『言語化力』を要約! ‟言葉”という武器は、世の中を変えることができる

仕事も人間関係も人生も、言葉の力で変えられる! 元博報堂、The Breakthrough company GOの代表が指南する、‟強い言葉”の生み出し方とは? 言いたいことを表現する力がない。言いたいことはあるものの、どう伝えればいいのかわからない……そんなもどかしさを抱えている人は必読の一冊だ。

言語化力

タイトル:言語化力

著者:三浦崇宏

ページ数:288ページ

出版社:SBクリエイティブ

定価:1,500円

出版日:2020年1月24日

 

Book Review

本書は、この先も繰り返し読みたい――要約者は率直にそう感じた。著者の思考を自分の頭に刷り込みたい、そう思ったのだ。
要約者はライターであるため、これまでにも言語化や言葉の使い方をテーマにした書籍をたくさん読んできた。しかしながら本書には、他の書籍にはない特有の凄みがあり、食い入るように読んだ。
著者は、言語化するには段取り、つまり型が必要だという。自分の意見を言いたいのに言えない人でも、その型を踏むことで、言語化できるようになるそうだ。本書はその型の習得方法を教えてくれる。
何より本書は読みやすい。類書の中には「国語の先生による学校の平々凡々とした授業」といった雰囲気のものもあるのに対して、本書は「大手予備校の人気講師による個別授業」のようなオーラがある。類書なら流し読みしていたようなことでも、本書だとズイっと頭に入ってきて、読み進めるたびに立ち止まって考えさせられた。
学校の授業と予備校の人気講師の授業の面白さを比べると、多くの場合、予備校の人気講師の授業のほうに軍配が上がるだろう。人気講師の授業は、生徒の食いつきが凄いのだ。それは、説明がわかりやすいために、内容が頭に入ってきやすく、好奇心をかきたてられるからだ。本書はそんな、読者を夢中にさせてくれる一冊だった。
自分の意見を言いたいのにうまく言えない人。自分の言葉に影響力を持たせたい人。そんな人は、本書を読むと、間違いなく多くのヒントが得られるだろう。

すべては言葉で変えられる

「保育園落ちた 日本死ね」に学ぶこと

 『言語化力』を要約! ‟言葉”という武器は、世の中を変えることができる

2016年、Twitterの無名アカウントから発信された「保育園落ちた 日本死ね」というツイートが拡散され、国会での議論の対象にまでなった。有名人でも学者でもない普通の女性のツイートが国を動かすきっかけとなったのだ。私たちは今、そんな奇跡が普通に起こる社会に生きている。
「保育園落ちた 日本死ね」は、シンプルだが強力なコピーだ。「保育園落ちた」というファクト(事実)があり、「日本」という「建前だらけの大きい敵」を倒したいという意志が伝わってくる。しかも「死ね」というインパクトある言葉との組み合わせだ。一般人の生活からあふれ出た魂の言葉として、強い力を持っていた。
言葉は武器だ。社会現象を起こし、世の中を変えることさえできる。たとえば、「イクメン」という言葉ができたことで父親の育児参加が促進された。「おひとりさま」という言葉によって孤食の市場ができた。

「言葉にする」方法

言語化には「段取り」がある

問題や事象について語りたくても、うまく言語化できない人もいるだろう。そんな人は、スタンスを決める→本質をつかむ→感情を見つめる→言葉を整えるというプロセスをたどってみるといい。最初はうまくいかず苦労するかもしれない。言葉を使いこなすには練習が必要なのだ。
まず、スタンスを決めること。自分の社会における立ち位置と世の中の動きに対する好き嫌いを明確にしよう。社会がどう変われば自分が快適にストレスなく生きられるかを考えると、自然とクリアになるだろう。
地方都市の市役所で働いているなら、日本のSNS炎上社会についてどう思うか。4人の子どもを育てるシングルファーザーなら、今の働き方改革についてどう思うか。自分のスタンスが見えてこない場合は、ニュースを幅広く見てみると、気になること、感じることが見えてくるはずだ。
次に、本質をつかむこと。表面的な現象ではなく現象の構造をつかみ取ることだ。そのためには、固有名詞を省いて時系列も無視して、行為と現象と関係性だけを抜き出すというプロセスを踏めばいい。慣れれば一瞬でできるようになる。
次に、感情を見つめること。問題の本質をつかんだ後は思いっきり自分に目を向けよう。人の心を動かすのはいつだって感情である。
問題の本質をつかんだら、自分のスタンスと照らして、どんな感情を抱いたか冷静に観察する。喜怒哀楽の4パターンだけではない。ワクワクした、ムカついた、誰かに伝えたくなったなど、様々なグラデーションがあるだろう。
自分の感情を見つめた後は、その感情を抱いた理由を考える。腑に落ちるまで、徹底的に自問してみる。
最後に、言葉を整えること。ここまでのステップで生み出された言葉を、相手やその場の雰囲気に合わせて調整する。相手に残したい印象によって言い方を丁寧にしたり、ネガティブをポジティブにしたりして、整えていく。

言葉の優先順位をつける

言いたいことがありすぎて、言葉が出てこない人もいるだろう。大切なものを聞かれても、「もちろん仕事も大事だし、家族も大事にしてるし……」と優先順位をつけることができない人だ。そういう人は、「言葉で順位づけ」をする必要がある。
まず、思いついたことを言葉にして紙に書き出してみる。一つひとつの要素を書き出して、言葉の因数分解をしていくと、思考の輪郭が明確になる。それを言葉にし、具体的に検討していけば、自分にとって本当に重要なこととそうでないことが見えてくる。
また、すべてを話そうとしてはいけない。優先順位をつけたり、割り切ったりすることも大事だ。映画の感想を聞かれたとき、「あのシーンもよかったし、CGもきれいだったし、テーマにも共感できたし」と並べると印象は薄くなる。それなら1つだけに絞って「あのシーンはよかったです。なぜかというと~」と掘り下げて話すほうが、相手の関心を引きやすいだろう。
伝えることを1つに絞ると、インパクトが増す。人間は、そんなにたくさんのことを覚えてはいられないものだ。

印象に残る言葉をつくる

「印象に残る言葉」を生み出すポイント

著者は、ネットの記事やツイッターでバズらせるために、言葉選びにおいて気を付けているポイントが4つあるという。それは、(1)「短くシンプル」か、(2)「意外性」があるか、(3)「学び」があるか、(4)明日から「すぐにやれる」かだ。
たとえば人脈についてインタビューされたとき、著者は「会いたい人こそ、自分から会いに行ってはいけない」と答えた。短くシンプルな回答だ。だが著者には、この1行が見出しになり、その記事が多くの人に読まれるであろうということが予想できていたという。
この言葉は、意外性がある。SNSでどんな大物とも簡単につながれる時代なのだから、自分から積極的に会いに行こう――そう言われることが多い。一方、著者は、まずは相手にとってメリットのある人物になって、先方から会いたいと言われるようにならなくてはならないと考え、この表現を選んだ。
短くシンプルで、意外性と学びがあり、明日から実行できるフレーズ。加えて、わかりやすい言葉でリズムよく。著者は、このあたりまで計算して発言しているのだという。

「強い言葉」を使えるようになるポイント

講演や会議、打ち合わせでは、「強い言葉」が効果的だ。「強い言葉」を使えるようになるために意識すべきポイントは4つある。
1つめは「視点を上げる」ことだ。あなたが「社員」なら「部長」の視点で、「部長」なら「社長」の視点でものごとを見てみる。
たとえば、一般社員のあなたが「会社に行きたくない」と考えているとする。これを社長の視点に上げると「我が社の問題は、社員が会社に行くことを楽しくないと思っていることだ」となる。さらに主語を会社にすると「この会社は行きたいと思われる場所になっていない」と、もっと大きな話に聞こえてくる。
個人の感情にとどまっている話だと、他人から関心を持ってもらいづらい。会社や社会など、より上の話に変えてみるのが効果的だ。
2つめは「領域を広げて、一般化して考える」ことだ。たとえば読者モデルの友だちから、インスタグラムのDMでセクハラされたという話を聞いたとする。この事象を、領域を広げて一般化してみる。「友達の女の子」から「女性全体」、「インスタグラム」を「人生」、「DMのセクハラ」を「悪意」と広げる。すると「世の中の女性は、生きているだけで悪意にさらされている」と、ぐっと強い言葉に変換できる。
3つめは「逆張りをする」ことだ。たとえば「人脈が大事だ」とみんなが言っている中で「人脈なんて言葉を使っている奴はクソだ」と言ってみる。あえて世間とは逆の立場を取ることで、記憶に残る言葉が生まれるのだ。もちろんなんでもかんでも逆張りすればいいわけではない。
4つめは「ゴールから逆算する」ことだ。著者はWEBメディア「新R25」において「お酒は飲めないのですが、広告業界で活躍したい。どうしたらいいでしょうか?」と聞かれたとき、以下のように回答した。
「酒が飲めないなら、別の面白さを見せればいいだけ。お酒が飲めないことも武器にして、『お酒飲めるってうらやましいです!』とか、『お酒飲むの憧れます~』って開き直って話せばいい」
世の中の思い込みについて考えるときは、ゴールから逆算して本質を見つけよう。「お酒を飲んでほしい」と言う人々の欲求の本質は、「無理をしてほしい」だ。つまり「無理をし合える関係かどうか」を証明したいわけだ。本当の目的はお酒ではない。
そうして常に「この場合の本当のゴールは何か?」を考えると、問題の本質が見えてくる。そのとき本当に求められていることは何か、立ち止まって考えてみてはどうだろうか。

言葉で人を動かす

変化が起きるのが「いい言葉」

「いい言葉」とは、その言葉によって何かが動いたり、変わったりする言葉だ。どれだけ美しい言葉でも、誰にも届かず、何も動かせなければ意味がない。
たとえば、相手が自分に関心のないときに「ご飯に行きませんか?」と誘ってみる。おそらく「嫌です」と言われてしまい、ご飯には行けないままだろう。
では、「すき焼き、お好きでしたよね?」「今日○○さんが誕生日なんですよ。寿司屋、予約してるので一緒にどうですか?」と言ったらどうだろう。来てくれるかもしれない。「芝にあるトマトすき焼きのお店、ご存じですか?」もいいだろう。何かしらの変化を起こせる言葉が、著者の定義する「いい言葉」である。

言葉で人を動かしたいときのポイント

言葉で人を動かすというと難しく聞こえるかもしれないが、意外と簡単だ。ポイントは3つ。(1)目的を明確にすること、(2)目的に向かうプロセスを明確にすること、(3)主語を複数にすることである。
「目的を明確にすること」は、文字通りの意味だ。ただ「動け」というよりも「鬼を退治しに行こう」と言うほうが、人は動きやすく、本気になりやすい。
2つめは「プロセスを明確にすること」。著者が外資系の広告代理店に勤めていたとき、ある先輩のチームは毎年のようにカンヌ国際広告祭で賞を獲っていた。一方、著者はメンバーの本気を引き出せず、なかなかうまくいかない。
著者とその先輩の違いは、目的に到達するための「プロセス」を明確化できているかどうかだった。著者は「みんなで頑張ってカンヌ獲ろうぜ!」と言っていたのに対して、その先輩は「ここまで頑張ればカンヌ獲れるぞ」という言い方をしていた。目的にたどり着くための条件、プロセスを明確にすることで、チームメンバーのやる気を引き出していたのだ。
3つめは「主語を複数にすること」だ。本の執筆者と編集者の関係なら、編集者から「これ書いておいてください、頑張ってください」と言われるよりも「これ、一緒に盛り上げていきましょう!」と言われたほうが、モチベーションが上がるものだ。

言葉で相手との関係を変える

言葉は「関係構築」のツールだ。著者は、仕事を依頼してくれるクライアントのことを「パートナー」と呼ぶようにしている。この呼び名だけで、仕事を与える・受けるの関係ではなく、価値を生み出すために協力し合う関係になれる。
このように、相手との関係性は、言葉の使い方で変わる。使う言葉によって、相手をどう捉え、どんな関係をつくっていくつもりかが変わってくるからだ。
昔、名前で呼びかけることの効果を検証した「Call Her Name」というプロジェクトがあった。普段「おいお前」と呼びかけている人が奥さんの名前を呼ぶ。すると実際に夫婦の関係が良くなるだけでなく、奥さんの心拍数が上がることすらあったという。
言葉は時に身体的、物理的な力をも発揮して、相手との関係性に影響を及ぼすのだ。

一読の薦め

SNSをはじめとし、言葉で表現する場は増えるいっぽうだ。それなのに、言いたいことを表現する力がない。言いたいことはあるものの、どう伝えればいいのかわからない――そんなもどかしさを抱えている人には、本書を一読することをおすすめする。
本書には、自分の考えを人に刺さるように伝えるヒントが詰まっている。ちょっとした言葉、発信に対する心がけが人を動かし、社会を変えるかもしれない。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
copyright © 2024 flier Inc. All rights reserved.

著者紹介

  • 三浦崇宏(みうら たかひろ)

    The Breakthrough Company GO代表・PR/クリエイティブディレクター。
    博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。博報堂では、マーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任。PR戦略を組み込んだクリエイティブを数多く手がける。現在は、様々な業種のプロフェッショナルを集め、新規事業開発から広告まで幅広く問題解決を手がけるThe Breakthrough Company GOを設立。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞、ACC総務大臣賞ほか受賞。雑誌「ブレーン」にて「2019年注目のクリエイター」に選出される。

  • flier

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『言語化力』を要約! ‟言葉”という武器は、世の中を変えることができる
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