2018.02.25
経験を積むだけでは成長しない-私たちのキャリア入門第13回
本連載も残すところあと3回となりました。以降は「良い仕事人生」、さらには「幸せな人生」を送るためにはどうしたらいいのかを考えていきたいと思います。vol.1でお話しした通り、幸せなキャリアは習慣から生まれます。そこで今回は、「経験から深く学ぶ習慣」について考察していきましょう。

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【プロフィール】

■慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋俊介
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ?に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。
経験から学べる人が持つ習慣とは
人は誰しも様々な経験をしますが、その経験から何を学ぶかは人によって異なります。一つの経験から多くを学ぶ人とそうでない人の違いは、一体どこにあるのでしょうか。
一つの経験から多くを学んでいる人は、「なぜそれをやるのか」いう目的、背景、根拠を自分の中で腹落ちさせています。これができないと、「それをやればよい」という表面的な理解で終わってしまうので、想定外の自体が起こった時に対処できないのです。
つまり、最初に身につけたい習慣は「深く考えること」であると言えますね。この習慣は、目の前の仕事に関係のない分野を勉強していくことで身につけることができます。早急に習得する必要のない分野だからこそ、じっくりと理解を深めていくことができるのです。深く学び、考える習慣が身につけば、仕事面の経験からも学び、考えられるようになるはずですよ。
チャンクアップ・ダウン思考で、深く学ぶ
経験を深い学びに変えていくために必要な思考法をご紹介します。チャンクアップ・チャンクダウン思考です。具体事例と普遍的な考えを往復しながら思考を深めていく方法を指します。
例えば、抽象的な課題を一つ一つの具体例に分割して考えていくのがチャンクダウン、細かな事象をまとめて全体像を見渡すのがチャンクアップです。これは、問題点を明確にする時に活用することができます。相手が抽象的なことを言ってきたら「具体的にはどういうことですか?」とチャンクダウンする。逆に細かな事例がたくさん出てきたら「まとめると、どのような課題があるのでしょうか?」とチャンクアップする。ディスカッションでも、あるいは自問自答でも、チャンクアップとチャンクダウンを繰り返すとよいでしょう。そうすることで普遍的な学びへとつながっていくのです。
さらに言うと、学びを深めるためには自分の経験だけでは足りません。周囲の人と経験を共有することが大切です。例えばキャビンアテンダントは、フライトが終わった後に各自の経験を共有する時間を設けているといいます。事例を共有し、「つまり、こういうことが大事なんだね」とまとめていくことで、考える習慣が根付き、より普遍的な学びに変えていくことができるのです。
自論の芽はどう育てるか
経験から深く学ぶことに加えて、自論を形成することも意識していきましょう。自論を持つのは簡単ではありませんが、常に問題意識を持って自論形成に努めることで、ある日大事なことに気がつくはず。それは、自分の考え方の傾向や影響を受けやすい論説など、人生においてとても大切なことです。
自論形成には、「コメンテーターごっこ」が役立ちます。テレビを見ながら、コメンテーターの席に座ったつもりになって、ニュースに対する意見を求められたらどう答えるか考える癖をつけるのです。問題意識を持っていなければ、自論は形成できません。物事について深く考える習慣が身に付けば、レベルの高い自論が形成されていきます。
学ばない人の六つの典型
では、経験から深く学ぶことができない人の特徴とは何でしょうか?六つの例を挙げてご説明します。
1.自分で考えずに答えをほしがる
「これはどうすればよいですか?」と人に聞く癖がある人は、思考のトレーニングが足りていない可能性があります。
2.仮説なしに仕事に取りかかる
行動力がある人が陥りがちな落とし穴です。行動力があるのは良いことですが、上手くいった理由や失敗した理由を「頑張ったから」「努力が足りなかったから」などで片付けてしまう傾向にあるため、仮説・検証のサイクルが成立しないのです。
3.成功しても失敗しても検証しない
失敗しても「誰の成果」という責任追及になってしまう人がたまにいますよね。再発防止のためには、責任ではなく原因を追及する必要があります。また、成功を検証する人は少ないかもしれませんが、同じ成功を再現するためにも、成功パターンの検証も大切なのです。
4.精神論でやる気の問題に収れんされる
成功も失敗も、やる気の有無を理由にしようとするタイプです。2と似ていますが、やる気だけでは仕事にならないですよね。
5.ごく少数の具体的経験を過度に一般化して、ゆがんだ自論を作る
6.自身の仮説に合致した事実のみ記憶し、そうでないことは忘れる
例えば、血液型がA型の人は几帳面だとよくいわれますが、果たして本当にそうでしょうか?料理好きの男性が増えたとはいえ、後片付けまできちんとする男性がいないというのは事実でしょうか?偏った事例のみにとらわれて、別の側面を忘れている可能性が高いように思います。
変革と創造は独学から生まれる
学びに関する補足をするとしたら、今は独学が重要な時代だということです。正解や考え方を教えてもらったり、育ててもらっているだけでは変革や創造にはつながらないと私は思います。どんなに詳しく教わったとしても、教えてくれた人を超えることは難しい。だからこそ自分で学ぶことが大切なのです。
有名な経営コンサルタントである大前研一さんをご存じでしょうか?大前さんは、独学で変革や創造を起こした典型です。大前さんは、経営に関する専門書は一切読まず、独学で勉強を重ねることで成功を掴み取っています。人から学ぶことももちろん大切ですが、プロフェッショナルとして働くのであれば、独学を重ね、変革や創造の担い手を目指していってください。
【連載】私たちのキャリア入門
会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。
本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。
企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)
この記事の内容は、動画で詳しく見ることができます
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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