あなたは何タイプ?コミュニケーションは「自己主張」と「感情」で考えろ!

働く上で何をするにも必要となるのがコミュニケーション。しかしどうも人と接するのが苦手というビジネスマンも多いのでは? そんな人たちに知っておいてほしいノウハウが詰まった1冊を要約しました。これを読めばこれまで苦手だった人がそうじゃなくなるかも?

タイプがわかればうまくいく! コミュニケーションスキル

タイトル:タイプがわかればうまくいく! コミュニケーションスキル

著者:谷 益美、枝川 義邦

ページ数:272ページ

出版社:総合法令出版

定価:1,512円(税込)

出版日:2015年11月02日

 

Book Review

誰にとっても、話しやすい相手とそうでない相手がいるものである。「何となく苦手」「どうして決めつけた言い方をするのだろう」「何を考えているかよくわからない」――そのモヤモヤの原因はさまざまだろうが、本書で紹介されている4つのコミュニケーションタイプを知れば、苦手な相手にどう接すればいいのかがはっきり見えてくる。
もちろん、誰もがきれいにこの4つのタイプに当てはまるわけではないだろう。しかし、4つのタイプの特徴を読んでいくと、確かに身近な人の顔が思い浮かぶ。「あの人はこのタイプだから、ああいう言い方はよくなかったのかな」などと、会話を振り返るうえで、本書はとても役に立つ。相手のタイプを知ることができれば、相手と接するときの心構えを変えることができる。そして、少しずつでも実践していくことで、徐々に人間関係に自信が持てるようになっていくはずだ。
コミュニケーションは「習わなくてもできる」と思いがちだが、周囲の人たちと関係を深めていきたいのであれば、そこには「めざすゴール」と「ステップ」を意識して設けるべきというのが本書の提言だ。本書を読み、自分と相手との状況に照らし合わせながら、どのようなコミュニケーションスタイルでいくべきか、考えを深めていっていただければ幸いである。素晴らしい人間関係は、そのまま人生の貴重な財産となるのだから。

4つのコミュニケーションタイプを知る

「自己主張」と「感情」を軸に考えよ

「自己主張」と「感情」を軸に考えよ

一人ひとり性格が違うように、人のコミュニケーションのとり方にもさまざまなものがある。1970年代、社会学者デイビッド・メリルらは、「自己主張のしかた」と「感情の表しかた」という2つの軸で、人々のコミュニケーションタイプを4つに大別した。
まず、自己主張が強く、感情の表しかたが弱いのは、人に指示されるのが嫌いで自分がリーダーシップをとりたがる「ドライビングタイプ(現実派)」である。
次に、自己主張が強く感情の表し方も強いのは、何でも楽しみ行動力があるが、一方で飽きたり忘れたりするのも早い「エクスプレッシブタイプ(感覚派)」だ。
「エミアブルタイプ(協調派)」は、自己主張が弱く感情の表し方が強いという特徴をもっており、優しくて気配りができるものの、決断力には欠けるところがある。
そして、自己主張も感情の表しかたも弱いのが、「アナリティカルタイプ(思考派)」だ。アナリティカルタイプの人は、コツコツと継続的に物事をマイペースに進めることが得意で、その反面、人付き合いはやや苦手な傾向がある。
これらのコミュニケーションタイプに良し悪しは存在しない。あくまで、よりよいコミュニケーションをするうえでの指標にすぎないと留意する必要がある。
もちろん、すべての人をきれいに分類できるわけではない。相手のタイプを決めつけて、「だからあの人とは合わない」など、切り捨てる材料にしてはならない。

4つのタイプ別・上手なつき合い方

「ドライビングタイプ」は、主張がはっきりしていて、「違う」と思ったことにはストレートに自分の意見を伝える傾向がある。また、誰かに指示されることを嫌うため、必要な情報を与えたうえで、相手の判断に委ねるようにすると、スムーズに話がまとまりやすい。自分の肩書や実績をさりげなく伝えたうえで、教えを請うというスタンスで接するのが効果的だろう。いったん敵でないと判断すれば、物事をしっかりと進めてくれるのがこのタイプである。
「エクスプレッシブタイプ」は、話しやすくノリが良い人たちだ。素晴らしいアイデアを生みだしてくれることも少なくないが、話し合いがいったん終わるとすべて忘れてしまい、実現しないことも多い。そのため、今後に向けて話をつなげたいのであれば、すぐに具体的な予定を入れ、関係が続くように調整する必要がある。「エクスプレッシブタイプ」は、人そのものに興味をもつことが多い。自分のキャラクターが伝わるようにコミュニケーションすれば、良好な関係を築くことができるはずだ。
「エミアブルタイプ」は、みんなのサポート役となる、いわゆる「いい人」である。嫌なことがあってもなかなか言えずに我慢しがちなので、気遣いを忘れないように心がけたい。「エミアブルタイプ」は、他者の役に立つことに喜びを感じるので、感謝の気持ちを言葉で伝えることが、いい関係を築くうえで重要になる。
「アナリティカルタイプ」は、寡黙に地道な作業を好み、自分から意見を言うことはあまりない。しかし興味のあることや専門分野に関しては熱い思いを持っていることが多いので、こちらと興味分野が合致すれば、頼もしい存在になってくれる。計画的でコツコツ進めるこのタイプの人たちは、努力家で頼りになることが多い。とはいえ、彼らと親しい関係を築きたければ、長期戦になることは覚悟しなければならない。
このように、自分や相手がどのタイプかによって、コミュニケーションのアプローチも変わってくる。会話をしていくなかで、相手がどのタイプか掴んでいくように心がけるとよい。

相手との関係を深めるための4つのステップ

誰かと出会って、その後仕事のパートナーとして関係を続けていきたい場合、どのようなステップを踏んでいけばよいのか。
まず当然のことながら、出会いの段階で嫌悪感をもたれてしまうと、なかなか次につながらない。自分は敵ではないと相手へのメッセージを送ると同時に、こちらも「この人とは合わない」などと偏見をもたず、好意をもって接するようにしよう。
次に、相手にとっての「理解者」となることを意識すべきだ。といっても、相手の話をよく聞いて、「わかりやすくまとめて伝えなおす」だけでよい。可能なら、メモを取りながら聞くというのもよいだろう。相手は、自分のことをよくわかってくれていると感じるはずだ。
理解者になれたと感じたら、次はあなたの持っている価値を相手に伝えていく段階だ。今までやってきた実績を、数字や固有名詞など目に見える形で表現するとよい。自分が知っていること、やってきたこと、できることを、相手にしっかりと伝えよう。
そして、「この人と一緒に何かやりたい」と思ってもらえるような「協働者」になることをめざすべきである。あなたは何をやりたいのか、まだ漠然としていてもいいので考えを伝えよう。そこから輪が広がり、アイデアがつながって、新しい仕事や関係性が続くきっかけがうまれていくのである。

コミュニケーションの基本

無意識にできるレベルまで身につける

無意識にできるレベルまで身につける

コミュニケーションは日常的に行われていることだ。だから多くの人は、コミュニケーションができている、できていないという感覚すらもっていないかもしれない。
しかし、コミュニケーションスキルの獲得には4つの段階がある。(1)自分ではできていると思っているが実はそうではない「無意識的無能」の段階、(2)意識しているけれどもうまくできない「意識的無能」の段階、(3)意識すればできるがいつもできるわけではない「意識的有能」の段階、そして(4)意識しなくてもできる「無意識的有能」の段階である。このうち、スキルが身についたといえるのは「無意識的有能」の状態だけである。このレベルまで自分をもっていけるよう、コミュニケーションスキルを日々鍛えるように努めなければならない。
もちろん、全員とコミュニケーションを深めなければいけないわけではない。関わる必要性があるか、どのような人間関係を築きたいと思っているかを整理し、自分の目的のために、どう相手と接していけばよいかを見極めることが肝要である。また、たとえ思い通りに運ばなくても、振り返ってどうすればよかったかしっかり考えることも大切だ。コミュニケーションスキルはそうやって養われていくものなのだから。

相手といい関係を築くために

コミュニケーションには必ず相手がいる。そして、一人ひとりの物事の受け取り方は違う。だからこそ、相手も自分と同じであるはずだという思い込みはなくして接するようにしなければならない。どちらが正しい、間違っているということはない。ただものごとの捉えかたが違うだけである。
また、コミュニケーションにおいては、聞くこと、そして頼ることがとても重要になってくる。知らないことがあれば周りの人に聞くべきだし、困っていることがあれば正直に話して助けてもらうべきだ。
時には耳が痛い助言をされることもあるかもしれないが、自分がどうしたいのか、なぜ耳が痛いと感じるのかを考えることにより、自分の考えがまとまる場合もある。人の話は素直に聞き、「ありがとう」や「ごめんなさい」をしっかり伝わるように言えるようになれば、人としても大きく成長できる。
とはいえ、言いたいことを遠慮してはいけない。相手への気遣い、配慮をもちつつも、自分の伝えたいことを言えるようにならなければならない。

コミュニケーションの実践トレーニング

出会いの場に出かけていこう

出会いの場に出かけていこう

世の中にはさまざまな出会いの場があふれている。社交の場をコミュニケーションの練習ができるよい機会だととらえ、どんどん実践訓練を積んでいこう。テーマを決めた食事会や、学びたいジャンルの勉強会など、チャンスはいくらでもある。
たしかに、はじめての場に飛び込んでいくのは、誰であっても勇気がいるものだ。しかし、もし参加してみて不安になったら、観察に徹するようにすればいい。そうすれば、何らかの気づきを発見できるはずである。
はじめての場では、自己紹介で相手に軽く情報を与え、話のきっかけを作るのが効果的である。次につなげたいと思う相手がいれば、その場で次の約束を取り付けたり、SNSなどでつながったりしておくと、その後の関係が築きやすくなる。
自分は何ができて、どんなことをしたいと思っているのかを伝えるように心がけると、相手にも印象が残りやすく、ある程度時間が経ってからでも思い出してもらえる存在になれることを覚えておこう。

話すきっかけはあちこちに転がっている

人が集う場に行くと、話しかけるきっかけに迷うことがある。そうしたとき、おすすめなのが、はじめて席につくタイミングで近くにいる人に話しかけることだ。着席してしばらくしてから唐突に話しかけるよりも、席につくときに挨拶がてら言葉を交わしたほうがスムーズである。しばらく無難な会話を続けてみて、反応が悪ければそこで会話を終わらせればと考えると、気持ちも楽になる。
また、資料を見ればすぐわかるようなちょっとしたことでも、あえて教えてもらい、「ありがとうございます」と笑顔で伝えれば、よい印象を与えることもできる。
名刺交換をするときは、もらった名刺をそのまましまいこむのではなく、名刺に書いてある情報をもとに会話を切り出してみよう。部署の名前や仕事の内容、職場の場所など、会話のきっかけにできることが、名刺にはぎっしりと詰まっている。これを活用しない手はない。

話の聞き方で相手に与える印象は変わる

話のきっかけがつかめたら、次は会話を続け、盛り上げていく段階となる。相手の話を聞く態度しだいで、「聞き上手」にも「聞き下手」にもなってしまうため、細心の注意を払わなければならない。
人の話を聞いているときの自分の表情は、鏡を見たり、動画を撮影してみたりしてチェックしてみるとよいだろう。自分が想像していたのとは違う自分の表情に驚き、ギャップを感じるかもしれない。また、表情だけでなく、態度やしぐさにも無意識の癖があらわれていることが多い。客観的にチェックするため、一度他人に見てもらうことをお薦めする。
さらに、聞く姿勢は表情や態度だけで決まるわけではない。うなずきかたや、相槌の打ちかたも大事になってくる。相槌の打ちかたには多くのバリエーションがあるため、単調にならないよう、うまく使い分けていきたい。
自分の癖を客観的にとらえるのが難しければ、テレビに出ている有名人などの聞き方を参考に、自分に合ったスタイルを見つけるとよい。聞き上手になれれば自然と周りに人が集まってくるものだ。今日から少しずつ、コミュニケーションのトレーニングを積んでいこう。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 谷 益美(たに ますみ)

    コーチ・ファシリテーター/Office123代表
    1974年香川県生まれ。香川大学卒。 建材商社営業職、IT企業営業職を経て2005年独立。早稲田大学ビジネススクール、岡山大学で非常勤講師。NPO法人日本コーチ協会四国チャプター代表。NPO法人国際コーチ連盟日本支部顧問。専門はビジネスコーチング及びファシリテーション。企業、大学、官公庁などで年間150本超のファシリテーティブな場作りを行う。2015年、優れた講義を実施する教員に贈られる「早稲田大学 Teaching Award」を受賞。

  • 枝川 義邦(えだがわ よしくに)

    脳科学者/早稲田大学研究戦略センター教授
    1969年東京都生まれ。東京大学大学院薬学系研究科博士課程を修了して薬学の博士号を得る。その後、大学における研究や教育のかたわら早稲田大学ビジネススクールにてMBAを取得。また、先導的な若手研究者の称号である早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)の初代認定を受ける。脳神経科学を専門とし、脳の神経ネットワーク解析や行動解析を研究テーマに進める一方で、経営学の視点から人材を活かした組織や社会の成り立ち、消費者行動なども研究している。早稲田大学ビジネススクールでは、マーケティングをはじめ、意思決定、モチベーション、リーダーシップ、クリエイティビティなど、経営学の土俵にあがるコンテンツを脳科学の視点で解説する講義の担当講師も務める。

  • flier

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