離職率の高い会社にいる氷河期世代の人は要注意
また、会社の雰囲気や働き方など、キャリアノイローゼに陥りやすい環境もある。
「仕事がハードで、やり手も多くいる職場です。このような会社は離職率も高い。すると、元同僚が年収の高い会社に転職したり、起業したり、あるいは失敗したりといった話を聞きます。では、自分はどうか?どんな可能性があるか?と、どうしても考えてしまうのです。
一方、安定した大手企業や財団系の会社にも、キャリアノイローゼの人は意外に多くいます。仕事はルーティン的なぬるま湯で、周りに転職したり、キャリアを考える人はいない……といったケースです。しかし、大学時代の友人は外資に転職してバリバリ働いている。それでこのままでいいのか?というフラストレーションを抱えてしまうのです」(酒井氏)
多忙な会社でも、比較的安定した会社でも、深く悩んでしまう人にはその人固有の問題もある。
「高学歴で、いわゆる優等生タイプが多いですね。優等生だけに完璧主義。さらに、論理思考で勝負しようとする。このような人は、裏技や根回しは姑息だと思い、何事も正攻法で突破しようとします。すると、やる気と能力は高いのに、思ったより周りに評価されず、悩んでしまうのです」(小松氏)
「優等生タイプは、一つの答えを見つけるのが得意で、あるべき論へのこだわりが染み付いている。しかし、社会に出ると答えはたくさんあります。それで不安になってしまうのです。また、自己の評価軸が他人にある人もなりやすい。評価軸が外にあると、どうしてもさまざまな人に影響され、ノイローゼになりやすい」
(所さん)
学生時代、勉強に注力し、まわりを気にするタイプは要注意だ。
適職・理想の会社は決して1つではない
では、キャリアノイローゼにかからないための予防法とは何か。最も症例が重い『やりたいことが分らない適職探しタイプ』について所さんはこのように指南する。
「今や仕事は無限にある。そもそもやりたいことや適職をたった1つに絞るから、悩みだけが増幅するのです。適職は複数あって当然。では、自分に合う仕事群"をどう見つけるか。まずは絶対に嫌な仕事をピックアップするのです。あとは、とりあえず嫌いなこと以外なら、機会があったら何でもやってみようという意識を持ち、やってみたい仕事かどうか、アンテナを高く張っておくことが大切ですね」
加えて、今の仕事を改めて見つめ直すことも大事だという。
「漠然と今の仕事は向かないと思っている人が多いのですが、では具体的にどのタスクが向かないのかを考える。例えば会議、接客、資料作成など、タスクごとに満足度を出してみるのです。すると、嫌なタスクを工夫したり、好きなタスクを増やすことで、悩みが解消することもあります」(所さん)
では、理想と現実にギャップがある場合はどう対処するか。
「このタイプは、本や人から聞いた話をもとに、頭の中で考えたり自己分析ばかりして、実際の行動が伴わないのが特徴です。自己分析は目的ではなく手段。自己分析をある程度やったら、あとは将来につながりそうな現実的な行動計画を複数決め、実際に行動すること。そもそもやりたいことは時間がたてば変わるのだから、柔軟に考えることです」(酒井氏)
また、適職だが評価が出ずに空回りしている人は、人に対する理解を深める必要があるという。
「空回りする人の特徴はプライドが高く、実力が伴っていないケースが多い。そして評価されない理由を環境や人のせいにする。それでは周りの人とぶつかるばかり。会社には自分と違うさまざまな価値観の人がいることも知り、まずは先輩の仕事のやり方を素直にまねする謙虚さを持つことが大切です」(小松氏)
キャリアや評価のことばかり考えていても始まらない。何であれ、まずは現在の仕事に集中し、確たるスキルを蓄えることに力を注ぐ。それが悩みから脱する近道だ。
精神科医 和田秀樹さん
精神科医。国際医療福祉大学大学院教授。テレビ、ラジオ、雑誌などで精力的に活動するほか、初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭のグランプリを受賞するなど、幅広い分野で活躍中
Q.将来の自分のキャリアについて悩んでいますか?
キャリアノイローゼに陥ってしまう理由を、精神科医の和田秀樹氏に聞いてみた。
「そうなる理由には2つの側面があります。一つは自己要求水準が高いこと。仕事に慣れたと思っても20代はまだ実力が伴っていない。それなのに目標が高い。だから不安を抱くのです。
もう一つは、一つのことばかりに注意が向かっていること。例えば営業ができない理由を“あがり症”にあると思い、その克服に躍起になる。しかし、実際はあがり症でも話がうまければ問題ない。一つのことにとらわれていると、本質的なことに努力が向かわず、実力が付いてこないのです」
では、このようにならないための処方箋とは?
「思考パターンが周りの環境に適応していないのが根本原因なので、素直に周囲の意見に耳を傾け、上司のアドバイスに頼ってしまうくらいがいい。自分の信念を貫くのはカッコいいことではなく、けっこう周りから見ると迷惑である、と気付くことが脱却への一歩です。自分の心に必ず“決めつけ”があるのでチェックしてみてください」
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