7割の人が異業種、異職種に興味あり
景気の良し悪しに関わらず、転職への興味・関心が強いことは『不景気になると転職への興味は無くなるのか?』の記事で取り上げた通りです。転職を模索している方は、従来培ってきたスキルやキャリアを生かすことを前提に考えていることが多いでしょう。その一方、キャリアデザインセンターが若手ビジネスパーソンに行った、『異業種、異職種への転職』調査(キャリアデザインレポート2012 次のような転職に挑戦してみたいですか。)では、「してみたい」「まあまあしてみたい」を合わせて7割を超えました。
グラフ:キャリアデザインレポート2012 異業種・異職種等への転職調査
新しい仕事に就くメリット、デメリット
厚生労働省の2011年の雇用動向調査で、流動性を示すデータが04年以降過去最低だったように、昨今の景気後退にあって実際の転職には慎重になっている傾向があります。しかも今までのキャリアをリセットして、異業種や異職種にチャレンジするのはリスクが付き物です。それでも、7割の人が前向きなのは「今のスキルのままでは生き残れない」という危機感の証しとも言えます。
資格取得志向の高まりはその典型で、中小企業診断士の2011年の1次試験の受験者数は1万5千人。これは01年の約2倍でした。大手電機メーカーが大規模なリストラに踏み切る一方で、10年前には存在しなかったソーシャルゲーム会社が目覚ましい業績を上げるなど産業動向は大きく変化しています。企業の採用動向が厳しくても生き残るためにスキルを磨いたり、あるいは経済や社会の情勢変化に合わせたキャリア構築を志したりする人が増えるのは自然な流れです。
しかし異業種や異職種への転職は場合によってはゼロからのリスタートになります。特に30代以上のビジネスパーソンにとっては、一定期間身に着けたスキルが全く生かせず、適応できなくなるリスクを考慮しなければいけません。異業種転職でかつてよく引き合いに出された事例が、米国のプロバスケットボールのマイケル・ジョーダン元選手の『転職』です。
1984年から2003年までNBAで活躍。10度の得点王、5度の年間MVPに輝き、五輪でも米代表として金メダルを2度母国に捧げたスーパースターです。実は、彼は1度、野球への転向を志したことがあり、実際に2A(日本の三軍に相当)チームと契約しました。しかし『バスケの神様』も野球では思わしい成績を残せず、大リーグ昇格への夢は1年で断念。これは異業種を視野に入れる一般のビジネスパーソンにとっても決して他人事ではありません。
外資やベンチャーの転職には慎重
異業種や異職種への意欲は高い反面、外資系企業やベンチャー企業、あるいは国外勤務の転職となると、ハードルが高くなるようです。外資への転職を「してみたい」「まあまあしてみたい」はおよそ半分。国外勤務は約43%、ベンチャーへの転身は4割を切ります。
外資や国外での勤務は、語学力の高さが求められます。TOEIC Report on Test-Takers Worldwide (2005)によると日本のTOEIC平均スコアは457。このスコアは26カ国中24位です。日本は先進国でも特にスコアが低いことに代表されるように、ビジネススキルに見合った語学力を備えた人が少ないことが影響しているのでしょう。しかも国内と異なる企業文化への適応力も必要とされます。企業文化という点ではベンチャーも同様です。意思決定のスピードが大企業よりも迅速なところに醍醐味を感じる人もいますが、社内体制が整っていない分、自分で自分の役回りを決めなければならないことに戸惑う人もよくいます。退職金がなかったり、賞与の支給が乏しかったりすることも珍しくありません。
異業種や異職種への挑戦。あるいは外資系やベンチャーへの転職は環境が大きく変わります。慎重かつ大胆に考えていきたいものです。