Skill Up

Gunosy創業者 福島良典氏が明かす『センスのいらない経営』とは?

創業から2年半でスピード上場を果たした若き天才経営者である福島良典氏、初の著書。進化したテクノロジーの力を借りれば、カリスマ経営者のセンスがなくとも事業を成功に導けるようになった時代に、人間は何をすべきか。経営者だけでなく、キャリアについて再考し仕事の進め方をアップデートさせたい方にぜひ読んでほしい一冊。

センスのいらない経営

タイトル:センスのいらない経営

著者:福島 良典

ページ数:216ページ

出版社:総合法令出版

定価:1,512円

出版日:2018年9月19日

Book Review

「グノシー」や「ニュースパス」などの、今をときめく情報キュレーションサービス・ニュース配信アプリ。これらを開発・運営している株式会社Gunosy創業者、福島良典氏の初の著書が登場した。若くして起業し、創業から2年半でスピード上場を果たした福島氏。彼が感じてきた社会的課題や経営で大事にしてきた指針、今後求められる人材像を描ききったのが本書だ。
タイトルにある「センス」は「経験知」や「勘」を指す。進化したテクノロジーが、従来は人間のセンスに頼っていた部分まで担ってくれるようになった。それは経営においても同様で、テクノロジーの力を借りれば、カリスマ経営者のセンスがなくとも、事業を成功に導けるようになったといってもいい。
一方で現代は、人々のニーズが多様化した時代でもある。とにかく実験を重ねることでしか、潜在ニーズ=正解はつかめない。こうした時代背景もまた、経営におけるテクノロジーの活用を後押ししている。
ではこうした時代において、人はどんなスキルを磨くべきか。どのような人材をめざすべきなのか。こうした大事な問いに正面から向き合った本書は、経営者やエンジニアだけでなく、あらゆる業種・職種のビジネスパーソンにとって有用なコンパスになってくれるだろう。キャリアについて再考し、仕事の進め方をさらにアップデートさせたい方にぜひお読みいただきたい。

センスからの解放

テクノロジーの進化とセンス

テクノロジーの進化とセンス

本書は「センスのいらない経営」のエッセンスの解説から始まる。そのキーとなるのはテクノロジーである。
これまでテクノロジーは、時に暴力的にビジネスを取り巻く環境を変えてきた。今ではテクノロジーの進化と普及によって、「人間の仕事が機械に奪われる」ことまで危惧されている。この流れは個人の意思とは無関係に進化していき、誰にも止められない。
そもそもテクノロジーの本質は、その「再現性」にある。正しい設計図さえあれば、誰でも同じものを作ることができる。例えば電車や新幹線に関していえば、設計図をもとに高い性能の車両を何個も作ることが可能だ。
現代のテクノロジーはさらに進んで、かつて人間の「経験知」や「勘」、つまりセンスに頼っていた部分にまで、私たちに新たな恩恵をもたらしている。以前は人間の「経験知」や「勘」による判断に依存していた列車走行中の異常などは、テクノロジーによって、はるかに正確に検知できるようになってきた。このようにして人間は、センスからも解放されてきたのである。

人間が担う重要な仕事とは?

テクノロジーは、人間の脳の学習機能にかなり近づいてきている。機械学習の進歩はめざましい。機械は膨大なデータを与えられれば、自分で特徴を学習し、適切なアウトプットまで行えるようになった。
しかし当然、データさえ大量にあれば機械が何でもしてくれるわけではない。人間の重要な仕事は、機械に適切なデータと目的をセットすることである。また、機械がアウトプットした答えも、人間が統計的に評価する必要がある。こうしたことが人間の重要な仕事となる。

センスを必要としない経営

機械が得意とするのは、大量のデータを学んで、未知の状況に対して適切なアウトプットをすることだ。しかし、大量のデータというのは、過去のデータに他ならない。過去に学ぶべきデータがない分野では、機械はほとんど力を発揮できないのである。つまり、いくらテクノロジーに精通していても、それだけではテクノロジーを駆使した経営は難しい。
何を機械に任せ、何を人間が行うべきか。これを的確に線引きできてはじめて、経営にテクノロジーの力を活かすことが可能となる。その上で、理念や目的を掲げ、それに沿って経営判断をくだすことも、人間だからこそ担える役割であり価値である。
人間が意思決定を行い、そこで設定した目的を、機械を使って最大化できれば、利益も最大化していく。こうした循環がうまく回れば、経験や直感に優れた、いわばカリスマ経営者がいなくても、事業を成功に導けるといえるだろう。

不確実性の高い時代のゴール

潜在ニーズという正解

ここからは、不確実性の高い現代の時代考証と、経営者が担うべき役割や仕事にスポットライトを当てる。
現代は変化のスピードが速く、ライフスタイルや価値観の多様化により、人々のニーズも多様化している。こうした「不確実性の高い時代」には、潜在ニーズを知ることが重要となり、これこそが「正解」だといえる。そんな時代には、とにかく「やってみる」という実験をくり返せる「手数の多い人」が勝者になる。もちろん、手数を増やすだけではだめで、実験後には結果の検証が必要となる。
失敗した場合には原因を突き止める。そして、その問題を解決する方法を見出して、また実験をする。こうしたトライ&エラーをくり返してはじめて、潜在ニーズを掘り起こせる。

「判断」と「意思決定」は異なる

「判断」と「意思決定」は異なる。判断材料が揃っており、後はそれに基づいて機械的にどういったアクションをとるかを選択すればいいという状況は、「判断」にあたる。この「判断」では、正しいかどうかを考えるのは不毛であり、時間をかけるべきではない。時間がかかるのなら、それは判断基準が明確でないからだ。
一方で、判断材料が存在しないか、判断材料が揃うまで待てない状況で決断を下すことは「意思決定」にあたる。この「意思決定」による決断は、本質的にリスクを伴う。一方で、不確実性が高い時代に成功するためには、リスクを負ってでも「最初にやってみた人」になることが必要である。その際、経営者の役割は、「自分たちはどれだけのリスクをとれるのか」を見極めた上で「意思決定」をすることだ。
リスクというと綱渡りのようにも聞こえるが、そうではない。むしろ、綱渡りを避けるのが経営者の役割でもある。ここでも実験によるトライ&エラーが大事であり、これによって、ある程度までリスクが読めるようになる。リスクをとって飛び込む度胸と、どう転んでも会社を危機に陥れないように外堀をしっかり固める慎重さ。いずれも経営者に必要な資質である。

抽象的で揺るがないゴール設定を

意志決定をするにあたり拠り所となるのは、適切な「ゴール」だ。それは「理想の将来像」とイコールでもある。ゴールを理想のままで終わらせないためにも、ゴールまでの道のりをきちんと描かなくてはならない。
具体的には、長期的なゴールを中期的目標へ落とし込む。さらには中期的目標を短期的なマイルストーン(道標)へ、マイルストーンを「今日、何をすべきか」までブレークダウンしていくことだ。
この中期的目標やマイルストーンは、世の中の流れの変化に応じて、どんどん臨機応変に調整してもかまわない。ただしゴールだけは、どんな状況でも揺るがないものにするべきである。ゴールが不確かだと、日々の意思決定の基準がなくなってしまうためだ。
その意味で、ゴールは抽象的であることが望ましい。例えばGunosyにとってのゴールは、「テクノロジーが世の中を変えていく過程にコミットしていくこと」という、まさに抽象的な内容だ。その背景にはこんな考えがある。Gunosyはニュースや広告の領域で機械学習を活かして成長を遂げてきた。その一方で、5年後には機械学習が活きる領域自体が変わってしまう可能性もある。よって、長期的なゴールは幅広く設定しているのだ。
このゴールから逆算すれば、当面の目標は、「3年後には、こうしたニュースアプリに成長させよう」や「こういうメディア群を揃えていこう」となる。目標が明確ならば、毎日の取り組みは、「日々ユーザーを増やし、満足度を上げるためのプロダクトを改良していくこと」などと自然に決まっていく。
最初から正解を求めて考えると足が止まってしまう。だが、ゴールに向けて走り出せば、情報は集まってくる。その情報をもとに、目標やマイルストーンを考えればよく、それらを途中で変更してもよいのである。

「エンジニア的人材」

日本企業にはエンジニアがいない

最後に、これからの時代に必要とされる「エンジニア的人材」についての考察を述べていく。
まずはGunosyを含むソフトウェア業界においての話だ。日本の企業には、「スペシャリスト」はいても、「エンジニア」がほとんどいないのである。「スペシャリスト」とは、日々スキルを磨き、外から与えられた課題を解く人のことである。一方で「エンジニア」は、テクノロジーを活用し、自分で課題を見つけて自らそれを解決できる人。いわばスペシャリストが発展した人なのだ。
もちろん日本のスペシャリストの能力が低いわけでは決してない。ただ、日本企業はスペシャリスト中心で構成されており、エンジニアが活躍しているケースが少ないのが現状だ。その原因は、企業側が課題発見と解決のチャンスをスペシャリストに与えず、エンジニアの育成を怠ってきたからである。組織の中で「課題を見つける人」と「スペシャリスト」とが分かれていては、変化の速い時代には、致命的な「遅さ」につながってしまう。

エンジニア中心の組織

グーグルやアマゾン、フェイスブック。これらはエンジニアが中心となって成果を上げてきた世界的ソフトウェア企業だ。こうした企業はエンジニア中心の構造で、物事が圧倒的に速いスピードで進む。これは企業にとって明らかな強みとなる。
Gunosyもエンジニアの育成に力を注ぎ、エンジニアの力によって成長してきた企業である。徹底したデータ主義と統計主義のもとでたくさん実験し、失敗し、学習している人を評価している。またチームの長であるプロダクトオーナーも、ほとんどがエンジニア出身である。
エンジニアを事業に的確に組み込むことで組織が成長し、エンジニア自身もやりたいことをやって成長し、評価されていく。そうした状況が組織にとっての幸せにつながる。

必要とされる「エンジニア的人材」

エンジニアの能力が求められているのは、経営者やソフトウェアやIT企業に勤める人に限った話ではない。今後はどんな業界も、テクノロジー抜きには考えられなくなるからだ。
例えば、高性能な医療ロボットが登場したら、現在は医師1人ひとりの属人的な医療的知識や技術でさえ、あらゆる病院で保有できるようになる。また、あらゆる業務において、機械で自動化される領域が広がっていく。
そんな時代に必要とされるのは、自分の仕事がテクノロジーに置き換えられることを前提に、「では自分はその上で何ができるか」を考えられる人材であろう。つまり、テクノロジーを活用して自分のスキルを磨き、問題解決に役立てるられる「エンジニア的人材」である。
医師の例だと、これからはハイレベルな医療知識や治療技術よりも、患者の心に寄り添えるコミュニケーション能力のほうが重視されるかもしれない。テクノロジーが進化したからといって医師の仕事がなくなることはない。しかし、新しい価値の担い手として、エンジニア的人材がますます必要になるはずだ。

「エンジニア的人材」になるために

エンジニア的人材への一歩は、「やってみる」ことである。実験、失敗、学習をくり返すのは、「分からないからやる。だから面白い」と発想を転換できれば苦ではなくなる。もちろんそれには、相応のリスクも取らなくてはならないし、すべてがうまくいくことはまずない。ただ人間は、たいていのことは訓練すればできるようになる。
また、本当に自分が身につけるべきスキルを自ら考え、それを磨ける場に飛び出すことも必要だ。それが本当の意味で人生を豊かにしていくことでもある。

一読の薦め

今後はテクノロジーの進化に伴い、人間の仕事がどんどん機械に置き換わっていくことが容易に想像できる。そうした中で、これまで当たり前のように考えていた人間の「労働」に対する考え方が根底から覆されるかもしれないし、著者は、Gunosyの成長の軌跡と、成功の要因を語りながら、今後こうした時代の中でどんな人材をめざしていくべきかの指針をわかりやすく提示してくれる今後のキャリアを考える際に大いに参考になるだろう1988年生まれの若き創業者が書いた本であり、同年代の若手のビジネスパーソンにはとりわけおすすめしたい一冊だ。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
copyright © 2019 flier Inc. All rights reserved.

著者紹介

  • 福島 良典(ふくしま よしのり)

    1988年生まれ、愛知県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。
    大学院在学中に「グノシー」のサービスを開発し、2012年11月に株式会社Gunosyを創業、同社代表取締役に就任。2013年11月より同社代表取締役最高経営責任者(CEO)に就任。同社は創業より約2年半というスピードで東証マザーズに上場、2017年12月には東証第一部へ市場変更する。「グノシー」は2018年7月現在で2400万ダウンロードを突破。2018年8月、ブロックチェーン領域の技術開発のために新たに設立した、Gunosyの子会社である「株式会社LayerX」の代表取締役社長に就任。2012年度情報処理推進機構(IPA)「未踏スーパークリエータ」。2016年にはForbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出される。

  • flier

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