しているそうだ。本書は採用ノウハウ本ではないが、採用担当の方にもぜひおすすめしたい一冊だ。ぜひ本書を熟読し、すばらしい人材を見いだすコツを学んでいただければと思う。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 米田 靖之(よねだ やすゆき)

    1982年、日本専売公社(現JT)入社。人事部長、製品開発部長、たばこ中央研究所長を経て、2012年に執行役員 R&D責任者に就任。2015年末に退任し、現在は複数社のアドバイザーを務める。

  • flier

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「変な人」が新しい時代をつくる!『JTの変人採用』に学ぶ、仕事の面白がり方
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