巨人への移籍=大企業への転職!?
2012年のプロ野球は、読売巨人軍が3年ぶりの日本一を遂げました。巨人の覇権奪回に貢献したのが横浜(現横浜DeNA)ベイスターズから今年移籍した村田修一選手。フリーエージェントの権利を行使し、巨人軍移籍の道を選びました。当時の記者会見では、「勝ちたいという自分の気持ちにうそはつけない」(11年12月8日・サンケイスポーツ)と心境を述べていました。かつて2年連続本塁打王の実績もある球界屈指の強打者でも、優勝から縁遠かったベイスターズからステップアップをしたかったのが移籍の理由でした。一般のビジネスパーソンでいえば、中小企業で社長賞をもらって会社の業績アップに大きく貢献しても満足せず、大企業に転職するようなものです。
巨人への移籍を決断した村田選手ではありませんが、転職の主な動機は在籍中の勤務先への不満です。実際、5年ほど前の転職ブームでは、「中小企業→大企業」あるいは「大企業平社員→中小企業幹部」のように人材が流動化していた背景には「もっと大きな仕事をしたい」「現状に安住したくない」という求職者の挑戦的な意思が感じられました。ところが近年は事情が変わってきているようです。
ビジネスパーソンは「守り」の傾向…
厚生労働省の2011年の雇用動向調査では、流動性を示すデータが04年以降過去最低となり、キャリアデザインセンターが25~34歳の若手ビジネスパーソンを対象に行った意識調査(キャリアデザインレポート2012 現在の会社について、次の項目の満足度をお答え下さい) でも「現在の勤務先への満足度」を探ってみると、会社への不満度が全体的に低下傾向であることがわかりました。特に「給与・賃金待遇」「教育・研修・福利厚生」といった主要項目を含め、不満が低下しています。「労働日数・労働時間」や「社内の人間関係」に5割が満足して高止まりする傾向もあり、一見すると<守り>に入っているような印象があります。
グラフ:キャリアデザインレポート2012 勤務先への不満調査
本音は転職に興味あり
それでは、今の会社に満足しているのか、となれば疑問も浮かんできます。07~12年を振り返ってみると、「給与・賃金待遇」は30%程度でずっと推移しています。08年のリーマンショック、11年の東日本大震災などの影響による雇用情勢悪化で「良い行き先があれば転職してもいいが、今は動く勇気がない」という本音が透けて見えてきます。実際、若手ビジネスパーソンの挑戦的な意欲が衰えていない証拠に、大手企業の若い社員が起業をする動きを取り上げるメディアも増えています。
今年7月には政府のフロンティア構想に「40歳定年」が盛り込まれて話題になるなど、ビジネスパーソンの30代は社内外で通用するスキル、キャリアを積むことが潮流になりつつあります。不況の今だからこそ、虎視眈々と自己研さんを行い、今の職場での働き方を見つめ直すことを怠ってはならないのではないでしょうか。