「パソコンよりも紙」「メールは短く」–今すぐできる仕事を速くする簡単スゴ技75
仕事が速い人が普段どのようなやり方で仕事に取り組んでいるのか、その「見えざるコツ」を詰め込んだ1冊を要約しました。「仕事の速い人」を見て、彼らのように仕事が速くできたらと思いつつ、どこかで諦めている――そんな人に読んでもらいたい内容です。
タイトル:仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?
著者:木部 智之
ページ数:223ページ
出版社:KADOKAWA
定価: 1,404円(税込)
出版日:2016年05月18日
Book Review
周りにいる「仕事の速い人」を見て、彼らのように仕事が速くできたらと思いつつ、どこかで諦めている――そんな人に、特に読んでもらいたい一冊である。
本書はその名のとおり、仕事が速い人が普段どのようなやり方で仕事に取り組んでいるのか、その「見えざるコツ」を顕在化させ、ノウハウとしてまとめたものだ。そのコツは多岐に渡る。いかに初動を速めるかといったところから、1つ1つの作業をスピードアップさせるテクニック、さらには解決策を導くための思考のフレームワークといった根本的なところまで、あらゆる角度から「速い仕事」をするための秘訣を明らかにしていく。
個人の仕事をスピードアップさせるための方法にくわえ、チームでの仕事を速くするための方策について述べられているのも素晴らしい。仕事のスピード感は一人ひとり違うものだが、それも踏まえてリーダーは全体をコントロールし、ゴールへと導いていかなければならない。そんなとき、どうすれば相手から速いレスポンスをもらえるか? そこにも「仕事が速い人」が実践しているコツがある。
物事を整理し、わかりやすく伝え、正確にインプット、アウトプットをする。そしてそれが結果的に、シャープで素早い問題解決を可能にする。本書で紹介されているのは、表層的なテクニックにとどまらない。本質的に仕事が「できる」社会人になるためにはどうすればいいのか、本書を読めばその答えがある。
仕事が速いということの本当の意味
確実さも速さのうち
「仕事が速い」というのは、作業スピードが速いということだけを意味しない。無駄のない、確実な仕事をすることも、仕事を速く終わらせるために必要なことである。いくら速くても、雑にやってしまえば、結局やり直しになってしまう。多少遠まわりでも、確実に仕上げたほうが、結果的には速く終わる。
とはいえ、確実に仕事を終わらせることと、完璧をめざすこととは少し異なる。仕事では常に100%を求められるわけではない。例えば、取引先にプレゼンするための資料と、社内共有のためのメモレベルの資料に、同じクオリティを求める必要はない。
真っ先にするべきことは、自分が求められているクオリティのレベルを理解することだ。そして、そこからさらに少しだけ、プラスアルファの要素を足す。そうすれば、相手から喜ばれるアウトプットの完成である。
重要なのは「初動」と段取り
仕事にはたいてい期限がある。人間は本来怠けものであり、期限のない仕事にはいつまでも取り掛からないものだ。だからこそ、自分で早めに期限を設定することが大事になる。まずはすべての仕事に期限を設定しよう。
とはいえ、期限を守れなければ結局意味がない。期限を守るためには、「初動」が絶対的に重要になる。仕事が発生したら、すぐに取り掛かることを信条としよう。「まとまった時間がとれたら」「もう少しじっくり考えてから」と考えているうちは、なかなかスタートがきれない。とにかく始めてみて、やりながら軌道修正すればよい。
仕事の段取りを組む際は、「1番時間のかかる作業は何か」を考え、「それを中心に順番を組み立てる」とよい。待ち時間が発生する作業があるなら、そっちから先に取り組み、待っている間にほかの作業をすれば、トータルでかかる時間も短くなる。
もしどうしても期限前に仕上がらない場合は、未確認事項や数字には仮の情報を入れておき、「要最終確認」などとしておけばひとまずの体裁は整う。あとは、追って情報を補完していけばよい。
それでも、さまざまな事情で期限に間に合わなかったときは、その後ずるずると遅れてしまわないよう、次の期限をすぐに決めて、必ずその期限を守るように心がけるべきである。そうでなければ信頼を失い、あなたの立場は悲惨なものになってしまうだろう。
「チリツモ」で差がつく
メールに時間をかけるな
仕事を速くするためには、日々のメモ、メール、パソコンでの資料づくりなど、ひとつひとつの作業のスピードアップが欠かせない。1つ1つ見ればわずかな時間の違いでも、積み重ねていけば大きな差となってあらわれてくる。
日々のメールは、なるべく時間をかけずに処理すべきである。文章はなるべく簡潔に、スクロールせず読める長さが基本だ。読んだメールは一度で処理しきるようにして、未着手のものを残さないようにする。自動振分けの活用や、宛先自動入力、ショートカットなど、メールソフトのテクニックをマスターしておけば、毎日のメール対応にかかる時間は格段に短くなるはずだ。
パソコンよりも紙が先
「資料を作ろうとするとき、まずパソコンに向かう」という人は要注意である。資料の構成やデータ、プレゼンや説得の流れなどを考えるときは、パソコンよりも紙のほうが向いているからだ。あれこれ考えたり直したりするのには、紙が最適なのである。できれば上司への確認も、紙の段階でしておきたい。そうすれば、あとからやり直しになったとき、データを大幅に修正する手間も省ける。
いざパソコンに向かって資料をつくる段階にきたら、「型」をいくつか持っておくと便利だ。以前自分で作ったもの、人の資料でわかりやすかったもの、時には社内のプリンタから出てくる資料をちらりと拝見し、参考にできそうだと思ったものは保管しておき、言葉や数字を変えて活用するようにするとよい。
また、Excelでの作業の際は、マウス操作の無駄を省くため、カーソル移動がなるべくいらない表の配置にする、文頭・文末への移動の方法を覚える、よく使うショートカットキーを覚える、Altボタンを活用する、関数や数式をいくつか押さえておくなど、さまざまな工夫を心がけるべきである。最初は時間がかかるかもしれないが、いったん覚えてしまえば、それだけで大幅な時間短縮になる。
「仕事の速いチーム」をどう作るか
「待ち時間」を極力減らす
チームで進める仕事を速くするには、極力「待ち時間」を減らすことがポイントだ。仕上がり待ち、返事待ちなど、関わる人が多くなればなるほど待ち時間は増えてしまう。また、リーダーが決断を先延ばししたり、指示が不明確だったりする場合にも、部下の仕事は滞る。だからこそ、リーダーは「即断即決」を心がけ、メールにはすべて明確に返信をしなければならない。会議中に「持ち帰り」となりそうな案件が生まれても、会議の時間内で関係者にメールをして問い合わせるなど、なるべくその時間中に解決するようにすることで、問題解決のスピードは飛躍的に速くなる。
メンバーからのレスポンスを速くさせることも工夫の1つである。例えば、チームメンバーに、メールを受け取ったら24時間以内に何らかの返信をするというルールを浸透させれば、それだけでチームの業務効率は高まる。
可視化して伝える
仕事を速く進めるためには、ダラダラと長く説明することは厳禁だ。企画のサマリーはA4で1枚以内におさまるように心がけよう。
また、メンバーに仕事を依頼するときは、図解や単語を使って説明した方が、相手にも自分と同じ認識を持ってもらいやすい。説明する相手の理解度に合わせて、使う用語や説明の仕方を変えるなど、伝わりやすい方法を選択するべきである。
部下に仕事を任せるときの極意
部下に仕事を任せるときは、期限の設定に気をつけよう。人は、期間があればあるだけ目一杯使ってしまうものだ。それを理解したうえで期限をうまく設定し、仕事をコントロールするのもリーダーの役割だ。任せる相手によっては、依頼したら期限の日まで任せっぱなしにせず、途中で進捗を確認しよう。無駄なやり直しを事前に防ぐことで、結果的にスピードアップにつながる。
もし途中で問題が発生しても、リーダーがその案件を引き取ってはならない。もちろんフォローは必要だが、あくまで部下本人に考えさせ、権限を委ねるべきだ。リーダーは責任をとることに徹しよう。
会議を有効に進める
チームで仕事をするうえで、会議は欠かせないものである。しかし無駄な時間になりやすいのもこの会議である。会議を有用なものにするためには、参加者を必要最低限に絞り、会議のゴールと終了時刻をはじめに明確にしておくことが大切だ。
もし途中で議論がずれてきたら、ホワイトボードにまとめながら進めると、参加者の目線が揃いやすい。会議には参加人数分のコストがかかっていることを踏まえて、準備不足であれば会議をやらないくらいの気持ちで臨むのがよいだろう。
「時間を作る」には
物理的な環境を整える
1日は24時間しかない。どうしても時間が足りないときは、積極的に時間を作りだすことを心がけよう。ついダラダラしてしまうなら、物理的に誘惑をシャットアウトするべきである。スマホではなくガラケーを使う、機内モードなどを使ってオフラインにする、ファミレスなどすぐに行けて邪魔の入らない集中できる場所を確保しておくなど、さまざまな工夫が考えられる。電車での通勤時間も、作業がしやすい位置取りをし、すぐに作業に取り掛かれるよう、パソコンやタブレット、メモや筆記用具など、必要な道具をあらかじめ用意しておくことが肝要だ。
それでも時間が足りないときは、睡眠や娯楽の時間を削るのも1つの手ではある。しかし、長期間に渡って休みがとれないと、心身にストレスがかかりすぎてしまう。睡眠や娯楽の削る場合は、あらかじめ期間を決めるなどして、うまくバランスをとらなければならない。
「忙しい」は禁句である
いろいろな業務を抱えていると、どうしても忙しいと感じてしまう瞬間がある。それでも、「忙しい」という言葉は使うべきではない。忙しいと思うと本当に心に余裕がなくなってしまうし、そもそも忙しいと口にすることは、自分の限界を表明しているようなものだからだ。
本当にやるべきことが多いときでも、「忙しいのでできない」と考えるのではなく、「こうすればできる」とポジティブに考えるべきである。時間がないときこそ、書類やメールはその日のうちに処理しきる、仕事は確実に一回で仕上げるなど、丁寧に積み重ねていくとよい。
思考の「型」をもとう
事実を正しくインプットする
考えるスピードというのは、頭のよさとはまた別のものである。大切なのは、まず「事実を正しくインプットする」ことだ。ただの意見や憶測を、あたかも事実かのようにとらえて思い違いをすると、結局振り出しに戻ってしまう。事実をとらえるのはそう簡単なことではないが、見る範囲や視野を広げたり、見る立場や視点を変えたりしながら、物事を立体的にとらえていけば、事実はおのずとあぶり出されていく。
データを見るときの心得
人が集計したデータを見るときには、そのプロセスに間違いがないか確認しておかないと、大きなミスにつながりかねない。かといって、集計の過程を逐一確認するのは非現実的だ。
正しいデータかどうか確認するためには、「インプットデータは何か」「どのようなアプローチをとったか」「アウトプットをどう評価しているか」の3点を押さえ、担当者に確認するとよい。数字を読む際も、絶対数だけを見て判断するのではなく、母数や以前の数字と比べてどうなのか、相対的に判断するように心がける必要がある。
アウトプットには「フレームワーク」が必要
事実を正しくインプットできたら、次はアウトプットの段階だ。アウトプットをする際、ある程度の「思考のフレームワーク」をもっておくと、考えを整理しやすい。仕事を速くするための思考のフレームワークは数多くあるが、そのなかでも最小の時間と資源で、最大の成果を生み出すために必須なのが、MECEとピラミッド構造である。
MECEは「モレなく、ダブりなく」全体像を把握することである。特にビジネスの場では、「モレなく」というところを意識するよう努めよう。
MECEで全体像を把握したら、今度はピラミッド構造を使って物事を分類し、階層ごとに整理する。情報を整理することで、どの仕事を重点的にするべきなのか、「選択と集中」が適切にできるようになる。
※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介
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木部 智之(きべ ともゆき)
日本IBMシニア・プロジェクト・マネージャー。
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネージャーを経験。 その後、2006年のプロジェクトでフィリピン人メンバーと一緒に仕事をする機会を得る。英語はもちろん、日本語も含めていくつもの言語を巧みに操り、かつ仕事も優秀な彼らに衝撃を受け、自分はグローバルに通用する人材なのかと自問自答をした。それ以来、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求してきた。 2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。現在もそのプロジェクトを担当しており、日本と大連で数百人のチームをリードしている。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。 ブログ「外資系社員が実践している成果の出る仕事術」 http://vekitomo-0.hatenablog.jp/ -
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