2018.02.15
キャリアに役立つ人間関係-私たちのキャリア入門第3回
前回は、良いキャリアを引き寄せるために心がけたい三つの習慣をご紹介しました。その中から今回は「ネットワーキング行動」について、具体的にはどのような人間関係を築くべきなのか考えていきましょう。

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【プロフィール】

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 高橋俊介
キャリア開発の研究で第一人者として知られる。東京大学を卒業後、日本国有鉄道に入社。1984年、米プリンストン大学工学部修士課程を修了し、マッキンゼーアンドカンパニ?に入社。89年には世界有数の人事組織コンサルティング会社ワイアットの日本法人(現ウイリス・タワーズワトソン)に転職し、93年より同社代表取締役社長に就任。97年に退任、独立後も、人事コンサルティングや講演活動を続けている。
「関係性資本」がチャンスを生む
みなさんは、関係性資本という言葉をご存じでしょうか?これは社会心理学の専門用語です。世の中にはインフラのような資本もあれば、人そのものを資本と捉える人的資本、資金を指す財務資本など、様々な資本があります。その中の一つとして、人と人との関係性を資本として捉えることを指した言葉が「関係性資本」です。
どんなに個人の能力が高かったとしても、周囲との関係性が悪ければ高いパフォーマンスは発揮できません。人と人との関係性は、信頼が蓄積されて構築されていくものです。つまり関係性資本は、日々の行動の積み重ねで作り上げていく必要があるのです。
社会心理学の世界では、関係性資本は「閉じている関係性」と「開いている関係性」の二つに分けて考えられます。それぞれについてご説明していきます。
■閉じている関係性
同質性が高い少人数で築かれた密な関係性を指します。例えば最近の高校生は、7、8人の仲間でLINEのグループを作って、1日に何十回もやり取りをするといいます。まさにこれが閉じている関係性です。
このような関係性の中で磨かれるものは二つ。あの人は自分のことをどう思っているんだろうと察知する「人間関係感知能力」と、何かをもらったり助けられたりした際にお返しをしようという「互酬性の規範」です。密な関係性だからこそ、人間関係をスムーズにするためのアンテナが高くなるのです。
■開いている関係性
一方で、同質性が低いのが開いている関係性の特徴です。職種や年齢が異なる大勢の人とのつながりになります。人数が多いため密な関係性は築きづらく、連絡を取り合う頻度も低くなる。そこで磨かれるのが「人間性感知能力」です。少ない関わりの中で信頼関係を築くために、言葉や表情からその人の人間性を見抜く能力のことですね。
閉じた関係性の方で挙げたた互酬性に関しても、開いた関係性では意味合いが変わってきます。閉じた関係性の場合は「恩返し」、開いた関係性の場合は「恩送り」になるのです。「もらった恩はその相手に直接返す」という考えの恩返しに対して、恩送りは「もらった恩は、いつか誰かを助けることで返す」という考えですね。
人生やキャリアのチャンスは、開いた関係性からやってくることが大半です。ですが、災害などのひどい状況の場合には、閉じた関係性の中に築かれた強い絆に支えられるはずです。なので、どちらの関係性も大切にしていきたいですね。
思い浮かべた「5人」から人間関係のクセが分かる
では、あなたを取りまく人間関係はどうなっているでしょうか?実験をしてみましょう。
まず、あなたが仕事をする上で重要だと思う5人を思い浮かべてください。単に仕事で関わるだけでなく、悩んだ時に相談する相手だったり、ヒントをくれる相手が望ましいです。必ずしも上司や先輩、同僚でなくても、友人や家族でも構いません。その5人は、相互に知り合いでしょうか?知り合いであれば、その人同士を線でつなぎます。相互に線を引くと、最大10本の線が引けるはずです。この線の本数がポイントです。
10本全て引けた場合は、全員がお互いに知っているということになります。最もネットワーク密度が高く、関係性が閉じている場合です。逆に1本も線が引けなかった人は、開いた関係性を複数持っている人ですね。
どちらが良くてどちらが悪い、という話ではありません。自分の人間関係の築き方の傾向を計る指標にしていただければと思います。年齢に偏りはないか、社内・社外どちらの人とのつながりが強いか、なども含めて考えるとより詳しい傾向が分かりますよ。
社員が持つ人間関係や、その築き方の傾向によって、組織の性質も変化します。開いた関係性を作るのが得意な社員が多い場合、各々が外に向かってアンテナを立てているため、組織としても変化に強くなっていきます。逆に、内側ばかりを向いてしまう社員が集まって、外に向かってアンテナを立てている人を「異端児」としてしまう組織もあります。すると、自己都合ばかりを優先する組織になってしまう。あまり良くないケースですね。
「ブランディング」で掴み取る、キャリアを切り開くチャンス
人間関係を築いていくために大切にしたいことの一つに、「ブランディング」があります。会社であっても個人であっても「人からどう思われているか」が気になるもの。ですが、まずは「人からどう思われたいか」を意識することが重要です。
「こう思われたい」という理想を挙げればきりがありませんが、完璧な人間はいません。何事も選択と集中なのです。自身がどう思われたいか、と考えるには「自分らしさが発揮できている時」をイメージするとよいでしょう。まずは過去を振り返ってみてください。仕事人生だけでなく、学生時代も含めて構いません。調子が良かったのは何に取り組んでいる時だったか。逆にどん底だったのはいつか。それぞれの原因を分析していくことで「自分らしさ」が見えてくるのです。
自分らしさを理解して発信できるようになると、周囲の人から抱かれるイメージも変化していきます。「あの人はこういう強みを持った人」というイメージを持ってもらうことで、新たなチャンスを与えてくれたりするのです。組織や社会における自身の立ち位置を意識して努力する習慣が、自分らしいキャリアに導く「想定外のチャンス」を得る確立を高めるのです。
【連載】私たちのキャリア入門
会社任せにしていてもキャリアを築くことができた一昔前とは異なり、「キャリアは自ら切り開いていくものである」という認識が一般的になった現代。変化の激しいこの時代で、いかにして自分らしいキャリアを築いていくかが重要です。
本連載では、キャリア学の権威である慶應義塾大学大学院・特任教授の高橋俊介氏が、20年近く行ってきた調査に基づいた「キャリアを切り開くヒント」を解説します。想定外の事態に直面しても、焦らず、自分らしく働き続けられる力を身につけていきましょう。
企画・撮影協力/ ビジネス・ブレークスルー(BBT)
この記事の内容は、動画で詳しく見ることができます
※このコンテンツは、2016年にtypeメンバーズパークに掲載された動画を新たに記事化したものです。
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