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【営業マン必読】営業を科学にもとづいて包括的に分析・記述したビジネス書『SALES GROWTH』

営業を科学にもとづいて包括的に分析・記述した、はじめてのビジネス書とも言える本書は、発売されて以降、世界中のセールス・エグゼクティブ(営業幹部)の間で大きな反響を呼んだ。
マッキンゼーの世界的なネットワークが可能にした豊富な事例や、世界のトップ・エグゼクティブのインタビューなど、読みごたえたっぷりの一冊は、営業職についたばかりの新人も含めて、営業に関わる人すべてにおススメだ。

SALES GROWTH (セールス・グロース)

タイトル:SALES GROWTH (セールス・グロース)

著者:トーマス・バウムガルトナー、オマユーン・アタミ、マリア・ヴァルディヴィエソ 著/門脇 弘典 訳

ページ数:432ページ

出版社:TAC出版

定価:1,944円

出版日:2017年12月13日

Book Review

2012年に初版が発売されて以降、世界中のセールス・エグゼクティブ(営業幹部)の間で大きな反響を呼んだ本がある。それが本書『SALES GROWTH』だ。マッキンゼー・アンド・カンパニーの先進的なアプローチとデータを駆使しつつ、営業を科学にもとづいて包括的に分析・記述した、はじめてのビジネス書として高い評価を得た。本書はその改訂第2版の訳書である。
デジタルツールの普及により、消費者・顧客の購買行動は大きく変化している。これは同時に、営業という職種の根本的な見直しが迫られていることを意味する。AIの進化やチャネルの多様化が相まって、営業職の未来は予断を許さないものがあると、多くの営業幹部が感じているという。
そうした課題意識を背景に、本書ではセールスの5つの成長戦略が語られる。日本のビジネス慣習を踏まえた特別解説が収録されているのも嬉しいところだ。
営業職についたばかりの新人も含めて、営業に関わる人であれば、まず通読してみることをおすすめする。いま営業に求められていることの全体像が、より明確になるはずだ。一度読みおえた後は、営業の百科全書としてご活用いただきたい。自社の営業活動の課題がどこにあるのか、本書をめくりつつチェックしてみるのもいいだろう。 マッキンゼーの世界的なネットワークが可能にした豊富な事例や、世界のトップ・エグゼクティブのインタビューなど、読みごたえたっぷりの一冊である。多くのヒントと勇気が得られるはずだ。

(1)一番乗りで成長する

見据えるは10四半期

見据えるは10四半期

営業リーダーの第1の役割は、経済状況や消費行動といった外的要因を注視し、そこから自社に関係する2~3のトレンドを読み解くことである。見据えるべきは10四半期(2年半)先だ。
単にトレンドを先読みするだけではなく、予算や人員といったリソース(経営資源)の確保も欠かせない。すぐれたリーダーは、新たなチャンスへの先行投資に大きな額を割り当てている。先のことを考え、計画策定のための専任部隊を社内に用意することも怠らない。

埋もれている成長を掘り起こす

成長チャンスをつかむためには、ミクロ市場の分析を行ない、自社の強さと市場の魅力度をうまく組み合わせることが求められる。
あるヨーロッパの消費者向け通信企業は、15に分けていた営業地域を約500ものミクロ市場に切り分けた。その結果、魅力的な顧客が存在するものの、競争は激しくない地域が見つかった。重点的にその地域へ投資したところ、来店者数を5~10%押し上げるとともに、コストを5%削減することができたという。

ビッグデータから大きな成長を導き出す

もしもビッグデータが営業の役に立つのかよくわからないと思っているなら、危機感をもったほうがいい。やや先行していた感のあるビッグデータに対する期待が、いまようやく実を結びつつあるからである。
ある小口金融業務を行なうヨーロッパの銀行は、顧客のビッグデータと真摯に向き合った。すると有望な紹介客や見込み客が倍増し、わずか2年で預金残高が5割近くも増加。顧客満足度も上昇した。
また、ある健康・美容メーカーが子供をもつ家庭へおむつに対する最大の関心事をアンケートで調べたところ、「環境にやさしい」という回答が3分の2を超えていた。ところがソーシャルメディア上の会話をビッグデータで分析したところ、おむつに対してもっとも頻繁に挙がっているフレーズは、「天然素材」とともに「おむつかぶれ」であることが判明した。以後、おむつかぶれへの対策が取られたことはいうまでもない。

(2)顧客の望みどおりに売る

マルチチャネル営業をマスターする

販売チャネルの多様化は、顧客にいままでにない良質な購買体験を提供する。しかしながらマルチチャネル化にともなうチャネル間の対立や重複を克服している企業は、ほとんどないのが実情だ。
マルチチャネル化のための切り口はいくつかある。筆頭に挙げられるのは電話やインターネットを活用したリモートセールスと、従来のフィールドセールス(訪問営業)の組み合わせである。「オンラインとオフラインの組み合わせ」といいかえてもいいだろう。ここで重要なのは、すべてのチャネルを通して同じブランド体験を提供し、顧客に快適なカスタマージャーニー(顧客化までのプロセス)を体験してもらうことである。
また再販業者や代理店などのパートナーを通じた間接営業と、直接営業の組み合わせも再考に値する。パートナーに顧客を渡すことに対して抵抗を感じるという企業は多い。しかし顧客へのリーチや遂行能力の最適化という観点から、検討してみる価値はある。

デジタル営業で成長を加速させる

アメリカではB2CかB2Bかを問わず、カスタマージャーニーのどこかでオンラインを経ている割合が3分の2におよぶ。
デジタルチャネル活用のポイントは3つだ。1つ目は自社のウェブサイトなどへのトラフィックを増やすこと。2つ目はオンラインでの取引を簡単、便利にすること。3つ目はオンラインでのつながりを活用し、顧客ロイヤリティの維持を図ることである。
とくにスマートフォンなどのモバイルを使った購買行動(mコマース)は、デスクトップのコンピュータで買い物をする消費者よりも、取引ごとの支出額が37%多いことがわかっている。デジタルはチャンスの宝庫なのだ。
ただしあくまでも、デジタル営業は有機的に絡みあう販売戦略の「一部」にすぎないと理解すべきである。たとえば大型テレビのような商材の場合、購入希望者はアマゾンでリサーチしたあとに、店舗で実物を確認して買いたいと考えている。実際リサーチした商品が店舗に見当たらないと、3分の1の見込み客はそのまま店から出ていってしまう。
フェイスブックのようなソーシャルメディアも要注目だ。友人同士の推奨(レコメンド)で商品をはじめて知った、インフルエンサーに促されて商品特性を比較したといった具合に、ソーシャルメディアがきっかけとなった購買は、全商品カテゴリーを通じて平均26%にものぼる。

新興市場で地元企業のように売る

新興市場で力強く成長するために、一流の営業組織は次の3つを実践している。
(A)現場に出る:成功している企業は、データ販売会社や専門家からありったけの情報を入手する一方で、現地と現場に出向いて市場の動きを直に見ることが最良だと心得ている。新興市場はインフラが十分に整備されていない場合も多い。文化の違いから商売の慣習が地域ごとに、場合によっては同じ町のなかで異なる国もある。現場で直に集めた情報に代わるものはない。
(B)パートナーに惜しまず投資する:市場開拓に向けて最適なパートナーを見つけるための労を惜しんではならない。ある化学メーカーは、販売パートナーを選別するにあたり、「サービス」「評判」「インフラ」「財務」「態度」の5つの側面から評価しているという。
(C)長期的視野で人材を育てる:急成長のチャンスに吸い寄せられ、新興市場には多くの企業が参入する。すると当然ながら、人材の争奪戦が起こる。優秀な営業を雇い、彼らをつなぎ止めておくことは、かつてないほど難しい。しっかりとした研修を行なっている企業が、他社から格好の「狩り場」にされることもあるほどだ。長期的な視野で人材を育てる研修プログラムと、その市場の人材にとってインセンティブのある組織をつくりあげることが求められる。

(3)営業に補助エンジンを搭載する

成長志向のサポート体制をつくる

ビジネスが成長して商品やチャネルが増加すると、営業マンの活動時間は営業以外の作業に取られていってしまう。
こうした状況に対して、あるグローバルメーカーは営業組織を、実働部隊とサポート部隊に分けることにした。営業マンは売ることに、サポートスタッフは補助することに集中するというシンプルなスタイルをめざしたのだ。
営業プロセスとサポート業務の標準化、そして営業・顧客・製造をつなぐインターフェースの単純化は大きな成果をあげた。このプログラムを各国に広げていったところ、場所によってはわずか4カ月で効果があらわれはじめた。営業マンが製品を売るために使える時間は15%増え、成約率も5%改善。社内営業手続きのサイクルタイムは20%も短縮した。

(4)実働部隊にフォーカスする

成長志向の業績管理をする

成長志向の業績管理をする

マッキンゼーの分析によると、トップセールスと成績不振者の業績には2~4倍の開きがある。このように営業部門は、ほかの部門よりも従業員ごとの業績のばらつきが大きい。
しかし一流の営業組織は、こうした現状を放置したりしない。業績にばらつきが生じる原因をつきとめ、営業マンたちを切磋琢磨させつつ、チーム一丸となって成長する方策を講じる。
ここで考えられるアプローチのひとつが、現場のマネジャーを部下の育成に携わるコーチへと変えることである。ある営業組織では、マネジャーが8割以上の時間をコーチングに費やしており、それを報酬とリンクさせる仕組みを導入している。
とはいえ営業にかけるモチベーションを刺激するうえで、報酬だけを考えるのでは不十分だ。仕事の意義深さや承認欲求、学習欲や向上心といった、意識面のインセンティブも必要になってくる。

(5)売上成長をトップが引っ張る

組織のトップから成長を促す

営業リーダーに求められる行動様式は、以下の4つである。
1つ目は現状を打破することだ。すぐれた営業リーダーは、ビジネスの新しいあり方を模索する。そして顧客の悩みごとを洞察し、顧客の購買体験を改善していく。
2つ目は営業チームを鼓舞することである。営業組織に刺激を与えるうえでもっとも速い方法は、リーダーが目標を示し、達成に向けたメッセージを発信しつづけることだ。
3つ目は変化のロールモデルになることである。営業リーダーが望んだだけで組織が変わることはない。方向性と目標を明確に示すことは大前提である。そこからさらに説得力を出すためには、新たな規範を自らの行動で示さなければならない。
4つ目はひたすら成果を求めることだ。顧客に強いインパクトを与えるためには、営業リーダーが先頭に立って、競合より先に成果を出すことがもっとも効果的である。

売上成長を再考する

営業の未来に関わる大きな課題、それはAIの活用と営業のアウトソースである。
人間の仕事がAIにとって代わられると指摘されてしばらく経つ。それでは営業活動はどうか。著者たちの考えによれば、営業活動の4割は既存の技術を使って自動化することが可能である。それによって営業マンは、細やかな対応が必要な、より高い付加価値をもつ案件に集中できるようになる。これからの時代では、テクノロジーを使いこなす新たな人材の確保が、決定的に重要になるだろう。
また営業のアウトソースももっと検討されてしかるべきだ。企業にとっての営業機能は、アウトソースに対する「最後の砦」と見なされることも多い。しかし外部に委託をすれば、コストを下げつつ業績を上げられる可能性は高い。
こうした論点は、営業組織の競争優位を保つうえで、今後も避けて通れない道だ。今日からでも自身の課題として取り組んでいくべきである。

一読の薦め

営業という仕事がアートとサイエンスからなるとすれば、本書はサイエンスの側面から切りこんだ一冊である。加えて、売上をつくることが経営の1丁目1番地とするならば、本書はすぐれた経営指南書としても読める。マーケティングやITなどの周辺領域に関わるエグゼクティブにとっても、営業を理解するうえで格好のテキストとなるはずだ。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
copyright © 2019 flier Inc. All rights reserved.

著者紹介

  • トーマス・バウムガルトナー (Thomas Baumgartner)

    マッキンゼー・アンド・カンパニー ウィーン・オフィスのシニアパートナー。
    営業とチャネルに関するマッキンゼーの活動をグローバルに率いるリーダーのひとり。ハイテク、エレクトロニクス、運輸、基礎材料、通信、消費財といった各分野で、大規模な売上成長プログラムの助言を行っている。

  • オマユーン・アタミ (Homayoun Hatami)

    マッキンゼー・アンド・カンパニー パリ・オフィスのシニアパートナー。
    ヨーロッパ、中東、アフリカ地域をみるマーケティング・アンド・セールスグループのリーダーの一人。これまでの幅広い経験を活かし、市場を上回る成長のために世界中のクライアントを導いている。

  • マリア・ヴァルディヴィエソ (Maria Valdivieso)

    マッキンゼー・アンド・カンパニー マーケティング・アンド・セールスグループのディレクター・オブ・ナレッジ。
    マイアミに拠点を置き、B2B企業や消費財企業に売上成長の促進と業務の変革について助言し、営業とチャネルの専門性に関するマッキンゼーの研究を率いている。

  • flier

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