『ブランド人』になるには? 田端信太郎の正統派ビジネス書を要約!

会社員ながら「並の野球選手以上の収入を得ているプロサラリーマン」として話題を集めた田端信太郎氏が、自らの体験をもとに「ブランド人」になるためのルールを徹底解説!厳しい言葉を並べながらも、中身は意外なほどに「正統派なビジネスの教科書」である本書。自分のブランド力を上げたいビジネスパーソン必見の一冊だ。

ブランド人になれ!

タイトル:ブランド人になれ!

著者:田端 信太郎

ページ数:229ページ

出版社:幻冬舎

定価:1,620円

出版日:2018年7月5日

 

Book Review

昨今の「自分を仕事にする」ことがもてはやされる流れを見て、時代に置いていかれているように感じ、モヤモヤしているビジネスパーソンは多いはずだ。そして、どうすれば自分のブランド力を上げられるのかと悩んでいるのではないだろうか。
本書は、そんな悩みに答えをくれる。著者の田端信太郎氏は、まさに自分の名前で生きている“ブランド人”だ。学生のころからウェブ制作の仕事ですでに月収40万~50万円を稼ぎ出し、新卒の就職活動ではマイクロソフトやソフトバンクなど、様々な会社から内定を得る。そして「新卒でないと入社しにくそう」という理由からNTTデータを選び、その後はリクルート、ライブドア、LINEと話題企業を渡り歩いてきた。現在はZOZOの社員だが、“プロサラリーマン”として「並の野球選手以上の収入を得ている」という。
では田端氏は、ブランド人になるために何をしてきたのか。それは愚直な努力である。ひたすら量をこなし、自信がなくても手を挙げてチャンスをつかみ取り、SNSには決して愚痴を書き込まない。プライベートで理不尽を覚えることがあろうと、それを仕事に昇華させている。
本書のサブタイトル「会社の奴隷解放宣言」を含め、一見過激なフレーズが並んでいるようにも思えるかもしれない。だが通読すれば、意外なほどに正統派のビジネス書であることがわかるだろう。厳しい言葉を並べながらも読者にやさしく寄り添ってくれる一冊だ。

君は誰を笑顔にしたか?

汗水に価値はない

『ブランド人になれ!~会社の奴隷解放宣言~』を要約

ブランド人を目指すにあたって、まず考えてほしいことがある。それは、ブランド人とは仕事人であるということ、そして「仕事とは何なのか」ということだ。
ラーメン店に入ると、カップラーメンより高いのにカップラーメン以下の味しかしない1杯にがっかりさせられることがある。たしかにラーメンやのオヤジは早起きして汗水たらしてスープを仕込んでいるのだろう。しかし彼のラーメンは客を満足させていない。むしろ「二度とこの店には来るものか」という憤りさえかき立てる。さて、このオヤジは果たして「仕事をしている」と言えるだろうか。
仕事のあるべき姿とは何か。それは、「お客様に喜びを与えること」「他人の役に立つこと」である。汗水やつらさ、苦しさそれ自体に価値はない。お客様を喜ばせることだけがブランド人の仕事である。どんなに苦労しようと、誰も喜ばせることができなければそれは仕事ではない。お客様を喜ばせ、人の心を動かして初めて、君の仕事が世の中に価値を生み出したことになる。
一度、「鳥の目」になって自分と自分の仕事とお客様との関係を俯瞰してみよう。君の仕事の本当のお客様は誰か? 他人や社会とどのような関わりをもっているか? どうすれば君の仕事がお客様、ひいては社会を盛りたてることができるか? どんな大義や志があるか? そして夜寝る前に、今日1日の自分の仕事が誰を喜ばせたかを考えよう。ブランド人への道は、お客様とともに歩むものである。

給料の価値は自分で決めろ

あなたはいくら給料が欲しいだろうか。この質問に答えられないならば、ブランド人にはなれない。年収300万円でいいのか、それとも5000万円稼ぎたいのか。自分の価値をはっきり数字で表そう。
著者は面接をするとき、「あなたはいくら給料がほしいのか」そして「あなたはなぜその金額に値するのか」と尋ねることがある。正解はない。「母親には苦労をかけた分、たまにはうまいものを食わせてやりたい。だから月給30万~40万円は欲しい」でもいいし、「今は自分の能力や人脈を増やしたいから、無給でいい。その代わり大きなプロジェクトに関わらせてほしい」でもいい。「趣味のサーフィンを第一優先にしたいので、波の調子がいいときはいつでも休みたい。手取りは15万円程度でいい」という生き方もありだろう。「自分の値段」を言語化したうえで、それに見合った労働力を提供し、適正な給料をもらうことが重要だ。
カネの話にこだわらない人は、自分という商品を売ることを放棄している。「自分の売り値」は自分で決めろ。

とにかく量をこなせ

ブランド人になりたいなら、まずひたすら量をこなすことだ。仕事の質を高めるためには、その前に圧倒的な量をやりきる時間が必要である。
世界で最も有名なバンド、ビートルズにも下積み時代があった。メジャーデビューする前、イギリスからドイツに巡業に行き、ライブハウスで毎晩8時間、ときには12時間に及ぶステージを2年ほど続けていたという。このときの下積みがビートルズの土台をつくっている。
著者も下積みを経験している。新卒で入社したNTTデータでは、メディア企画営業という部署で大量の仕事をこなした。日中はパートナーとの打ち合わせに走り回り、帰社後会議に出て、夜になってやっとデスクワークに取りかかれるという毎日だった。馬車馬のように働き、会社のソファで寝ることも珍しくなかったという。2年で退社したが、この経験はビジネスパーソンとして貴重な時間だったと振り返っている。
下積み期間は労働ではなく学習のための時間である。地道に着実に基礎を積み上げれば、次のフェイズが見えてくる。ブランド人としての基礎体力をつくるため、とにかく量をこなせ。

己の名をあげろ

名乗りをあげろ

ブランド人への道は「名乗り」をあげることから始まる。武士と同じだ。ハッタリでも勢いでもいい。チャンスがあれば、勇気を出して誰よりも先に手を挙げよう。
2001年初春、著者はNTTデータからリクルートへ転職した。直後、運悪くネットバブルが崩壊してしまったが、それでもくじけなかった。そして早速、新規事業を立ち上げるための社内コンペにエントリーした。もちろんこのとき、起業経験があったわけでもビジネスプランを作ることに長けていたわけでもない。ただ好奇心とワクワク感に突き動かされていた。
3年連続で入賞し、3年目に「R25」の前身となるプロジェクトでその年の最高賞を受賞する。しかしプロジェクト実現のための苦労は大変なものであった。著者が書いた事業計画書は社内でさんざんディスられたし、事業体制の構築にはたいへんな労力がかかった。
「はい!」と名乗りをあげてから考え始めても遅くはない。恥をかいても失うものは決して多くないのだから、まずは名乗りをあげることだ。

サラリーマンこそギャンブルせよ

ブランド人になるには、必ずしもフリーランスである必要はない。著者のようにサラリーマンであってもいい。
著者が「R25」を立ち上げたのは27~28歳のころだ。年間予算規模は約20億円。企画がコケれば多額の損失をもたらすことになる。著者は「ここまで自信たっぷりに企画を通したのだから、このプロジェクトが失敗したらもう会社にはいられないな」と思ったという。だがそこで気づいたことがある。それは、億単位の損失を出したところで、せいぜい会社をクビになるくらいだということだ。命を失うわけではない。次の職場を探せばいいだけだ。これがフリーランスなら話は違ってくる。失敗してしまえば、自分ですべての責任を負わなければならない。
サラリーマンこそギャンブルし放題だ。失敗しても、次の日からまた出社すればいい。せっかく組織という強固な後ろ盾があるのだから、特権を利用してどんどんギャンブルしよう。

同僚とメシを食べるな

君は、上司に連れられてゾロゾロとランチに行っていないだろうか。飲み会で上司の自慢話に愛想笑いしていないだろうか。ブランド人なら、「嫌われる勇気」を発揮してキッパリと断ろう。
毎日一緒にいる同僚とメシを食べても、脳みそに刺激はない。同僚から敢えて離れ、異質な人間と交わるからこそ、イノベーションとヒラメキが刺激される。誘われたからと上司や同僚とばかりメシを食べている人間は、ビジネスパーソンとして終わっている。
今月、社内の人とランチをしたり、飲みに行ったりした回数を数えてみよう。社外の人とメシを食べた回数とどちらが多いだろうか? 前者が後者を上回っているのではないだろうか。「誰とメシを食べているか」が君のブランド力を表す。

発信者たれ

フォロワーを最大化せよ

ブランド人であれば、SNSのアカウントを1つも作っていないなんてもってのほかだ。SNSに入り浸り、本業を忘れるくらいでちょうどいい。
SNSが登場するまでは、名刺や学歴があなたを証明するものだった。だがそれらは今や、SNSに比べれば何の役にも立たないし、君がブランド人であるかどうかを測る基準にはならない。肩書で仕事をしていたら、定年以降を生きていくことはできない。
著者がSNSで紹介した本は売れるし、過激な発言をすれば炎上する。SNSは毒にも薬にもなるわけだが、フォロワーは「持ち運び可能な資産」である。フォロワーの数はあなた個人の資産であり、会社でいう資本金や時価総額、社会からの評価資本のようなものだと考えればいいだろう。
会社を移籍するとき、会社にもたらした利益を持ち去ることはできない。一方、SNSのフォロワーは違う。職種が変わろうが、会社を移ろうが、どこまでもついてきてくれる存在だ。お金は失敗すれば一瞬でなくなるが、SNSのフォロワーは消えてなくなることはない。フォロワーこそ誰にも奪えない資本である。フォロワーの最大化を目指すべきだ。

ジャイアンのように大いに歌え

ジャイアンは歌が下手クソだ。それでも空き地に仲間を集め、今日もリサイタルを開く。「下手な歌を歌うなんて恥ずかしい」「もっとうまくなってからにしよう」なんて1ミリも考えていない。そんなことを言っていると、一生かかってもやりたいことをやれないままだ。
10年前、お笑い人間は地下劇場で小さなライブを重ねるしかなかった。そうしてテレビ番組のディレクターやプロデューサーの目に留まるのを待っていたのだ。マンガや小説、音楽も同じだ。出版社やレコード会社に持ちこみをし、認められなければ発表の場を与えられることはなかった。
今は違う。下手クソだろうが、無名であろうが、マンガや小説はブログにアップできるし、音楽やショートコントはユーチューブに上げられる。ジャイアンのようにどんどん投稿し、さっさと恥をかいてしまえばいい。恥をかくことを恐れていてはブランド人にはなれない。

真っ当な人間であれ

「ツッコマレビリティ」を磨け

著者がLINEの上級執行役員だったころ、新入社員は著者に対し、世代的にも立場的にも隔たりを感じていたようだった。著者はそれを自覚しており、意識的に彼らとの距離を縮めていく努力をしていたという。
その努力の結果を端的にあらわした事例を紹介しよう。あるとき著者は、若手がプレゼンしているとき、最前列で居眠りをしてしまった。後日、件の若手から声をかけられた。「この前、ガン寝してましたよね! プレゼンが下手くそだと言われているようで凹みましたよ!」と。
軽くイジり返した著者だったが、若手から苦言を呈されたことをとてもうれしく感じた。それは著者に「ツッコマレビリティ」(弱みをツッコまれる人徳)があり、部下との距離が近い証拠だからだ。ツッコマレビリティのない上司が部下から信頼を集めることは困難だ。

ダサいプライドは捨てろ

相手の信頼を勝ち取るためには正直さが必要だ。正直さとは、「パンツを脱げるか」ということである。
著者は、LINE時代に面接したある学生のことを今も覚えている。彼はパッと見は冴えないタイプだった。30分ほど面接をしたが、落とすつもりでファイルを閉じた。するとそれを見た彼がガッと立ち上がった。そして「僕はきっと落ちたと思います。でも僕はLINEに入りたい気持ちだけは、誰にも負けてません!」と語り始めたのだという。彼はパンツを脱ぎ、プライドを捨てて勝負をかけたのだ。著者はその姿を見て、正直さを感じ、信頼できる奴だと評価した。
いざという場面でプライドを捨てられない奴を信頼することはできない。ダサいプライドはサッサと捨てるべきだ。

一読の薦め

一見無茶なことを言っているように見えなくもないのだが、どれもこれも著者の経験に基づいたアドバイスであることに驚かされる。まさに時代の寵児とも言うべき活躍で名をとどろかせる著者だが、そのかげには努力があり、失敗があるのだ。
要約には含めなかった箇所にも、「何も知らない金魚であれ」「結婚・子育てによって理不尽を学べ」「さあ、ヤジと拍手を集めるプロレスラーになれ」など、印象深い言葉が並ぶ。ぜひ本書を通読し、著者の経験から生み出された言葉の数々を味わうことをおすすめする。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 田端 信太郎(たばた しんたろう)

    ZOZO コミュニケーションデザイン室長。
    1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年、ライブドア入社、livedoorニュースを統括。2010年からコンデナスト・デジタルでVOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員として法人ビジネスを担当し、2018年2月末に同社を退社。3月から現職。

  • flier

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『ブランド人になれ!~会社の奴隷解放宣言~』を要約
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