20代ビジネスマン必読!『10年後、君に仕事はあるのか?』を要約

先の読めない不確実な時代において、自分らしく幸せな人生を歩んいくには若いうちにどんな力を養えばいいのか。本書は高校生に語りかけるスタイルでありながら、大人にも自分の人生や子育て・教育観を問い直すよう促してくれる一冊。今後、学力は不要になるのか?「雇われる力(エンプロイアビリティ)」を鍛えるには? 今のキャリアにモヤモヤを抱える20代にとっても、ライフデザインの頼れるガイドブックとなってくれるはず。

10年後、君に仕事はあるのか? 未来を生きるための「雇われる力」

タイトル:10年後、君に仕事はあるのか? 未来を生きるための「雇われる力」

著者:藤原 和博

ページ数:260ページ

出版社:ダイヤモンド社

定価:1,512円

出版日:2017年2月9日

 

Book Review

私たちにライフデザインのアップデートを提起したロングセラー『ライフ・シフト』。そこに描かれるのは、一生が100年になるという未来である。また、AI×ロボット化で仕事が消滅していくといわれて久しい。親世代の読者のなかには、「子どもたちは果たしてどんな時代を生きていくのだろう?」と、自分自身のこと以上に疑問や不安を抱く方もいるのではないだろうか。
先の読めない不確実な時代において、子どもには自分らしく幸せな人生を歩んでほしい。そのためには、今のうちからどんな力を養えばいいのか。もちろん唯一の正解はない。しかし、『ライフ・シフト』で描かれる未来と、目の前の一歩をつなげてくれる、より地に足のついた本を要約者は待ち望んでいた。本書はまちがいなく、そんな架け橋となってくれる一冊である。
著者は都内で義務教育初の民間人校長を務め、「よのなか科」という、アクティブ・ラーニングの先駆け的な授業を広めてきた藤原和博さん。本書は高校生に語りかけるスタイルでありながら、大人にも自分の人生や子育て・教育観を問い直すよう促してくれる稀有な一冊だ。藤原さんご自身が多様なキャリアを掛け合わせ、教育というテーマに真摯に向き合い続けてきたからこその説得力が、そこにはある。
今後、学力は不要になるのか? 「雇われる力(エンプロイアビリティ)」を鍛えるには? 高校生や大学生、その親世代だけでなく、今のキャリアにモヤモヤを抱える20代にとっても、本書はライフデザインの頼れるガイドブックとなってくれるはずだ。強力な武器を手に、独自のフロンティアを切り拓いていただきたい。

これからの10年で世界は激変する

高校生と親世代の決定的な3つの違い

高校生と親世代の決定的な3つの違い

いまの高校生は、どんな未来を生きるのか。まずは、親世代の人生と比べて決定的に違う点として、次の3つを心に留めておきたい。
1つは、2020年の半ばには、多くの親が体験した「標準的な人生モデル」は期待できないという点だ。終身雇用も新卒一括採用も、珍しいものになっている可能性が高い。
2つ目は、世界の50億人がスマホでつながり、さらには、このネットワークに人工知能(AI)がつながるという点である。日常生活のあちこちで、ネットとつながったロボットが色々な働きをしてくれるようになるだろう。このような未来の社会は、ネット内に建設されていく。「AIとロボットの発展により、仕事が消滅していく」という言葉をよく耳にする。しかし、より本質的には、世界の半分がネット内に建設され、人間がその世界で人生の半分を過ごすようになるから、という点を忘れてはいけない。 3つ目は、人生の長さ(ライフスパン)が決定的に異なるという点だ。人生を90年と仮定してライフデザインをすることが求められる。

人間が人間らしくなる時代

この10年で、かなり複雑な判断が必要な仕事まで、「AI×ロボット技術」に取って代わられるだろう。人間に求められるのは、今まで以上に「人間ならではの仕事」をすることである。すると、人間として本当に必要な知恵と力が活きてくる。
本要約では、そのカギとなる情報編集力にフォーカスしながら、「雇われる力(エンプロイアビリティ)」の鍛え方、「一生が90年の時代のライフデザイン」のポイントを取り上げる。

仕事が消滅する時代に身につけておきたいこと

「情報処理力」と「情報編集力」

今後、学校での地道な勉強によって身につく学力は、必要なくなるのだろうか。著者はそうした学力不要論に疑問を呈している。アスリートや芸術家など、すでに特定のキャリアを意識しているケースを除けば、後に選択肢の幅が広がるように、基礎学力を高めることは必須だからだ。
これからの時代に必要な「生きるチカラ」を、著者は次のように表している。まず、土台となるのが「基礎的人間力」である。体力や精神力、集中力、直感力など、家庭教育や学校での人間関係、部活、旅などを通じて育まれていく。
この上には左側に情報処理力、右側に情報編集力が積み重なる。情報処理力とは、早く正確に正解を導く力で、狭義の基礎学力を指す。主に数学や国語、理科などの教科学習で鍛えられる。いくら知識がネット上に蓄えられても、情報処理力がなければ上手にググれない。
これに対し情報編集力とは、正解がない、または正解が1つではない問題を解決する力のことだ。まるで本の編集業務のように、コンセプトが実現できて、編集者と著者の両者が納得できる解、「納得解」を紡ぎ出す力だといえる。

グローバル時代を生き抜く5つのリテラシー

今後グローバルに通用する人材をめざすには、どんな条件が必要なのか。著者は次の5つのリテラシーを身につけることが大事だという。
(1)コミュニケーション:異なる考えをもつ他者と交流しながら自分を成長させること
(2)ロジカルシンキング:常識や前例を疑いながら柔らかく「複眼思考」すること
(3)シミュレーション:アタマのなかでモデルを描き、試行錯誤しながら類推すること
(4)ロールプレイ:他者の立場になり、その考えや思いを想像すること
(5)プレゼンテーション:相手とアイディアを共有するために表現すること
この5つの要素は、情報編集力の必要条件でもある。もちろん、情報処理力を鍛えることは相変わらず大事である。ただし、今後は情報編集力が必要とされる割合が高まっていき、現状の情報処理力偏重から、情報処理力:情報編集力が7:3くらいにまでシフトしていくだろう。

情報編集力が高い人には、「遊び」と「戦略性」がある

情報編集力の5つの要素は、遊びを通じて学べるものである。遊びの最中には、想定外の出来事が絶えず起こる。そのため、正解のない問題に対処する力が自然と鍛えられていく。受験もゲームのようにとらえることで、情報編集力を身につけるまたとない機会に変わる。
また、情報編集力の高い人には、「遊び」があってイマジネーション豊かで、「戦略性」があることが多い。遊びというのは遊び心のこと。そして戦略性とは、目標を実現するために計画的な振る舞いができ、多様な資源を上手に編集できる力を指す。この2つを満たしていれば、「仕掛ける側」に回れる。仕掛ける側というのは、ルールをつくり出す側、あるいは情報を編集して生み出す側(発信者)といいかえてもよい。遊び心と戦略性を発揮し、ぜひ仕掛ける側に回ってほしい。

「雇われる力」の鍛え方

独立や起業をしても大切な「雇われる力」

独立や起業をしても大切な「雇われる力」

10年後の社会で、何らかの組織(企業やNPO、国の省庁など)に雇われるためには、今のうちに何を鍛えていけばいいのか。この雇われる力が高ければ、仕事の選択肢が広がる。実際のところ、この力は独立や起業、ボランティアにおいても必要とされる。なぜなら人に信頼され、共感されて働くには、「クレジット(信任)」を蓄積することが重要だからだ。

雇われる力の基本、「人柄」を高めるには?

雇われる力の基本は、「人柄」と「体力」だ。人柄というのは、「力」という言葉では表せない人間の美徳だといえる。誠実さ、ひたむきさ、やさしさのようなものだ。
人柄を高め、豊かにする方法は、目の前にいる人に真摯に向き合うことである。目の前にいる人に喜ばれ、感謝されるかどうか。これができなければ、社会を変えられないだろう。具体的には、挨拶ができること、約束を守ること、そして人の話が聴けること。こうしたことを通じて、目の前の1人を大事にし、クレジットを積み上げる。そうすれば、応援団がつき、資金的な援助も得られやすくなって、夢を現実にする確率も上がっていく。

雇われる力はバランスが重要

こうした基礎的人間力の土台があったうえで、知識のインプットを行っていく情報処理力と、アウトプットに活きる情報編集力が求められる。大人になるまでに、情報処理力と情報編集力の両翼をバランスよく鍛えられるかどうか。これが10年後の雇われる力を決める。
もちろん、子どものうちに全てが決まるわけではない。社会人になってから弱点を補い、長所をさらに伸ばしていけばよい。

一生が90年の時代のライフデザイン

30代まではたくさん恥をかこう

10代、20代は「失敗は恥だ」という感覚を捨てて、いっぱい恥をかこう。恥をかけばかくほど、経験値が上がり、クレジットが蓄積されるからだ。それが自分の世界観を広げることにもつながる。
日本で成人を20歳と決めたのは、平均寿命が50歳前後だった頃の明治期にさかのぼる。いまでは寿命が2倍に延び、「一生が90年の時代」となる。そうであれば、成人は40歳くらいだと考えればいい。40歳からでも、あと50年、大人としての人生が待っている。そのため30代までは、恥や嫉妬にあまり惑わされず、よい意味で無謀に生きるのがよい。

1回の人生では生ききれない

これからは、一生が90年もあれば、1回の人生ではとても生ききれない。たとえば、複数の会社を渡り歩いたり、途中で大学に戻って学び直したり、民間から公務員に移ったりする。こんなふうに、いまの高校生たちは、仕事を重層的に積み重ねていく「八ヶ岳型連峰主義」の人生を送ることになる。また、人生のある時点から、複数の人生を同時並行で進めていく姿もありえるだろう。必要なのは、単線型から複線型の人生観への転換である。

複数のコミュニティで「ナナメの関係」を築く

ここで大事なのは、職場とは別のコミュニティに参加すること。複数のコミュニティに属し、将来のビジネスやボランティアの芽を育んでいくことで、次の山をつくるための「裾野」を広げられるからだ。
さまざまなコミュニティに参加するなかで、著者がすすめるのは、「ナナメの関係」を築くことである。ナナメの関係とは、世代を超えた先輩・後輩との関係を指し、学生のうちから大事な役割を果たしてくれる。このナナメの関係にある人との会話は、情報編集の核となるコミュニケーション能力を伸ばす格好のトレーニングにもなる。親や友達やよく知っている先生とは違った第三者であるため、相手のアタマのなかを想像しながら会話することが必要になるからだ。
実はナナメの関係は、キャリア形成のリスク・ヘッジ(安全装置)にもなる。たとえば、職場でルーティンの仕事に飽きかけたとき、コミュニティで未知との遭遇や予期せぬ出会いがあれば、エネルギーが充填される。
人間関係に強い大人をめざすなら、いまのうちからナナメの関係の大人たちと積極的に関わり、コミュニケーションを豊かにしていけると理想的だ。

希少性の時代には、レアカードをめざせ

成熟社会においては、「みんな一緒」をめざすのではなく、できるだけ希少性を磨くことが重要となる。自分自身をレアな存在にするには、3つのキャリアを5~10年ずつ経験して、その掛け算をするとよい。人が1つの仕事をマスターするのに、一般的には1万時間かかるといわれている。1万時間とは5~10年の練習量であるため、これだけの年数をかければ、100人に1人の希少性が確保できる。
まずは、ある分野の仕事に注力し、100人に1人の希少性を確保する。次に、また別の分野で同様に100人に1人となる。それを3種類の分野で達成すれば、100万分の1の希少性が実現するというわけだ。このようにして、「オリンピックのメダリスト級」の1人になれば、よりイニシアチブをとった仕事ができるようになり、自由度も高まるにちがいない。

一読の薦め

著者のメッセージには、発見や頷くポイントが目白押しだ。たとえば、情報編集力を高めるための入社試験の紹介、「ジグソーパズル型学力」と「レゴ型学力」の対比など、詳しくは本書に譲りたい。最終章の「君たちが日本の未来を開く10の理由」については、親子でそれぞれの意見を交わすことができれば、互いに新たな発見が得られ、相互理解が進むのではないだろうか。
また、要約者が共感したメッセージは、「複数のコミュニティでナナメの関係を築いていくことが安全装置にもなる」というものだ。本書では「将来のキャリア形成のために」という意味合いが強かった。もしかしたら本書にふれた高校生のなかには、そもそも将来のことを考える余裕がない、家庭や学校には自分の居場所すら見つからないという方もいるかもしれない。そんな方には第三の居場所は必ずある、少しでも信じられる大人を見つけてほしいというメッセージを伝えたい。心理的安全性や受容されているという感覚が土台にあってこそ、情報処理力も情報編集力も鍛えられると思うからだ。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 藤原 和博(ふじはら かずひろ)

    教育改革実践家。
    元リクルート社フェロー。1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。2008年~2011年、橋下大阪府知事の特別顧問。2014年から佐賀県武雄市特別顧問。2016年から18年春まで、一条高等学校校長。『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(いずれも、筑摩書房) など人生の教科書シリーズ、『35歳の教科書』(幻冬舎)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)など著書多数。また、『日経ビジネス』で8年間にわたって書評を執筆。講演会は1300回、動員数25万人を超える人気講師としても活躍中。

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