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チーム作りの参考書の決定版『THE TEAM 5つの法則』を要約

誰しもが、「自分一人ではできない何か」に取り組んでいる。にもかかわらず、チームづくりを体系的に学ぶ機会はほとんどない。ドラマや映画で当たり前のように起こる「チームの奇跡」はどうすれば再現できる? 長年経営コンサルタントとして企業の組織変革を支援してきた著者がまとめた、チーム作りの指南書の決定版。

THE TEAM 5つの法則

タイトル:THE TEAM 5つの法則

著者:麻野 耕司

ページ数:282ページ

出版社:幻冬舎

定価:1,620円

出版日:2019年4月5日

Book Review

この世の誰しもが、他者と協働し、「自分一人ではできない何か」に取り組んでいる。にもかかわらず、チームづくりを体系的に学ぶ機会はほとんどない。私たちは時折、経験則や社会通念を、誤ってチームづくりに適用してしまう。
本書の目的は、こうしたことを防ぎ、理論的かつ体系的に、チームづくりの法則を解き明かすことにある。著者の麻野耕司氏は、長年経営コンサルタントとして数多くの企業の組織変革を支援してきた。しかし、著者は告白する。自分が率いる組織人事コンサルティングチームで、クライアントに伝えている組織変革のノウハウをきちんと実践できていなかった時期があったのだと――。当時はチームの業績が下がり、会社でも白い目で見られたほど。そこから、よいチームをつくるために試行錯誤を重ねた。結果的に、売上、業績、組織の状態が劇的に改善し、退職率も大幅に低下。既存事業のV字回復と新規事業の大躍進につながった。
本書で紹介されている「チームの法則」は、さまざまな学問の知見をベースとし、外部環境やチームの状況に合わせたアプローチを読者が選べるように配慮されている。そのため応用可能性や再現性が極めて高い。まさに「チームを科学する」を体現した一冊だ。
読者が、ドラマや映画では当たり前のように起こる「チームの奇跡」を、自らのチームで起こせるようになってほしい。そんな著者の願いが結晶化された一冊だ。自分のチームに変革を起こしたい方の必読書である。

目標を設定すれば、チームが変わる

「共通の目的」がある集団は「チーム」になる

チーム作りの参考書の決定版『THE TEAM 5つの法則』を要約

まずはチームの定義を確認しよう。2人以上の人間が集まって活動するだけの集団は、「グループ」である。ここに「共通の目的」が加わって初めて「チーム」となる。
本書のチームの定義は「共通の目的を持った2人以上のメンバーがいる集団」だ。「共通の目的」があれば、企業内のチームや学校の部活はもちろん、旅行にいく友人や食事に出かける家族にも、「チームの法則」を活用できる。この法則は、Aim(目標設定)の法則、Boarding(人員選定)の法則、Communication(意思疎通)の法則、Decision(意思決定)の法則、Engagement(共感創造)の法則から構成される。本要約では、著者の提案する5つチームの法則のエッセンスを順に紹介する。

効果的な目標を設定するAimの法則

チームのパフォーマンスは目標設定に大きく左右される。チームの目標を何にするかによって、メンバーの思考や行動が変わるからだ。すると、「目標を確実に達成するチーム」がよいチームだと思うかもしれない。だが、本来大事なのは、「目標を適切に設定する」ことである。Aimの法則では、チームにおける効果的な目標設定の方法を解き明かしていく。
目標には3種類ある。メンバーが取り組むべき具体的な行動の方向性を示す「行動目標」。チームとして手に入れるべき具体的な成果を示す「成果目標」。そして、最終的に実現したい抽象的な状態・影響を表す「意義目標」だ。
ビジネスで重視される目標は、「行動目標」「成果目標」「意義目標」の順に、時代とともに変化してきた。高度経済成長期の日本企業においては、安くてよいものを速く作って届けることが共通の勝ちパターンとされた。それぞれの役職に求められる行動目標を、定められた通りに遂行するチームが評価されたのである。
しかし、ビジネス環境がより速く変化するようになると、勝ちパターンが陳腐化するのも速くなっていく。そこで、1990年代の日本では、チームごとに定量的な成果目標(MBO:Management By Objectives)を定め、期末時点の達成度で評価するようになった。成果を創出するための行動はメンバー自らが考えるようになっていった。

ビジネスのブレイクスルーを生み出す意義目標

しかし、ビジネス環境の変化は加速度を増すばかりだ。チームで設定した成果目標が、半年や一年で効果的でなくなる場合も増えてきた。そこで普及してきたのが、チームが実現すべき目的やチームの存在意義を見据えた「意義目標」に基づく、OKR(Objectives and Key Results)だ。
たとえば、あなたがビールメーカーの営業チームに所属していたとしよう。チームの成果目標は売り上げ1000万円だ。この目標しかなければ、メンバーは、量販店や飲食店に何回訪問するかといったことしか考えないかもしれない。しかし、「ビールの販売を通じて、幸せな食事の時間を届ける」という意義目標が加わるとどうか。たとえば、量販店向けにビールの美味しい飲み方を紹介するポップを提案する。飲食店に向けてビールに合う季節の料理を提案する、といったメンバーが現れるかもしれない。
意義目標は、ブレイクスルーを生み出すきっかけになる。重要なのは、意義目標をチームメンバーが意識し、自発的に行動して成果をあげることである。

状況に合わせてメンバーの「乗り降り」を決める

「誰とやるか」を考えるBoardingの法則

「何をやるか」以上に、「誰とやるか」は、チームのパフォーマンスに多大な影響を与える。Boardingの法則では、誰をチームに入れ、また誰をチームから降ろすかについて探っていく。
そもそも、チームづくりには唯一絶対の正解があるわけではない。自分のチームに合ったアプローチを思考し、選択する必要がある。チームのタイプは「環境の変化度合い」と「人材の連携度合い」の2軸の掛け算で4つに分類できる。まずは自分のチームがどのタイプにあたるかを考えなければならない。
たとえば、「環境の変化度合い」によって、チームにメンバーが加わる「入口」と、メンバーがチームから離れる「出口」のどちらにこだわった方がよいかが変わる。「環境の変化度合い」が小さければ、状況に応じてメンバーを入れ替える必要はない。そのため、メンバー選びは入口にこだわった方がよい。厳選した固定のメンバーで長く活動することが、パフォーマンスを向上させるからだ。
一方、「環境の変化度合い」が大きければ、むしろ入口のハードルを多少下げ、メンバー選びは出口にこだわった方がよい。環境の変化に応じて、その都度パフォーマンスを上げるメンバーに残ってもらい、そうでないメンバーに去ってもらう。そのような形でメンバーを構成した方が、パフォーマンスが高まるのだ。
では「人材の連携度合い」についてはどうか。連携度合いが小さければ、似たタイプの能力を持ったメンバーを集めた方がよい。このタイプのチームは、ひとつひとつの活動をひとりひとりのメンバーが自己完結して取り組む。そのため、その活動に最適化された同じような能力を持ったメンバーでそろえた方が合理的といえる。
逆に「人材の連携度合い」が大きい状態とは、ひとつの活動を複数のメンバーと分担して取り組むということだ。そのため、異なるタイプの能力を持ったメンバーを集め、それぞれの特徴を生かして仕事をした方がチーム全体の成果が大きくなる。

必要なメンバーを見極め、自ら集める

かつての日本では、「環境の変化度合い」も「人材の連携度合い」も小さいチームが多かった。だが現在は、どちらの度合いも大きいチームが増えてきている。つまり、チームに多様なメンバーを集め、メンバーを流動化することが求められているといえる。
高度に発達したネットワーク社会では、以前よりも簡単に外部からチームメンバーを集められるようになった。チームメンバーは自ら探すもの。この意識をもてるかどうかで、チームづくりは大きく変わる。その際には、自分のチームにどのようなメンバーが必要なのか、明確な指針を持っているかどうかが、チームづくりの明暗を分ける。

効果的なコミュニケーションを生み出すCommunicationの法則

コミュニケーションにまつわる誤解とは?

チームで高いパフォーマンスを生み出すためには、メンバー同士の連携を深めることが必要となる。社会全体の流動化・多様化に伴い、異なる前提を持ったメンバーがともに活動することになった現代、コミュニケーションの重要性はますます高まっている。効果的なコミュニケーションを生み出すCommunicationの法則を紹介しよう。
まず、「チームにはコミュニケーションが多ければ多い方がよい」というのは、多くの人が抱く誤解である。メンバー同士の連携をすべてコミュニケーションで担保するには、膨大なコミュニケーションコストがかかるからだ。戦略的なコミュニケーションのためには、適切にルールを設計しなければならない。

コミュニケーションの「ルール設定」のポイント

コミュニケーションのルールを考えるうえでも、先述した「環境の変化度合い」「人材の連携度合い」という尺度が有効である。一般的に、環境の変化度合いが大きいチームは、臨機応変な対応が問われるため、ルールが少ない方がよい。一方、環境の変化度合いが小さいチームは、ルールが多くてもそれを守りやすいといえる。
また、ほとんど連携の必要がないならば、各メンバーが自分で判断して活動する方が効果的な場合もある。これに対し、連携度合いが大きい場合は、ルールを細かく決めなければコミュニケーションコストがかかりすぎる可能性がある。
ではルールを設定する際に必要な項目は何か。具体的には、誰がどこまで裁量権をもつのか。ひとりひとりがどこまで責任を負うのか。何をチームメンバーの成果やプロセスとして評価するのか。どのくらいの頻度で評価を確認するのか、である。これらを設定しておくとよい。

自らの道を切り開くチームをつくる

意思決定の精度を上げるDecisionの法則

私たちは常に意思決定を迫られている。チームのパフォーマンスは要所要所での意思決定にも影響を受ける。Decisionの法則では、迅速かつ適切な意思決定について解き明かしていく。
チームの意思決定には「独裁」「多数決」「合議」がある。どの意思決定を選ぶかによって、「メンバーの納得感の得やすさ」と「意思決定にかかる長さ」が変わる。よって、議論する前に、どの意思決定の方法を用いるかを決めることが重要だ。
環境変化のスピードが速くなった現在、意思決定に時間がかかることが、ビジネスにとって致命傷になる場合もある。そのため、意思決定者はメンバーの反発を恐れずに、迅速かつ大胆に決断しなければならない。同時に、メンバーはその意思決定の意図を理解し、一度決定がされたら、チームの決断をメンバー全員で正解にしていくという気概が求められる。
意思決定に対する適切なスタンスを、チームメンバー全員で共有しておくと、意思決定の精度が飛躍的に向上する。さらには、進むべき道を自分たちで切り開いていけるチームに変化できるはずだ。

チームのモチベーションを上げるEngagementの法則

Engagementの法則では、チームに対する貢献意欲の高め方を解き明かす。どんなに素晴らしいゴール設定やルール設計ができたとしても、それを動かすメンバーのモチベーションなくして成果は上がらない。どんなプロフェッショナルであろうと、モチベーションに左右される。人事の関連用語では、チームに貢献しようとするモチベーションを、「Engagement=エンゲージメント」と呼ぶ。
日本では、モチベーションは「気合」や「根性」と混同されることもある。しかし、「気合をいれろ!」という呼びかけは、効果的ではない。
エンゲージメントを高めるために4Pという考え方がある。それは、Philosophy(理念・方針)、Profession(活動・成長)、People(人材、風土)、Privilege(待遇・特権)の4つを指す。
人はどのチームに参加するかを決める際、この4Pのいずれかに魅力を感じ、そのチームを選んでいる。チームのエンゲージメントを高めるには、4Pのうちどれを一番の魅力にするかを絞り込み、その魅力を高めていく必要がある。そのうえで、絞り込んだPをエンゲージメントの源泉とするメンバーを集めるとよい。
現在は、目に見えにくい感情報酬の影響力が高まっている。企業はこの点を意識し、チームの中に共感を創造し続ける仕組みをつくらなければならない。

チームの法則で組織を変える

日本では働き方改革の影響もあり、多くの企業が組織改革に関心を抱いている。チームが変われば組織も変わる。真の組織改革を実現するには、現場で働く社員ひとりひとりが、自らのチームを変え、自律的に組織を変えていく必要がある。組織は会社や人事から与えられるものではない。よい組織とは、この国で働くひとりひとりの手によってつくり上げていくものなのだ。

一読の薦め

本書は、Method(法則)、Episode(具体的事例)、Action Checklist(チェックリスト)、学術的背景から構成されており、きわめて実践志向だ。
また、著者が自らのチームの法則を用いてチームを変革した様子が、克明に描かれている。さらには、チームを組むことでパフォーマンスが下がる場合など、チームの落とし穴にも言及されており、至れり尽くせりといえる。自分のチームに自らの手で変革をもたらしたいと考える人にとって、具体的な行動のイメージを持つために役立つことだろう。ぜひ本書を通読し、自分のチームで実践してみていただきたい。メンバーそれぞれの本領を発揮し、パフォーマンスを出し続けるチームへと生まれ変われるはずだ。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
copyright © 2019 flier Inc. All rights reserved.

著者紹介

  • 麻野 耕司(あさの こうじ)

    モチベーションエンジニア。
    株式会社リンクアンドモチベーション取締役。
    株式会社ヴォーカーズ取締役副社長。
    1979年兵庫県生まれ。2003年慶應義塾大学法学部卒業。同年株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。気鋭のコンサルタントとして、名だたる成長企業の組織変革を手掛ける。2013年、成長ベンチャー企業向け投資事業立ち上げ。全く新しい投資スタイルで複数の投資先を上場に導く。2016年国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」立ち上げ。国内HRTechの牽引役として注目を集める。2018年同社取締役に着任。同年株式会社ヴォーカーズ取締役副社長を兼任。国内最大級の社員クチコミサイト「Vorkers」を展開。著書に「すべての組織は変えられる~好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか~」(PHP研究所)。

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