『個人力』要約!ニューノーマル時代の“前向きな自己中戦略”とは?

これからの時代には、「ありたい自分のまま、人生を楽しんで生きていく」こと求められる。そのためには「個人力」が不可欠だと、著者の澤円さんは言う。一人ひとりが本来の「自分」のままに、いい意味で“自己中”に人生を楽しんで良いのだと、背中を後押ししてくれる一冊だ。

個人力

タイトル:個人力

著者:澤円

ページ数:192ページ

出版社:プレジデント社

定価:1,100円(税別)

出版日:2020年8月7日

 

Book Review

これからの時代には、「ありたい自分のまま、人生を楽しんで生きていく力」、「個人力」が必要だ。「これからを生き抜く究極の自己中戦略」と銘打たれた本書は、一人ひとりが「ありたい自分」のままに人生を楽しんで良いのだと後押ししてくれる。
著者である澤円氏は、年間約300回にも渡るプレゼンテーションや講演をこなす、プレゼンのスペシャリストだ。大学の客員教授や企業の顧問、オンラインサロンの運営など、実に様々なコミュニティーに所属しながら活動をしている。そんな著者は、文系卒でありながら、IT業界に飛び込み、エンジニアとしてキャリアをスタートさせた。コンピューターの基礎も知らないままSEになったのは、「Being(ありたい自分)」があったからだと振り返る。
コロナショックを契機に、時代が大きく変わりつつある。これは、1990年代後半にインターネットがもたらした変革以来の大きな変化といえるかもしれない。大きく時代が変動するときだからこそ、確固たる「ありたい自分」という基準を持っていることはますます重要になってくるのだろう。本書を読み終えると、自分も「ありたい自分」を探すために行動を起こせるのではないかという気持ちになれるはずだ。あなたも自らの本質を探り、充実した人生をつくるための一歩として、本書を紐解いてみてほしい。

「ありたい自分」はどこに

揺らぐ価値観のなか、ありたい自分を生きる

『個人力』要約!ニューノーマル時代の“前向きな自己中戦略”とは?

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、人の「行動様式」を大きく変化させている。仕事におけるこれまでの常識や「あたりまえ」とされていたことが、実はそれほど重要でなかったということを浮き彫りにしているのだ。「出勤」はその最たるものだ。今回の出来事によって「会社に行く=仕事をする」ことではないことがはっきりした。会社に対して提供できる価値と、通勤という行動がリンクしていなかったという人も多いのではないだろうか。
現代は「個」の時代だといわれてはきたが、コロナショック以前の「個」は結局のところそれまでの価値観を前提に考えられてきたところがある。価値観が大きく揺らぐなかで人が自分の人生を生きるためになにを寄りどころにすべきか――著者が出した答えは、本書のテーマである「個人力」、すなわち「ありたい自分のまま、人生を楽しんで生きていく力」だ。

「Being(ありたい自分)」を中心としたサイクル

「あたりまえ」が揺らぐなかで重要となるのが、「個」として信念を持ち、自分の新しい働き方や生き方を模索していく姿勢だ。学歴や肩書きなどをすべて取り払った先に残る、本当の自分。それを著者は「Being(ありたい自分)」と表現している。
「Being(ありたい自分)」は自分自身で探すしかない。著者は、自分という金脈は自分自身の中に必ず埋まっているものだという。金脈を見つけるために必要なのは、それを掘り出す勇気を持つことだ。金脈そのものではなく、「掘るための道具」は積極的に探しにいくと良い。だが、掘り出すのはあくまで自分自身だと意識しなければならない。考える労を惜しんで人から与えられた「金脈らしきもの」に騙されないように気をつけよう。
本書では、「Being(ありたい自分)」を中心として自分が本当に幸せを感じられる充実した人生を作るための思考サイクルを、「Think(考えること)」「Transform(変化)」「Collaborate(協働)」の3つの要素から説明している。それぞれの要素について、順に見ていこう。

Think あたりまえを疑う

「考える」のは誰か?

「Think(考える)」のプロセスを徹底すれば、「Being(ありたい自分)」が明確になっていく。自分の頭で考えるという行為は、自分の人生を生きることと同義だ。「わたしはこう思う」と決断して行動しなければ、いつの間にか自分に嘘をつく行動をしてしまう。そこで重要なことは、「わたし」を主語にして考え、自分に問いかけるクセをつけることである。
自分の本質というものは、あくまで自分で定義し、自分で言語化するものなのだ。自分で勝手に定義していいし、誰かの許可を得る必要もない。そんな自分の働き方や生き方をじっくり見つめ、どんなことも「自分で決めて考える」こと。それこそが「Think」であり、自分の人生を生き抜く姿勢である。

自分のなかから湧き出る「なにか」を言葉にする

なぜ多くの人が不安にとらわれたり、自信を失ったり、やりたいことを見失ったりしてしまうのだろうか。著者はその原因は、自分の本質を「言語化」できていないことだと指摘する。
若い世代から「やりたいことがない」という悩みを聞くことが多いが、そんな人には好きな人や憧れる人をベースに自分を描いてみることをお勧めする。自分が惹かれる人物をばらばらに分解し、そのなかのどんな要素に自分は惹かれるのかを探り、言葉にしていく。それらの要素のなかには、自分の本質となるヒントが隠されていることがある。最終的には、「わたしはこんなかたちで世の中に貢献できる」という明確な答えを発信できるようになるのが目標だ。

ありのままの自分を認めたうえで「思考」する

やっかみや嫉妬といったネガティブな感情を持ってしまったときに、自分を卑下する必要はない。「ときどきそんなことを思ってしまうクセが自分にはあるな」程度に思い、その感情をやり過ごそう。大事なのはネガティブな感情を持った後、「どうして自分はそう思ったのだろう?」と自分に対して思考を向けるようにすることだ。
ネガティブな感情を持ったということを認めたうえで、心をフラットな状態にして、自分はどうしていくかを考えていく。誰だってときには他人をうらやんだり、腹を立てたりすることがある。しかし、その後に続く「思考」がそのままネガティブにならないよう、すぐに意識的に切り替えるクセを持てば、次の「行動」が変わっていく。正しい答えがあるわけではない。思考もその後の行動も、自分だけが決めることができる。

Transform 常にアップデートする

あなたはいつでも変わることができる

コロナショックで不安定さが増す状況のなか、ピンチを言い訳に諦めてしまえば状況が好転することはなくなってしまう。まずは自分の得意なことや「もっとやりたい」と思えることに取り組んで、自分の考え方や振る舞いを変化させよう。これにどれだけ本気で取り組めるかが、「個」の生き方の明暗を分ける。常に「個」を起点にして、自分を「Transform(変化)」させていこう。
誰もが「やりたいこと」をやる権利を持っているし、本来それは誰にも邪魔できないものである。やりたいことを組み合わせた、ハイブリッドな生き方が実現できる時代になっている。ハイブリッドカーのように「いいとこ取り」をして、自分の「時間」の価値を最大化することが、人生の最優先事項だ。

素直に、情熱的に、ストレートに売り込む

日本企業では「ジェネラリスト」と呼ばれる「なんでもできる人」をつくる風潮が長らく続いた。その方針の結果として、転勤や人事異動が頻繁に行われることがある。だが、せっかく磨いた「個」のキャリアをあっさりとリセットしてしまうような人事制度は意味がない。
これからは、自分が得意なことを磨き、苦手なことはアウトソーシングするマインドが重要だ。だからこそ、自分が得意なことを発信するだけでなく、苦手なことは苦手と言おう。「個」と「個」が有機的につながるこれからの時代には、「不完全」であるほうが、人材として魅力的になるかもしれない。
粗いアイデアや稚拙に見える考え方でも、実はイノベーションの核となる可能性を秘めている。アイデアを実現できる世の中になっているからこそ、自分のやりたいことを素直に、情熱的に、ストレートに売り込んでいく姿勢が求められるようになっていくだろう。

コミュニケーションの鉄則

多様な人たちと関わっていくなかで、最低限押さえておきたいコミュニケーションの鉄則は「相手が安心すること」だ。そのための具体的な行動は、「相手に笑顔を見せる」ことである。簡単なように聞こえるが、これが案外むずかしい。目が笑っていなかったり、表情が硬かったりする場合が非常に多いのだ。どの表情筋を動かすと、どんな笑顔になるのかをきちんと言語化しておくと良い。自分の表情が見えない、スマホのアウトカメラで笑顔を撮影してみて、どの筋肉が動かせているのかいないのかを確認するのがお勧めだ。
一方で、コミュニケーションにおいて絶対にやってはいけないことは「相手に恥をかかせること」だ。相手に恥をかかせないことは、相手との「信頼関係」を築くということである。コミュニケーション能力を上げるための様々なテクニックがあるが、相手との信頼関係は何にも増して重要だ。

Collaborate 「個」として協働する

「誰かを幸せにする」情報発信を心がける

かつては完成されたシステムに自分という「個」を合わせて入っていくことがコミュニティーに所属するということだったが、今は多様な価値観を持つ「個」が共通の約束ごとをもとに緩やかにつながるスタイルが増えつつある。「個」が有機的につながり合うコミュニケーションが主流となった場に「個」として参加し、充実した人生をつくるための手がかりを「Collaborate(協働)」の視点から探っていこう。
情報発信のチャンネルが増え、誰もが手軽に情報発信できるようになった反面、誰もが自分の情報発信に責任を持たなければならない状況になった。そんなときに重要なのは、誰かを幸せにする情報発信を心がけることだ。なにかの価値を発信すると、味方や仲間が増えるので、ポジティブな発信はどんどんしたほうが良い。一方で、自分にとって不要な情報はさらっと流していくのも、人生の貴重な時間を無駄にしないための姿勢だといえる。

安心してアウトプットできる場所か?

コミュニティー内部やコミュニティー同士がつながり合う、「個」の有機的なエコシステムでは、参加者が自ら価値を提供しようとする自主性が重要となる。誰かがなにかをしてくれるのを待つのではなく、メンバーが自ら走れるようになること、「自走性」を持つことによってコミュニティーは活性化していく。他のメンバーが積極的に情報発信する姿を見ることで、「自分もやろう!」という勇気につながり、好循環が生まれる。
自分のやりたいことを「心理的安全性」が担保された場で発信するのは重要なことだ。もはや会社にコミットさえしていれば安泰とはいえない状態である以上、いくつもの場所で「価値提供」をできる人が生き残っていくことになる。日本の大企業では、新入社員が発言権を持つことは難しいかもしれない。しかし、本当に素晴らしいコミュニティーでは、メンバーの立場が完全にフラットな状態で、お互いに尊重できる関係性がある。そのような心理的安全性が担保された場でアウトプットをしていると、「Being(ありたい自分)」を開示できるようになる。このような場を持つ人が、これからは成長していくのだ。

最上級の「ありがとう」を伝えるスキル

「自分には、今のところ大したスキルはない」と悩む人もいるかもしれない。しかし、自分にないものを知り、人に助けを求める力こそ重要なのだ。人に助けを求めるのは、アウトプットした証拠だ。苦手なことにいつまでも苦しむのではなく、使えるものは片っ端から使って、人生を自ら楽しめる状態に変えていく方が良い。世界は広く、あなたが苦手なことが、他の人も苦手で嫌いだとはまったく限らないのだ。
だから、ほかの人に上手にお願いして気持ちよくやってもらうスキル、「最上級のありがとうを伝えるスキル」を磨いた方が健全だ。これは、効果的かつコストパフォーマンスに優れた超汎用的なスキルである。どんどん他の人にアウトソーシングした方が効率的であるし、相互作用によってイノベーションを生み出す可能性も高まっていくだろう。

一読の薦め

「Being(ありたい自分)」で思いきり生きることが許されている。そんな著者の主張は、一歩を踏み出せずにいる人たちを力強く後押ししてくれる。本書には、「ありたい自分」のまま人生を楽しむ、そんな「個人力」を磨くためのヒントが満載だ。自分の生き方に幅を持たせたい方、本当にやりたいことを見つけたい方には、迷わず本書をおすすめしたい。

※当記事は株式会社フライヤーから提供されています。
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著者紹介

  • 澤円(さわ まどか)

    株式会社圓窓代表取締役
    1969年生まれ、千葉県出身。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長に就任。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみ授与される、ビル・ゲイツの名を冠した賞を受賞した。現在は、年間300回近くのプレゼンをこなすスペシャリストとしても知られる。ボイスメディア「Voicy」で配信する「澤円の深夜の福音ラジオ」も人気。著書には、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。

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