2018.02.23
長く活躍し続けるために必要な力-私たちのキャリア入門第11回
高い専門性を持っているのがスペシャリスト、その専門性を生かして成果を出すのがプロフェッショナル。これからの時代においてはプロフェッショナルであることが求められると前回お話ししました。では、成果を出すためにはどのような能力が必要なのでしょうか?今回は、プロフェッショナルであり続けるための必要条件について考えていきましょう。

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【プロフィール】

■慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋俊介
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ?に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。
サッカー選手に見る「プロの条件」
Jリーグの第五代チェアマンである村井満氏は、元々は人事のプロとして活躍してきた実績を持ちます。彼は、プロサッカー選手として10年経っても世界で活躍し続けている選手と、わずか数年で引退することとなった選手の違いを分析すべく、加盟する全てのチームにアンケート調査を実施しました。長く活躍する選手も、数年で引退する選手も、最初のうちは技術面に大差はありません。大切なのは、とある三つの能力の有無だったといいます。
一つ目が「相手の考えを理解する傾聴力」。監督やチームメイトの話を良く聞き、自分が何を求められているのかを理解する力です。二つ目が「自身を客観的に見つめて自己変容する能力」。こだわりを捨てて変容していくことですね。そして最後、三つ目が「自己をアピールする主張力」。自分が持っている能力をいかにアピールできるか、ということです。
長いプロ人生の間には、不慮の怪我による休場や監督の交代など、自分ではどうしようもない理不尽なことが多々起こります。監督が変わったことで試合に出場できなくなるケースもあるでしょう。ですが、そこでふてくされてしまう選手に先はありません。監督が求めていることを理解し、監督が描く戦略の中に入るために自分自身を変えていく。その上で、待っているだけではなく自分の能力をアピールしていくのです。つまりは、理不尽な出来事さえも乗り越えて変容し続けられるだろうか。これがプロとして長期的に活躍するためのポイントとなります。
考えてみると、ビジネスパーソンにも同じことがいえるとは思いませんか?上司が変わったり、会社の状況が変わったり、様々な変化があるでしょう。その時に、自分にはどのような変化が求められているのかを客観的に考えられるかどうか。変容し、自己アピールをできるかどうかが、ビジネスパーソンの基礎といえるのではないかと思います。
では、変化の激しい現代において、専門性で成果を上げていくプロフェッショナルを目指すためには、他にはどのような能力が必要なのでしょうか?ここでも三つ挙げて考えていきたいと思います。
1. What構築能力
仕事には四つのサイクルがあります。自分たちは何をすべきかという課題設定を行う「What」、課題の解決方法を考える「How」、Howで定めたことをひたすら実行する「Do」、検証を行って次にすべきことを決める「Check」の四つです。
この際に、専門性が発揮できるのはHowの部分だと考える方が多いかと思いますが、重要なのはHowの前のWhatを考える能力なのです。Whatの部分を考えるのは、社長や役員といった一握りの経営陣であることが大半です。ですが、プロフェッショナルとして仕事をしていくためには、最初のWhatの部分から自分で生み出せなければなりません。
WhatとHowの違いを言葉で説明するとしたら、「Howは経験・知識と論理的思考で導き出せるが、正解のないWhatは知識だけでは生み出せない」ということです。料理を作るシーンを例に、詳しく説明していきます。お客さまをどんな料理でもてなすかを考えるのがWhatです。予算や時間、自身の技術等の成約の中でお客さまに喜んでもらえる料理を考えるわけですが、そこに正解はありません。作るものが決まってしまえば、買わなければならないものや必要な下ごしらえがわかりますよね。経験や知識で正解を導き出せる、Howがこの部分なのです。
ビジネスシーンでのWhatは何かというと、身近な例としてはソリューションが該当するのではないでしょうか。クライアントに提案すべきソリューションは、上司に聞いたところで答えが出るものではありません。自分のクライアントのことは、自分自身が一番よく知っているはずですからね。では、どうすれば最適な提案ができるのか?まずは、クライアントの話をよく聞き、観察することからはじめましょう。そこから自分なりにソリューションを考えて、提案すれば何らかの答えが出ます。そこから学んで、次に生かす。この繰り返しで身に付く習慣的能力こそがWhat構築能力だと思います。まずは小さなWhatを考えるところからはじめて、How、Do、Checkのサイクルを回す習慣をつけていきましょう。
2.伝える力
プロフェッショナルに必要な能力の二つ目が「伝える力」です。ビジネスにおいて、自分一人でできることはたかが知れています。良いアイデアがあったとしても、人に説明し、納得してもらわなければなりません。だからこそプロフェッショナルは「難しいことをわかりやすく説明できる」必要があるのです。
これがスペシャリストの場合、自分の専門性こそが存在価値になるため、さほど難しくないことであったとしても、より難しく説明してしまう傾向にあります。なぜ伝えるのか?その目的を考えてみてください。知識を披露するためではなく、相手に動いてもらうためである、と考えれば、伝えることの大切さがわかるはずです。
また、自分が考えた順序ではなく、相手の考える順序で話すことが大切なポイントの一つです。優秀なコンサルタントであったとしても、アイデアが思いつくのは直感であることが少なくありません。それを思いついたままに話すのではなく、相手が理解していく順番にそって説明する必要があります。
さらに、事例やたとえ話を交えながら説明するのも重要です。日頃からストックをたくさん持っておいて、相手に合わせて使えると良いですね。
そして最後に、相手に「いかがですか?」「質問はありますか?」と投げかけることで質問を引き出し、双方向コミュニケーションを取る。お互いの理解を深めていくことができますし、この時相手から出てきた質問によって、自分の伝える力がどれほどのものだったのか振り返ることができます。的外れな質問が出てきたとしたら、自分の伝える力が足りなかったということですね。
3.巻き込む力
プロフェッショナルに必要な能力の三つ目が「巻き込む力」です。時には部署の壁を乗り越えて協力してもらわなければならないことがあるでしょう。上下関係がなく、あなたの命令を聞く必要のない人にも協力してもらうために必要なのは、多様な人たちに対する感受性だと私は考えます。
例えば、話す速度や行動が早い人は、待たされることを嫌います。このような人は、相手に対しても決断を急かす傾向がありますが、切迫性のない人にとっては急かされることがストレスになるかもしれません。自分の思うがままに伝えるのではなく、相手の価値観に合わせた言葉で説明する必要がある。そのために、相手に対する感受性が必要となるのです。
実は、ワーキングマザー経験のある女性には、巻き込む力に長けている人が多いように思います。理由はいたってシンプル。働きながら育児をするためには、様々な人の助けが必要になるからです。遅い時間に仕事が入った場合には、夫やお姑さん、同僚の協力を得なければなりませんよね。仕事と育児を両立させるために、人を巻き込む力が鍛えられていくのです。
今回はプロフェッショナルに必要な能力として「What構築能力」「伝える力」「巻き込む力」について説明してきました。これらを意識的に磨くことで、長期的に活躍できるプロフェッショナルを目指していきましょう。
【連載】私たちのキャリア入門
会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。
本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。
企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)
この記事の内容は、動画で詳しく見ることができます
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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