2018.02.18
成長できる会社の見極め方-私たちのキャリア入門第6回
就職活動や転職の際に頭を悩ませる企業選び。最初に入社した会社で定年まで勤め上げる「就社」ではなく、今は職で選ぶ「就職」という考え方が強まっています。とはいえ、自分の得意分野を生かすにしても、どの業界のどの企業で働くかによって、その後の仕事人生は大きく変わっていきますよね。つまり、自分が成長できる会社を選ぶことも非常に重要なのです。今回は、社員が力を発揮できる組織の特徴について考えていきましょう。

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【プロフィール】

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋俊介
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ?に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。
企業風土と業績に関連性はあるか?
統計的に十分な規模ではないものの、かつて企業風土と会社の業績の相関関係についての調査が行われたことがあります。すると、企業風土を意図的に築き上げてきた会社は、自然に風土が出来上がっていった会社と比べて、業績が高い傾向が見られました。
そのことからも、会社を選ぶ際には企業風土が自身に合っているか否かを重視した方がよいでしょう。この時、その企業風土が自然発生的に完成されたものでなく、経営陣が意図的に作ってきたものであるかどうかに注意してください。
成長予感が持てる会社に根付く二つの風土
みなさんは、今の会社で今後も成長していけると感じていますか?もしも答えがノーでああれば、今が転職へと踏み出す節目かもしれません。では、成長できる会社にはどのような企業風土があるのでしょうか。大きく分けて二つの要素があると私は考えます。
1.上司・先輩が部下・後輩を育てる意識が強い
2.考えさせる文化がある
新卒で社会に出た時、社会人としての適応力を育ててくれるのは、周囲の上司や先輩であることが大半です。新人の周りに集まって育てようと手を貸してくれる会社には、成長予感が持てますよね。
ですが、面倒見が良い会社であれば、必ずしも成長できるとは限りません。上司・先輩のやり方にとらわれて、小さくまとまってしまう可能性もあります。そこで大切なのが、もう一つの要素である「考えさせる文化」です。
教える、教えられるという関係性が上から下へという一方向に固定されていない組織には、考えさせる文化が根付いています。みんなで学び合う仕組みがある会社で働くことで互いが刺激され、感受性や応用力が育っていくのです。
企業風土を見極めるのに役立つ質問
「上司・先輩が部下・後輩を育てる意識」と「考えさせる文化」が会社にあるかどうか、確かめる手段があります。社員に「あなたが今の成長を実現できたのは、誰のおかげだと思いますか」と質問するのです。育てる意識の強い会社の場合は、すぐに上司や先輩の名前が挙がります。しかし、考えさせる文化の強い場合には、携わったプロジェクトや経験が上げられることが大半です。
どちらか一方があればよいのではありません。どんなに自分が成長できるプロジェクトがあったとしても、周囲の支えが全くなければ、独学力に長けた人しか成長できませんよね?よって、試練となるプロジェクトと、支えてくれる上司・先輩、両方の存在があることが、成長するために理想的な場と言えるでしょう。両方がある会社であれば、先ほどの質問に対して「このプロジェクトがきっかけで成長できたけど、その時に一緒だった上司と試行錯誤したことが成長の要因です」といった答えが返ってくるはずです。
もう一つの大切な風土「キャリア自律風土」
実はもう一つ、成長できる会社が多く持つ特徴があります。それが「キャリア自律風土が強い」ということです。キャリア自律風土が弱い会社とは、社員のキャリアを支配する代わりに絶対的な雇用を約束してきた会社のことを指します。一方、どんな状況になっても自らキャリアを切り開く力を持った人が集まっているのが、キャリア自律風土の強い会社と言えます。「会社としてこういったことに取り組んだ方がよい」といった社員からの声を会社が受け止めて、「やってみなさい」と任せる。このようなやりとりが頻繁に行われる会社です。
自分の力を発揮できる組織の見極め方
「上司・先輩が部下・後輩を育てる意識が強い」「考えさせる文化がある」「キャリア自律風土が強い」。成長予感が持てる会社について、ここまで三つの要素を挙げてきました。では、自分が本来持っている力を十分発揮できるかどうか、成果を残せるかどうか、という観点から見た時にどのような組織が望ましいのか、もう少し考えていきましょう。
その場合も、やはり自律性の高さが重要となります。かつての日本に多かったピラミッド型の組織の場合、経営陣や本社の中枢部門といったごく一握りのエリートたちが、何をすべきかという「What」の部分を決めます。その後、中間管理職が「What」をどのように行うか「How」へと分解して部下に伝える。結果、一般社員たちは「Do」のみに集中することとなります。
比べて、自律性の高い組織の場合は、Whatの部分から自ら考えることを求められます。自らWhat、How、Do、そしてCheckまでのサイクルを回していくことで力が発揮できますし、自信にもつながっていくはずです。
注意したい「組織内の権威傾斜」
会社の風土に関して、会社内の力関係を見極める時の注意点が二つあります。一つ目は「権威傾斜の強さ」です。権威傾斜が強い組織とは、社長や役員といった経営層の権威が強い組織のことです。社長室への入室が許されているのは一部の上層部の社員のみ、といった会社が存在しますが、権威傾斜の強い組織の最たる例でしょう。このような組織の場合は、社長からプロジェクトの進捗確認があったとしても、上層部の社員では現場の状況が分からないため答えられない。そのため、現場社員に長々とブリーフィングを受けてから、再度社長の元に説明に行くのです。
こうなると、権威が権限となり、風通しの悪い組織となってしまいます。発言の自由もなくなってしまいますよね。その会社の権威傾斜については、何度か訪問するうちに分かってきますし、業界に詳しい人であれば知っているはずなので聞いてみるとよいでしょう。
時代の流れに適応できる「サッカー型組織」
そしてもう一つの注意点が、その会社の「序列と役割」がどうなっているかという点です。序列というのは、社長、役員、部長……といったもののこと。役割とは、担当する仕事のことだと考えていただければと思います。従来の日本の会社の場合、年功序列であることが多いので序列は固定的ですが、役割は非常に柔軟です。序列がひっくり返ることはなくても、「それは私の仕事ではありません」と否定することはできない文化があるため、チームで助け合いながら仕事を進めていきます。しかし、かつての欧米型組織は真逆です。序列は柔軟ですが、役割は固定。なので、誰かが会社を休むと仕事が進まなくなってしまうのです。
序列と役職、どちらが固定的であっても、今の時代には合いません。時代の流れに適応できるのは、「サッカー型組織」だと私は考えます。サッカーにはディフェンスやオフェンスといった役割はありますが、ディフェンスがシュートしても構いませんよね。ましてやどちらが偉いか、といった序列はありません。それぞれが役割を持ちつつも、柔軟に対応していくような組織が、サッカー型組織です。
このような組織の場合、どんな時代であっても組織として力を発揮することができます。また、社員たちの変化適応能力も高まっていくはずです。
さて、あなたが今働いている会社や転職したいと思っている会社は、成長予感が持てる会社、あなたが活躍できる会社でしょうか?ぜひ今一度考えてみてください。
【連載】私たちのキャリア入門
会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。
本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。
企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)
この記事の内容は、動画で詳しく見ることができます
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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