「体調が悪くても出社する」、「会議は決まりだから出席する」って変じゃない? 会社の矛盾を感じたら読む本
堀江貴文氏の最新著書を要約しました。「99%の会社はいらない」というタイトルからも伝わる通り、堀江節が本書でも炸裂しています。現状の働き方に疑問を感じたことのある人は、本書を読むことで見える景色がガラッと変わってくるかもしれません。
タイトル:99%の会社はいらない
著者:堀江 貴文
ページ数:208ページ
出版社:ベストセラーズ
定価:842円(税込)
出版日:2016年07月20日
Book Review
「体調が悪くても出社する」、「毎週の会議は決まりだから出席している」、「残業が常態化している」。一つでも当てはまる人は、本書を開いていただきたい。
「99%の会社はいらない」。度肝を抜かされるタイトルには、著者、堀江氏の「会社に勤めて人生を楽しんでいる人は1%程度にすぎない」という考えが込められているという。会社員の多くは、自分が望んで決めたのではない「他人の時間」を生きているのが現状だ。苦しい忙しさを楽しい忙しさに変えるには、会社に縛られないことが大事だと堀江氏は強調する。会社に属さず「自分の時間」を生きれば、人生の幸福度は高まっていく。
「多様な働き方」が提唱されて久しいが、それでもなお「会社に入れば安泰」と心のどこかで信じている人は少なくないだろう。堀江氏は、スペシャリストを求めつつ、ジェネラリストを育てようとするなど、日本企業特有の矛盾を明らかにしていく。そのうえで、「遊びが仕事になる時代」の萌芽となる興味深い動向を紹介してくれる。
本書には、面倒な仕事を最適化する方法や、仕事をエンターテインメントにし、他者と差別化する方法など、示唆に富むトピックがいくつも散りばめられている。通勤電車に揺られながら「このままでいいのかな?」という思いがよぎる。そんな経験を持つ読者は、堀江氏からこれからのビジネスをつくる「遊びの達人」になる秘訣を学んでみてはいかがだろうか。見える景色がガラッと変わってくることだろう。
日本の会社はおかしいと思わないか?
会社という割高な保険への加入
現在、日本の労働人口の約8割が「会社」に属している。会社勤めで人生を楽しんでいるなら問題はない。しかし、嫌々出社し、退屈なルーティンワークに耐えている人が多いのではないか、と堀江氏は言う。会社という枠組みに縛られているがために、無駄な部分が生じている。
「一流の会社に入れば、せめて正社員になれれば、年功序列で昇進し、給料も上がり、一生安泰に暮らせる」。これは高度経済成長期にしか当てはまらない昔話にすぎない。多くの人は会社にいると「嫌なこともたくさんある」にもかかわらず、失敗を恐れるために「会社」という割高な保険に加入する。この発想自体が間違いであり、自分で望んで決めたのではない「他人の時間」を生きているために、人生の満足度が下がってしまう。
本来なら周囲と違うことをするほうが、差別化できて得をする。しかし、日本の教育では人に合わせることが善とされているため、上司に嫌われるのが怖くて、オープンに不満を言うことができない。本音を言い合うことに慣れていないせいで、意見が違うだけで仕事を失う可能性すらある。これこそが、日本が他国から「世界で最も成功した社会主義国」と皮肉られている所以だ。
スペシャリストを求めつつジェネラリストを育てる矛盾
堀江氏が疑問を抱いているのは、日本人が、一つの専門性を極めることを褒めたたえておきながら、「何でもほどほどにできるジェネラリスト」を企業内で育て、重宝する点である。しかも、ジェネラリストを求めているのに、副業を禁止して、社員が複数のスキルを磨く機会を奪うという矛盾ぶりである。本来なら、色々な分野を試すことで普段と違うスキルが身につき、相乗効果が生まれることも多いはずだ。
日本から、既存の価値観を破壊するイノベーションがなかなか生まれないのはなぜか。その原因の一つは、日本企業には、異端の技術者や経営者が能力を発揮できる環境が整っていないからだろう。無難な選択をする人のほうが出世しやすいし、そもそも画一的な教育のせいで、人とは違う道を行くというマインドが育ちにくいというのもある。これは人と違うものをつくり出す起業家をカッコいいととらえるアメリカとは対極的だ。
マンパワーもロールモデルも不要
大規模な会社のほうが、大きいことを成し遂げられるという発想も間違っている。堀江氏が業務マネジメントを行っているSNS media&consulting社は、たった10名未満で運営されている。その経験から、少数精鋭でも大企業と同規模、またはそれ以上の規模のプロジェクトを動かせるという確信を得たという。
また、大企業には新人育成のノウハウやロールモデルが豊富というが、そんなものは本当に必要だろうか。ロールモデルは会社の外部でも見つかるし、彼らの真似をして、その行動をとる意味を自分なりに考えて改良を重ねれば成長できる。
このように、会社という仕組みは無駄なものだらけだといえる。
仕事のない時代がやってくる
最適化で面倒な仕事から解放される
世の中にあふれる非効率な作業は今後、AIやロボットが代替してくれる。3Dプリンターによる造形も、より大型なものや精密なものにも対応できるようになると目されている。とはいえ、人から大幅に仕事が奪われることはありえない。なぜなら、精密機器の製造にしても、部品づくりは自動化されているが、実際のデザインや組み立ては職人が担うからだ。
また、イケている職人は、仕事の効率化を求めて、自分たちの技術を機械で再現できる方法の研究に励んでいる。面倒な仕事を機械がやってくれるなら、その分、より多くの時間を好きなことに費やせる。こうした発想がますます重要になるはずだ。
堀江氏は毎日、昼夜びっしりと予定が詰まっているが、どの仕事にも充実感を覚えているので、忙しいとは感じないという。くわえて、各仕事の面倒な部分を、ツールを駆使して最適化・効率化している。
AIが進歩すれば、普段の検索や情報閲覧、SNSのフォロー、GPSの位置情報といった個人の行動をスマートフォンから吸い上げ、データを蓄積・分析して、個々人に最適化した情報だけを示せるようになる可能性が高い。また、AIの発達により、服などの通販サイトのレコメンド機能もますます充実していく。こうして最適化が加速していくのだ。
会議は会議室ではなくスマートフォン上で
今後必要になるのは、今よりも便利なツールを探し、試してみる姿勢だ。これまで、メールにはリアルタイム性に欠けるというデメリットがあった。しかし、スマートフォンが普及した今では、LINEやFacebookグループのチャット機能のおかげで、より気軽に、より効率よく情報交換ができるようになってきた。さらには、SkypeやLINEのグループトークを使えば、どこにいても会議が行える。
最近では、チームコミュニケーションツールのSlackが便利だ。エンジニア向けの仕様であるため、ソースコードを書いて共有できるのが特徴的である。
また、会議の本質が「意見を共有すること」だと考えれば、リアルタイムのトークすら不要な場合もある。参加者が適宜LINEのグループメッセージでテキストを投稿すればよいからだ。中には「対面でなければいけない」という人もいるが、参加者がルールや文脈、価値観を共有できていれば問題ない。
また、テキストの力は侮れない。動画と違って時間に縛られないうえに、コンテンツを効率よく吸収できるからだ。細切れの時間であっても、自分のペースで情報を得られる。動画全盛の時代とはいえ、ライブ感を共有するには動画が適していても、「情報を共有する」のが目的なら、テキストを選んだ方が合理的なことが多いのだ。
だから「遊び」を仕事にすればいい
これからのビジネスは「遊びの達人」がつくる
お金がなくても生きていける時代が到来しつつある。YouTuberのように、個人でメディアを運営して稼いでいる人も増えている。ロボットが社会全体の富を自動的につくり出すようになると、生活コストが下がるだけでなく、単純作業が減り、人間にしかできない仕事の割合が高まっていく。すると、人間は空いた時間で好きなことができるようになる。
そんな状況だからこそ、夢や好きなことを追求してほしいと堀江氏は語る。世の中を動かす成功者は、身の丈に合わない挑戦をし、ずば抜けた行動力を発揮している。価値観の多様化が必然的に認められるようになってきた現在、「働かない」というのも一つの選択肢になりえるだろう。
今後は「遊び」や熱中できることが仕事になる。例えば、遠隔操作の可能なマルチコプターである「ドローン」は、日本ではまだおもちゃのように扱われているが、今後は人間の調査が難しい場所の探索や流通で大事な役割を果たすだろう。ドローンの市場規模は拡大し続け、2025年までにアメリカ国内だけでも10万人以上の雇用を生むという試算もある。ドローンパイロットのニーズが高まったときに引っ張りだこになるのは、ドローンで遊ぶのに夢中で、高度な操作技術を持つ人たち、つまり「遊びの達人」なのである。
仕事はエンターテインメントであるべき
仕事は娯楽であり、趣味であり、エンターテインメントであるべきだ。遊びを突き詰めることは、面白いこととの出会いを増やすことにつながる。本当に好きな仕事なら、生き生きと働けるし、その中で他人との差別化を図ればよい。とりわけニッチな分野であれば、競合が少ないので差別化しやすい。得意分野で小さな実績を積み上げることで自信が生まれ、新たな挑戦のチャンスをつかみやすくなる。このように、仕事を最大の娯楽ととらえて行動する人生こそ、幸せな人生だといえる。
好きなことを武器に「マイナー&高収入」
遊びが仕事になる時代において、注目を浴びるのはエンターテインメント業界だ。エンターテインメント業界のビジネスモデルは、収入の多寡とメジャー度合いの2軸により、次の4パターンに大別できる。「メジャー&高収入」の超有名人型、「マイナー&高収入」のネット著名人型、「メジャー&低収入」の売れない芸人型、そして「マイナー&低収入」の一般ブロガー型である。これまではメジャーなジャンルを選ぶことが高収入の道だったが、今後はマイナーな世界で影響力を高め、「マイナー&高収入」をめざすことを堀江氏は推奨している。なぜなら、メジャーになれる人はほんの一握りであり、ポジションを維持するのも大変である一方、マイナーな分野では高い自由度を享受できるからだ。
ネットでは、ある分野に特化した情報源がニッチな人気を得ることが多く、ニコ生や『SHOWROOM』などの動画ストリーミングサービスが、その後押しをしてくれている。面白いコンテンツを配信して人気になれば、ある程度の収入が得られる。そのため、熱狂的なファンがいれば、マイナーなポジションで高収入をめざせる。ブロガーのイケダハヤトさんや藤沢数希さんも、無名の状態から独自の考えをブログで発信することで人気を博し、高収入ばかりか、それなりにメジャーなポジションの獲得を実現している。ニッチで狭い範囲の顧客が相手なら、反対勢力からの批判や面倒なしがらみが少ないというメリットもある。これらを意識すれば、好きなことで生計を立てやすくなる。
さらには、ネットによって世界を相手にできるため、無理にメジャーをめざさなくても、ニッチ市場を攻めるだけで、かなり大きな市場規模となる。こうしたグローバルニッチの考え方も「マイナー&高収入」を実現するうえで大いに参考になるだろう。
このように、マイナーの世界で成功している人のやり方をベンチマークしつつも、まだ誰もやっていないアイデアを取り入れ、ブラッシュアップを重ねれば、うまくいく確率が高まるはずだ。
会社に属しているあなたへ
協力者が自然と集まるような人になる
世の中には、「だらしないな」と思われながらも、周囲から目をかけてもらえる人がいる。「この人と一緒に何かしたい」と思ってもらえる存在になるには、自ら果敢に新たな挑戦をするファーストペンギンになり、みんなが面白いと思うものを立ち上げることが大事だ。それに追随する人が出てくれば、ムーブメントが生じ、みんなが動いてくれるので、やがては自分がいなくても回る仕組みができる。
どうしても達成したい目標を見つけたら、さまざまな場所でビジョンを語り、賛同して協力してくれる人を見つけなければならない。だからこそ人間関係がますます大事になり、人が話しかけたくなるような知識やスキルを身につける必要がある。自分のスキルを必要としてくれる人と出会ったら、その人とのつながりを大事にしていけば、おのずと面白いチャンスが舞い込んできやすくなるだろう。
※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介
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堀江 貴文(ほりえ たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年、23歳のときに、インターネット関連会社の有限会社オン・ザ・エッジ(後のライブドア)を起業。2000年東証マザーズ上場。時代の寵児となる。2006年証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、実刑判決を下され服役。現在は、自身が手掛けるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「焼肉部」「755」のプロデュースなど幅広く活躍。有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」は1万数千人の読者。2014年には会員制のコミュニケーションサロン「堀江貴文サロン」(現・HIU)をスタート。
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