『1分で話せ』を要約! プレゼン、会議、どこでも使える“伝える技術”

本書は「1分で伝える」ためのプレゼンでの話し方を中心として、「伝わる話し方」を根本的な疑問から応用テクニックまで幅広く紹介する一冊だ。「結論から話す」の結論とは何なのか? 根回しやアフターフォローは必要? プレゼンが苦手なビジネスマンだけでなく、人前で話す機会がある人すべてにぜひ読んでほしい。

1分で話せ

タイトル:1分で話せ

著者:伊藤 羊一

ページ数:240ページ

出版社:SBクリエイティブ

定価:1,512円

出版日:2018年3月20日

 

Book Review

「自分に自信があり、人前で話すことが大好き」「話す内容が次から次へと頭に浮かんでくるので、プレゼンで困ったことなどない」――会社で働くビジネスパーソンの中で、こういった人はまれだろう。大多数の人はむしろ、プレゼンでは何を話せばいいのかわからないし、人前に出ると頭が真っ白になってしまうはずだ。本書は、そんな人のための一冊である。
本書では「1分で伝える」ためのプレゼンでの話し方を中心として、「伝わる話し方」を紹介している。結論から話すのはビジネスの基本だが、では結論とは何なのか、といった根本的な問題から、あえて上司に「突っ込ませる」などの応用的なテクニックまでを幅広く取り上げている。それだけでなく、取引先の社長との商談や、会議の収拾がつかなくなってしまった場合など、ビジネスの場で直面しそうなさまざまなシーンが想定されており、実践的だ。また、1つひとつのトピックを紹介する前に「良い例」と「悪い例」が見開きで提示されており、直感的に理解しやすくなっている。
そもそもプレゼンは「人を動かす」ために行うものだ。したがって、その目的を達成するために、根回しからアフターフォローまで、できることはなんでもやるべきだ――というのが、著者の主張だ。プレゼンが苦手な人はもちろん、プレゼン力に自信をもっている人も、読めば新たな気づきを得ることができるだろう。人前で話す機会がある人にとって、読んでおいて損はない一冊だといえる。

「伝える」ための基本事項

プレゼン力=「人に動いてもらう力」だと知る

『1分で話せ』を要約! プレゼン、会議、どこでも使える“伝える技術”

人は、相手の話の80%は聞いていない。どんなに完璧なプレゼンをしても、自分の考えが100%伝わるということはありえない。自分の話を聞いてほしいなら、まずはそのことを前提に始めなければならない。
プレゼン力とは、人に動いてもらう力だ。人を動かすためには、1分で話せるように話を組み立て、伝える必要がある。

聞き手を具体的にイメージする

プレゼンにおいては、「何のためにプレゼンするのか」を明確に意識しなければならない。
それを言語化すると、「誰に」「何を」「どうしてもらいたい」という構造になる。ポイントは「誰に」伝えるのかを考えることだ。
具体的には、相手の立場、何に興味があるか、このプレゼンに何を求めているか、専門的な要素への理解度、何をどう言えばネガティブな反応をするのか、などといったことを考える。
聞き手を具体的にイメージできれば、その人たちの反応を想像しながら準備を進めることができる。つまり、聞き手にあわせて、話す内容、言葉遣い、話し方などを考えていく。

ゴールを明確にする

「何のためにプレゼンするのか」「誰に伝えるのか」をイメージしたら、最後に「ゴールは何か」を考える。ゴールとは、プレゼンを通して、聞き手をどのような状態にしたいのかということだ。賛成してほしい、何らかの意見を表明してほしい、動いてほしいなど、具体的にどこまでしてほしいのかをはっきりさせておく。
プレゼンは、ゴールを達成するためにある。だから、聞き手にどうしてもらいたいのかを見定めたうえで、ゴールを達成するために何をすればいいかを逆算して考えるのだ。
なお、「理解してもらう」ことをゴールにしてはいけない。「営業部の○○さんにかけあってほしい」など、「理解した上で何をしてほしいのか」が必要だ。
また、「きれいに話すこと」も、プレゼンのゴールではない。とにかく相手を動かすことがゴールなのだ。相手を動かすためにできることは、なんでもやろう。根回しをしておいたり、席配置を工夫したり、プレゼン後にフォローしたりといった前後のアクションも、トータルで設計するべきだ。

1分で伝えるテクニック

「結論」と「根拠」でロジカルに考える

話には「結論」と「根拠」がある。結論は1つだが、根拠は複数あることが多い。結論を一番上に、根拠をその下に並べると、ピラミッドのような形になる。このピラミッドがしっかり組めていれば、話が不必要に長くなったり、伝わらなくなったりすることはない。
「これが結論です。理由はAでBでCだからです」というだけで話は伝わる。この基本の型にはめて考える癖をつけておけば、説得力のある話し方ができる。

相手を動かす「結論」を示す

ビジネスでは、「結論を先に話せ」と言われる。確かにその通りなのだが、そもそも「根拠」と「結論」を混同している方も多い。
たとえば、「Aはこんな状況で、Bはこんな状況だ」というのは、結論ではなく根拠だ。根拠を加工し、「Aのプランを優先させるべきだ」という結論を導き出さなければならない。そのうえで、伝えるべきことの結論は何か、聞き手に受け入れてほしいことは何かを明確にする。結論を出すには、まず手元にある根拠を並べてみて、「だから何?」と自分に問いかけるのがよい。
企画をプレゼンする場合、「こういう企画である」と「この企画は売れる」のどちらが結論なのか、悩むかもしれない。この場合は、「この企画は売れる」が結論だ。さらに言えば、「この企画は売れるからやりましょう」が結論である。プレゼンは相手を動かすためのものだから、相手を動かす方向を示すのが「結論」だと考えよう。

「根拠は3つ」で相手に伝え、納得させる

人は根拠がなければ納得しない。しかし根拠を並べすぎても、印象に残らないものだ。根拠は3つを目安にして用意するといい。
3つの根拠は、結論を言った後に述べるのがよい。さらに、根拠を述べるときに「理由は3点あります」と指を3本出すと、聞き手はメモをとり始める。
プレゼンとは、自分が伝えたいことの骨組みや中身を、相手の頭の中に移植していく作業だ。自分の頭の中にしっかりと「結論」「3つの根拠」という骨組みがあれば、相手にも伝わりやすい。

結論と根拠をつなげる

結論と根拠の骨組みができていれば、1分で話せるだろう。これをより伝わりやすくするためには、その骨組みを「ロジカル」に作ることが必要になる。「ロジカル」とは、意味がつながっているということだ。
結論と根拠は、意味がつながっていなければならない。たとえば、「雨が降りそうだから、外出しない」は理解できる。しかし、「雨が降っているからキャンディーをなめよう」は意味がつながっておらず、意味不明だ。
結論と根拠を述べる際は、聞き手にとって意味がつながっていることを常に意識しよう。声に出して読んでみる、他の人にも聞いてみるなどして、意味がつながっているかどうかを確認するのがよい。

1分で「その気にさせる」テクニック

相手の頭の中にイメージを作る

ロジカルであることは重要だが、それだけでは人は動かない。聞き手の感情を揺さぶる必要がある。そのためには、聞き手の想像力をかき立て、頭の中にイメージを作らせることが重要だ。
たとえば、マンションを売る営業マンのセリフとして、どちらが伝わるだろうか。A案は、「駅から3分。公園も近い閑静な住宅街の物件です」。B案は、「木や花の多い公園が近いので、小さいお子さんがいらしたら、喜びますよ」。B案であれば、「朝、はつらつと自宅を出て、駅に向かう自分のイメージ」や「奥さんが子どもと、敷地内にある公園で、笑顔で遊んでいるイメージ」などが頭の中に生まれ、「買いたい」と思うだろう。
このように、聞き手にイメージを抱かせるためには、まず、ロジカルに事実を認識してもらわなければならない。「駅からマンションへの道のりはこんな感じか」「敷地の中の公園は自由に遊べるんだ」といったことだ。そういったことを認識したうえで、そこに自分をあてはめて考えてもらわなければならない。そこに自分をあてはめてもらえば、自動的に聞き手の頭の中で想像が膨らんでいくだろう。伝える側は、想像が広がるのをサポートすればよい。

聞き手の頭の中でイメージを膨らませる方法

イメージしてもらうために最もシンプルな方法は、ビジュアルを見せることだ。言葉で説明するよりも、ビジュアルのほうが断然わかりやすい。写真や絵、動画を使い、しっかりと説明しよう。先述したマンションの例でいえば、マンションの外観や施設の写真を見せることだ。
ビジュアルがない場合は、「たとえば」と具体的な事例を示そう。この一言があれば、聞き手が抱くイメージが具体的になる。さらに「想像してみてください」「あなたがもしこの世界を経験するとしたらどうでしょう」と一言添えると、聞き手がイメージの中に入り込んできてくれるだけでなく、自分の頭の中でイメージを膨らませてくれるだろう。
このように、ロジックで左脳に、イメージで右脳に働きかけることで、聞き手を動かすことができるようになる。

こんなときはどうする?

突然意見を求められたら

会議などで急に意見を求められたとき、頭が真っ白になってしまって、何も言えなくなってしまう人は多いだろう。そのときに大事なのは、相手が何を質問しているのかを考えることだ。
まずは落ち着いて相手の質問を聞く。そしてその質問に対して「Yes/Noで答えればいいのか」「アイデアを聞かれているのか」「懸念点を答えればいいのか」をとらえる。その時点では、まだ答えを考えなくてもいい。聞かれたことを把握し、どのような形式で答えるのかを整理するのだ。
次に、答えのピラミッドを作る。結論を決め、根拠を3つ加えて、具体例を1つ以上入れれば完了だ。「YES/NO」を聞かれているならば、最初に「YES」か「NO」かを伝え、その理由と具体例を添える。アイデアを聞かれているならば、アイデアを伝えた上で、理由と具体例を続けよう。
なかには、意見を言うとすぐに否定する上司もいる。そういう上司には、あえて「ツッコミどころ」を用意しておこう。たとえば、主張と根拠のピラミッドの「根拠」の中に、あえていい加減なものを1つ入れてみる。すると、上司はすぐさまそこを指摘するだろう。そこで「おっしゃる通りですよね!」と賛同する素振りを見せつつ、すかさず用意してあった別の根拠に入れ替える。こうすれば、相手を立てつつ、自分の思った通りの方向で進めていきやすくなるだろう。
プレゼンは相手を動かすことが目的だ。こうしたテクニックを使い、相手を操縦するのもひとつの方法だといえる。

聞き手が話を聞いてくれなかったら

聞き手が自分の話に集中していないような気がするときは、自分の声の大きさを見直してみよう。相手に伝わらなかったり、相手がきょとんとしていたりするとき、その原因の7割ほどは「声が小さい」ということだけだ。
声のトーンも重要だ。声のトーンが最初から最後まで同じではいけない。大事なポイントを大きな声で言うというのも1つだろう。しかしそれだけでなく、1つひとつの表現に意味合いを込めることが重要だ。
自分が発する言葉の1つひとつにどんな意味を込めたいのか、明確にイメージしながら話すと、自然とトーンが変わってくる。たとえば、「皆さん」と呼びかけるときも、それはどこにいる誰なのかをはっきりイメージしよう。すると、言い方が変わるのだ。
また、きちんと聞き手1人ひとりに向かって話すことも意識しなければならない。会場という「空間」や地面に向けて話すのではなく、1人ひとりに声を届けようとトライすることが大事だ。
伝える力は、練習しなければ上達しない。プレゼンの練習をしないビジネスパーソンが多いが、ミュージシャンや俳優のように、繰り返し練習するべきだ。何度も練習し、録音し、使う言葉や声のトーンを変えて、伝え方を工夫する。色々試し、誰かに聞いてもらってフィードバックを受けるのが効果的だ。

一読の薦め

「伝わりやすい話し方」のハウツー本というだけあって、非常にシンプルで理解しやすく、実践しやすい内容だ。今回は、わかりやすいプレゼンのポイントにしぼって、要約した。本書では「良い例」「悪い例」が具体的に提示されている他、上司への提案の仕方、取引先との商談など、より広いシーンでの「伝え方」が指南されている。プレゼンだけでなく、常に他者との「対話」をしているビジネスパーソンなら、一度は読んでおきたい一冊だ。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 伊藤 羊一(いとう よういち)

    ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長。株式会社ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行入行、企業金融、事業再生支援などに従事。2003年プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当した後、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。
    かつてソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者を見出し、育てる学校)に所属。孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を修めた経験を持つ。
    2015年4月にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。

  • flier

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