Skill Up

資格は仕事の成果につながらない?-私たちのキャリア入門第12回

豊富に存在する資格制度。しかし、その資格が仕事の能力に結びついているかというと疑問に思わずにはいられません。単なる知識だけでは成果を上げられないビジネスシーンにおいて、必要とされるポイントについて考えていきましょう。

資格は仕事の成果につながらない?-私たちのキャリア入門第12回

高橋俊介

高橋俊介
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ-に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。

日本の教育はなぜ仕事に生かされないのか?

そもそも、なぜ日本の教育や資格制度は仕事の成果に結びつかないのでしょうか。経済協力開発機構による国際的な生徒の学習到達度調査によると、日本の学力は高いとされています。しかし、「この勉強は面白いか」「将来役立つと思うか」という質問に対しては「面白くない」「役立たない」という回答が目立つのだそうです。

TOEICなどがわかりやすい例ですが、高い点数を出したからといって、ビジネスシーンで英語を使いこなせるとは限りません。ビジネスシーンにおいては、正しい文法よりも自分の考えを堂々と伝えられることの方が必要とされるからです。

日本の教育は、暗記型による正解主義です。実力が伴わなくとも、テクニックさえあればテストで高成績を修めることができてしまいます。よって、仕事の成果に結びつかない資格制度が溢れる結果となったのでしょう。

三つのタイプで見る専門性

実際にビジネスの場で使える専門性とはどのようなものなのでしょうか。三つのタイプに分けて考えてみましょう。

1.経験的専門性
読んで字のごとく、仕事の経験を通じて物事に詳しくなっていくことを指します。「この道何年」という人のことですね。しかし、既存の運営は継続はできても変革と創造はできないため、この専門性だけでは不十分なのです。

2.体系的専門性
学校教育や独学によって身につけた体系的理論的な専門性を指します。「なぜそうなるのか」という根拠が分かるため、経験にプラスすることで応用力に結びついていくのです。例えば、なぜ京都の出汁は昆布ベースなのに、東京はカツオベースなのか?出汁の取り方は知っていても、なぜか、という答えを知らなければ応用が利きませんよね。この問いの答えは、水の硬度。京都に比べて東京の方が水の硬度が高いため、昆布の表面に膜が張ってしまい出汁が出にくくなるのです。この科学的根拠を知っていれば、東京でもミネラルウォーターを用いることで京都の味が再現できる、という応用が利くのです。

3.先端的専門性
その分野の動向に常に目を光らせ、先端的な人と交流を通じて変革と想像について学ぶことで身につけた専門性を指します。要するに、「理論だけではなく、実際には今どこで誰が何をしているのか」を知っているということです。近年話題の働き方改革を例に挙げるとすれば、なぜ安倍政権がこの改革を行っているのか、深く関わっているのは誰なのかを知っている必要があります。さらに、実際に働き方改革で成果を挙げている会社に話しを聞きに行くなどして、専門性に磨きをかけていくのです。

専門性で成果を出すために意識したいこと

上記で挙げた専門性を成果に結びつけていくためには、いつかのコツがあります。一つは、「半歩先取りする」こと。これからの時代で何が必要となるのか、ブームを先取りして勉強することです。次に「専門性をアピールする」こと。自身が何について学んでいるのか周囲にアピールしなければ、生かすチャンスは与えられませんからね。そして最後に「キャリアの背骨となる専門性を持つ」こと。この連載で以前もお伝えしましたが、変化の激しい時代において、これは非常に重要です。目の前の仕事で精一杯になってしまうと、短絡的な損得勘定だけで勉強や仕事をしてしまいます。しかし、たとえ今は必要でなくとも「自分として蓄積していきたい専門性」を持って追及していきましょう。

背骨を見つけ、専門性の組み合わせで強くする

背骨を見つけ、専門性の組み合わせで強くする

よく、背骨とはどうやって見つけるのかと質問されることがあります。私を例にお話しすると、エンジニアとしてキャリアをスタートさせたので、最初は人材マネジメントの分野とは全く関係がありませんでした。しかし、ある時大学時代に自分が読んでいた本を見返した時、そこには労働の社会学や、働くとは何か、といった本が混ざっていたのです。理系だったにも関わらず、こんな本を熱心に読んでいたんだということを思い返しました。これが、コンサルティングファームに転職して、今のキャリアに行き着くひとつのきっかけとなったのです。

ぜひ、自分自身を振り返って、生涯追い続けてみたいテーマを探してみてください。そのテーマが、あなたの背骨となる専門性となり、キャリアに深みを出してくれるでしょう。

これからの時代、一つの専門性だけではリスクが高いというのも事実です。例えば観光学に知見を持っているのであれば、社会学、経済学、経営学、地理学、都市計画学などの学問分野からいくつか選んで学んでおくとよいでしょう。専門性を成果に結びつけるためには、幅広い専門分野の裏にある基礎理論や普遍的思考をマスターし、いつでも引き出せるようにしておく必要があります。関係ないと思うようなことでも、どんどん引き出しに入れてください。それが、いつかのアイデアにつながることでしょう。

【連載】私たちのキャリア入門

会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。

本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。

企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)

※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。

この記事に興味がある人へのおすすめ

資格は仕事の成果につながらない?-私たちのキャリア入門第12回
この記事が気に入ったらいいねしよう!