『サムゲタン(参鶏湯)』という料理をご存知でしょうか?1羽の鶏肉の中にもち米を詰め、高麗人参をはじめとする漢方とニンニクなどで煮詰める、韓国のスープ料理の一種です。栄養価が高い健康的なメニューで、疲労回復に絶大な効果があります。韓国の大手新聞社中央日報が『夏によく食べるスタミナ食』をインターネットで調べたところ、実に58.3%の人が、この『サムゲタン』を食べると答えたほど韓国では人気食です。今この料理を巡ってweb上では大きな騒動となっています。
事の発端となったのはライトノベルを原作としたアニメ番組。原作では『シンプルなお粥』が出てくる場面で、お粥が『サムゲタン』に変更されていたのです。原作があるもののアニメやドラマは時として原作どおりにならず、賛否両論を巻き起こします。しかし今回の『サムゲタン騒動』は違う視点からの騒動でした。
ステルスマーケティングが疑われる事例
このアニメが放送される少し前から、芸能人などのブログで『サムゲタン』を食べた、という内容の記事が多く掲載されていました。そこにきてこのアニメでの改変。誰かが『サムゲタン』という料理を流行らせたいのではないのか?と疑念を抱かせてしまいました。ステルスマーケティング、いわゆる『ステマ』にアニメ番組が加担したのではないか?というのが騒動が大きくなった原因です。
マーケティングに求められる『モラル』
ステルスマーケティングとは、誰かから依頼を受けながらも、中立を装って商品を宣伝、口コミ発信をすること。サクラやヤラセもこれに該当します。何かを流行させるには、やはり口コミの効果というのは絶大。以前は街中などでまさに『口コミ』で仕掛けられてきたこの手法が、今はネットにその場を移しています。誰でも情報を発信できる時代になり、より広く、早く効果を生み出せるようになりました。
しかしこの手法には批判も強くあり、アメリカではクチコミマーケティングを推進する業界団体『WOMMA(Word of Mouth Marketing Association)』が『倫理基準』を設けています。企業との関係を明確にする『関係の正直さ』、何を言うかを企業は強制しないという『意見の正直さ』、身元を隠したり、あいまいな表現をしないという『身元の正直さ』という3点。企業はモラルを守ってマーケティングしてください、という内容です。
日本ではこのような『倫理基準』は提唱されておらず、今回の騒動がステルスマーケティングだったのかは分かりません。しかし消費者に誤解を招くようなことは、今回のように批判や悪評を大きくしてしまうということが見えた、今回の騒動でした。